アジア映画巡礼

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≪オリジナル完全版≫『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』に泣く

2018-01-10 | インド映画

『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』を、昨日シネマート新宿で見てきました。もちろん完全版で、この作品の素晴らしさをあらためて噛みしめました。以前にもご紹介したのですが、もう一度作品データを付けておきます。今回こそ、正真正銘の146分です。 

(C)Viacom 18 Media Pvt Ltd & Phantom Films Pvt Ltd

『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』 公式サイト
2014 年/インド/ヒンディー語・英語/146 分/原題:Queen
 監督:ビカース・バール
 出演:カンガナー・ラーナーウト、ラージクマール・ラーオ、リサ・ヘイドン
 配給:ココロヲ・動かす・映画社〇
※1月6日(土)より、シネマート新宿、ココロヲ・動かす・映画館〇(吉祥寺)、シネマート心斎橋にて公開中

今回は、ここもカットされていた、ああ、あそこも...とか思いながら見ていたのですが、それらのシーンは、ヒロインのラーニー(字幕では「ラニ」)と家族との、あるいはラーニーと旅先で出会った人々との、心のひだの重なり合いが見事に捕捉されているシーンばかりでした。それらが復活したことで、ラーニーと家族の愛情、パリで出会うホテル従業員のインド人女性ヴィジャイラクシュミとの友情というか一種の姉妹愛、そしてアムステルダムで同室となった3人の若者--ロシア人のオレクサンダー(ラーニーは「アレクサンダー」だと思い込み、最後には「アレクサンダー」のインド化した名前「シカンダル」と呼びます)、アフリカ系フランス人のティム、そして日本人タカとの、ちょっと変わった友情といったものが、いかにラーニーの傷を癒やし、しっかりと自立した人間に生まれ変わらせていくのかがよーくわかるものになりました。


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また、弟のチントゥの思いやりが描かれるシーンも、いろいろ復活しました。冒頭部分で、フィアンセのヴィジャイに一方的に破談を申し渡されたラーニーは、部屋に閉じこもってしまいます。それを心配して取り乱す両親を見て、チントゥは室外機置き場の網をはずして少しでも部屋にこもるラーニーに近づこうとし、「ディーディー(姉さん)!」と呼びかけます。祖母は窓越しに自分の失恋とその後の祖父との出会いを語り、「どんな所で誰との出会いがあるかは、誰にもわからないものなんだよ」とラーニーを諭すのですが、チントゥは高齢の祖母に椅子を持って来て座らせてあげるのです。他にも、アムスで旅行中のラーニーの滞在先をヴィジャイが電話で問い合わせて来た時は、「あれ? 電波状態が悪いな、プスプスプス...」と言って切ってしまい、「姉さんのアドレスだとォ、このバカが」みたいな感じで毒づきます。こういう細かいシーンがあるとないとでは、チントゥのキャラクターや存在感もまったく違ってきてしまいます。


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ところで、この弟チントゥを演じている少年、チンマイ・チャンドラーンシュは、何と『ミルカ』(2013)でミルカの小学生時代の親友を演じていた少年でした。『ミルカ』の時もちょっと太っていて、二人して裸で川を渡って学校に行ったり、先生に叱られて立たされたりと、結構出演場面の多かったサムプリート役です。最後のパートでは、サムプリートは大人になったミルカと再会し、分離独立の混乱時に列車の座席の下に隠れて命を長らえた、と説明する場面があるのですが、その回想シーンで再びチンマイ君が出て来ます。ちょうど『ミルカ』の直後に、『クイーン』に出演したようですね。前述の場面以外にも芸達者なところを見せているので、『クイーン』をご覧になる時は彼にも注目してあげて下さい。

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そして、以前のこの記事にも書いた、日本人で両親が2011年3月11日の東日本大震災の犠牲となり、家も仕事も失ったタカの描写に関するシーンがすべて復活したのは、嬉しい限りでした。というか、ラーニーが3人と別れるシーンではまた泣いてしまったのです。確かに、タカ役の俳優ジェフリー・ホーの日本語はたどたどしくて耳にさわるのですが、そんなことも忘れ、ラーニーをハグするタカに「いい子だねえ、君は」と思わずうるうるしてしまったのでした。短縮版をご覧になった方も、ぜひもう一度、大画面で完全版をご覧いただけると嬉しいです。特に、シネマート新宿では、1日の上映のうち何回かが大きなスクリーン1に設定されています。それを狙ってぜひどうぞ。上映が早くに終わる可能性もありますので、お早めにいらしてみて下さいね。

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それで、心配していたパンフレットですが、ココロヲ社の担当さんからのご連絡で、1月6日の初日にちゃんと間に合ったことがわかりました。やれやれです。私の自宅に送って下さるとのことだったのですが、待ちきれずに昨日1部買ってしまいました。ページ数が少なく、中身も薄いので(トホホ...)、1部500円で販売されています。で結局、コラムを書いたのは私1人。ココロヲ社の担当さんもいろいろトライなさったようですが、執筆者が見つからなかったようです(まあ、年末押し詰まってからのバタバタでしたからねー)。1つ嬉しいことに、『クイーン』の挿入歌リストと歌手の名前一覧が1ページに載せてあり、昨日『クイーン』を見ていて、歌がすごく上手に配されているけど、一度タイトルを確認して歌詞を見てみなくちゃ、と思った私にとっては、これですぐ検索できる!とありがたかったです。

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パリのディスコでラーニーが「あ、インド映画音楽だ!」と飛び上がり、お立ち台に登って踊り狂うシーンの歌は「Hungama Ho Gaya(ハンガーマー・ホー・ガヤー/騒ぎになっちゃった)」で、1973年の映画『Anhonee(アンホーニー/不可能)』の中の歌だとか。元の劇中では女優ビンドゥ(『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』のステージママ、カーミニ役の人です)がお酒を飲みながら歌い踊るのですが、プレイバックシンガーはアーシャー・ボースレーとなっています。とてもセクシーな声で、『クイーン』ではこれをリミックスして若手男性歌手アリジート・シンの声を加えてあります。元歌はYouTubeの画像があまりよくないので、『クイーン』版を貼り付けておきます。

Queen | Hungama | Full Song | Kangana Ranaut | 7th March 2014

では、皆さんが劇場でラーニーと会って下さることを祈っています。藤井美佳さんの字幕もとても読みやすく、この作品にピッタリですので(とはいえ、短縮版の字幕、さらにやり直しての完全版の字幕と二重手間になり、本当にお疲れ様でした)楽しんで下さいね。あと、ココロヲ社さんが、何も知らされないまま短縮版を上映させられてしまった横浜のシネマ・ジャック&ベティさんと、こちらも短縮版と知らされずに見せられたお客様方(私もその1人)に、この機会にひと言謝って下さるといいのですが、そこまでは無理でしょうか...。もう、インド映画にこんな事件が起こらないよう、心から願っています。

最後に、新しい予告編を見つけましたので付けておきます。

インド発スタイリッシュガールズ・ムービー/

映画『クイーン 旅立つわたしのハネムーン《オリジナル完全版》』予告編

念のため、オリジナル予告編というか、前の予告編もどうぞ。こうして見ると、だいぶ違うものですね。

婚約を破棄されたヒロインが…!映画『クイーン 旅立つわたしのハネムーン』予告編



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