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2月10日(金)公開の見応え満点!中国映画(2)『崖上のスパイ』

2023-02-10 | 中国映画

昨日は中国西北部の農村を舞台にした『小さき麦の花』(2022)をご紹介しましたが、今日の作品は1934年のハルビンを舞台にしたサスペンス劇『崖上のスパイ』(2021)です。こちらは雪深い季節の中国東北部、当時日本による傀儡国家「満州国」(1932-45)があった場所、中でも首都新京(現在の長春)の北方にあった街ハルビンで、スパイたちと当局の特務とが繰り広げる息詰まる闘いを描いています。まずは、映画のデータからどうぞ。

『崖上のスパイ』公式サイト
 2021年/中国/120分/英語題:Cliff Walkers/原題:懸崖之上
 監督:チャン・イーモウ(張藝謀)
 主演:チャン・イー(張譯)、ユー・ハーウェイ(于和偉)、リウ・ハオツン(劉浩存)、チュウ・ヤーウェン(朱亞文)、チン・ハイルー(秦海璐)
 配給:アルバトロス・フィルム
※2月10日(金)より新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国公開

<すべての画像クレジット>
©2021 Emperor Film and Entertainment (Beijing) Limited Emperor Film Production Company Limited China Film Co., Ltd. Shanghai Film (Group) Co.,Ltd. All Rights Reserved

1934年、極寒の季節。雪深い森の中、パラシュートで4人の男女が地上に降りてきます。彼らはソ連で訓練を受けた精鋭工作員たちで、やがて二手に分かれます。一組は、リーダー格のチャン・シエンチェン(張憲臣/チャン・イー)と少女のような若い女性のシャオラン(小蘭/リウ・ハオツン)、もう一組は少し年上の女性ワン・ユー(王郁/チン・ハイルー)と目の鋭い青年チュー・リャン(楚良/チュウ・ヤーウェン)でしたが、別れ際、チャンとワン・ユーは「生き残った方が子供を探す」という謎の言葉を交わし合います。そして4人は、「зарница」とロシア語で書かれた小さな缶から白い錠剤を1つずつ取り出し、雪原へと二手に分かれて去って行ったのでした。

チャンの組はやがて案内役2人と出会いますが、彼らは当局の回し者で、からくも窮地を脱したチャンとシャオランは、森を抜け出して無事ハルビン行きの列車に乗り込みます。列車にはワン・ユーとチュー・リャンのほか、彼らを迎える協力者ジョウ・イー(周乙/ユー・ハーウェイ)らも乗っていましたが、いろいろハプニングがあり、結局ワン・ユーとチュー・リャンはジョウとその仲間のジン・ジーダー(金志徳/イー・カイレイ)、ルーミン(魯明/リー・ナイウェン)と共に、古びた洋館に落ち着きます。そこには世話係の女性シャオモン(小孟/周暁凡)らもいて快適だったのですが、実は彼らは皆、特務科の人間でした。特務科長のガオ(高/ニー・ダーホン)は銃殺間際に寝返った工作員のシエ・ズーレイ(謝子栄/レイ・ジャーイン)から、彼らの行動をすべて聞いていたのです。

一方、列車で別れたチャンとシャオランも、再会を果たしていました。チャンのアジトであるホテルに行ったシャオランは、そこで今回の作戦の内容を聞かされます。作戦名は「ウートラ(烏特拉)」と言い、元はロシア語の夜明けを意味する「утрення(ウトレーニヤ)」の語源「ウートロ」から名付けられたものでした。これは、日本側の監獄から脱出したただ1人の人物、王子陽(ワン・ツーヤン)を国外に逃がすことを目的とし、満州国における日本のひどい弾圧ぶりを国内外に知らしめるため、彼に生き証人として発言させる作戦なのです。しかし特務科の追求は厳しく、暗号を使って連絡したりしながらチャンとシャオラン、そしてワン・ユーとチュー・リャンは動いていくのですが、ついにチャンが特務科に捕らえられてしまいます...。

登場人物がそれぞれ、表の顔と裏の顔を持っているような設定で、予備知識なしに見るとなかなかストーリーについて行けないかも知れません。ぜひ公式サイトの人物相関図を前もってご覧になっておくことをお勧めします。ただ、人物の見分けがつかなくても、緻密なストーリーの持つ面白さにからめとられてどんどん見ていけるので、最初は予備知識なしにドキドキしながら見て、二度目にしっかりと細部を見直す、という楽しみ方もできるかも知れません。実は今回はオンライン試写を見せていただいたので、私はその方法でたっぷりと楽しませていただきました。本当に、超極上のサスペンス映画です。

さらにすごいと思うのは、真冬の雪深い中で撮影されていることで、冒頭の森のシーンは圧巻です。最初からこんな圧巻が押し寄せてきてどうするんだ、と思っていると、その後の列車内での駆け引きとアクション、雪の小路での追いつ追われつ等々、いくつもの見せ場が次々と登場して、2時間はあっという間でした。セットながらハルビンの街もそれらしき雰囲気をたっぷりとまとって再現されており、一部、こんなにロシア語表記が溢れていたのかしら、と疑問に思って昔の絵はがきイメージなどを見てみるとそのとおりだったりして、チャン・イーモウ監督のリサーチは完璧のようです。俳優たちもそれぞれにはまり役で、特に上写真のシャオラン役リウ・ハオツンと、下写真のワン・ユー役チン・ハイルーはとてもチャーミングでした。

リウ・ハオツンと聞けば、パッと思い浮かぶのが、チャン・イーモウ監督の前作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』(2020)の頭髪ヤマアラシ少女ですが、あの作品でチャン・イーと共演し、デビューした彼女も着実にキャリアを重ねています。でもまだまだ「少女」という雰囲気が鮮明で、それが本作でもいい味を出しています。本作でまた、日本でのファンが増えることでしょう。『ワン・セカンド』はこちらで紹介していますので、興味がおありになる方はチェックしてみて下さいね。最後に『崖上のスパイ』のロング版予告編を付けておきます。ぜひ後日、映画館でチャン・イーモウ・サスペンスをたっぷりとお楽しみ下さい。

2.10公開『崖上のスパイ』予告編<ロング>

 


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