アジア映画巡礼

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『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』の新しい悟空像

2018-01-08 | 中国語圏映画

ここ数年、中国語圏映画界では「西遊記」関連作品が数多く作られてきました。周星馳(チャウ・シンチー)の監督による『西遊記~はじまりのはじまり~』(2013)以降の5年間だけでも、ドニー・イエン悟空の『モンキー・マジック 孫悟空誕生』(2014)、アーロン・クォック悟空の『西遊記 孫悟空VS.白骨夫人』(2016)、徐克(ツイ・ハーク)監督作品『西遊記2 妖怪の逆襲』(2016)、そして間もなく公開されるエディ・ポン悟空の『-悟空伝-』(2017)と、毎年のように作られています。それらの中でも珍しいアニメ作品の「西遊記」が、今週末から公開される『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』(2015)です。実は内覧試写を拝見したのはずーっと前なのですが、それから約2年、やっと公開が実現しました。まずは、基本データをどうぞ。 

『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』公式サイト

 

©2015 October Animation Studio,HG Entertainment 

2015/中国/中国語(日本語吹替)/88分/原題:西遊記之大聖帰来/英題:Monkey King: Hero Is Back
 監督:田暁鵬(ティエン・シャオポン)
 日本語吹替制作監修:宮崎吾朗 
 提供:アクセスブライト、VAP 
 配給:HIGH BROW CINEMA 

1月13日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

 

©2015 October Animation Studio,HG Entertainment

元のお話はご存じの通り、孫悟空が三蔵法師のお供をして、猪八戒、沙悟浄と共に天竺へと向かう、という内容ですが、今回の『西遊記』は少々変形ヴァージョン。冒頭でまず、孫悟空がナージャを始めとする様々な天界の封神らと戦い、やがて五行山に閉じ込められるまでが描かれます。ここで驚きなのが、今回の悟空のデザイン(↑)。これまでのアニメとはまったく違う絵柄で、モンキー・パンチの絵みたいとでも言えばいいのでしょうか、街を歩いている今どきのにーちゃん、という感じです。

 

©2015 October Animation Studio,HG Entertainment

その悟空が五行山に閉じ込められて500年、お話はのちに三蔵法師となる少年江流兒(リュウアー)に移ります。両親を亡くして師父に育てられ、いたずらをしたり怪物と戦ったりと大活躍するリュウアー。小さな女の子を助け、怪物から逃れようと逃げ込んだ洞窟の中で、リュウアーは氷漬けになった悟空と出会い彼を甦らせるのです。このリュウアーの表情や動作が何とも豊かでかわいらしく、何度見ても飽きません。

©2015 October Animation Studio,HG Entertainment

甦った悟空ですが、なぜか本来のパワーが出ません。いらだちながら悟空はリュウアーと旅を重ねて、やがて猪八戒と出会います。さらにいろんな怪物や魔物と出会い、最後には最強の魔物”混沌”(『千と千尋の神隠し』のカオナシにソックリ)との戦いが繰り広げられます...。お話も、キャラ造形も型破りで、これまでにないユニークな『西遊記』になっており、アニメファンでなくても魅了されることまちがいなし。実写版『西遊記』に食傷気味の方でも、これは面白い!と楽しめてしまうに違いありません。

©2015 October Animation Studio,HG Entertainment

田暁鵬(ティエン・シャオポン)監督は、2016年7月に横浜で開かれた「日中韓学生アニメーションフェスティバル2016」で宮崎吾朗監督とトークセッションをしたのですが、その時の発言もユニークでした。司会者が「この映画を観客として見てみたらどう思うでしょう?」と聞くと、「面白いと思います...いや、面白くないです。300回以上見たら、面白くなくなると思います(笑)」と答えたりと、ちょっとオタク入ってる感じの人でした。小さい時から絵が好きだったそうで、でも、それでは食べていけないと思ったため、北京工科大でソフトウェアを専攻したのだとか。大学1年の時からすでに3Dアニメを制作、その後、テレビ関係やゲーム関係の様々なアニメを手がけ、やがて『西遊記』の製作に着手したものの、完成までに8年!もかけてしまった、という強者です。

©2015 October Animation Studio,HG Entertainment

じっくり見てみると、実に丁寧に作られており、また、監督自身のアニメ界の先人に対するオマージュも随所に見えて、凝りに凝った作品と言うこともできそうです。先ほどカオナシに似たキャラのことを書きましたが、宮崎駿監督は「私の中では最も素晴らしい監督」だそうで、いくつかのオマージュがひそませてあります。これもあって、今回の日本語吹替制作監修を宮崎吾朗監督にお願いしたのでは、と思われます。そんな視点から見ても面白い『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』、最後に予告編を付けておきますので、ぜひ劇場の大スクリーンでご覧になってみて下さい。

『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』日本版予告 (2018年)



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