アジア映画巡礼

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韓国映画『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』明日から公開!

2018-05-04 | 韓国映画

ギリギリになってしまいましたが、韓国映画の力作『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』が明日から劇場で公開となります。ソル・ギョングとイム・シワンが真正面からぶつかり合う、ハードなフィルム・ノワールの本作は、2人の熱演のほかにも見どころが多く、かなりスタイリッシュな作品となっています。まずは、作品のデータをどうぞ。


『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』 公式サイト 
2017年/韓国/韓国語/120分/原題:불한당(不汗党)/英題:The Merciless
 監督:ビョン・ソンヒョン
 主演:ソル・ギョング、イム・シワン、キム・ヒウォン、チョン・ヘジン、イ・ギョンヨン
 提供:ツイン、Hulu
 配給:ツイン
※5月5日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

 ⓒ 2017 CJ E&M CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED

出所した若い男ヒョンス(イム・シワン)を刑務所の門前で出迎えたのは、真っ赤なオープンカーに乗った中年男ジェホ(ソル・ギョング)でした。そして、2人を遠巻きにするヤクザたちの集団--ジェホはそのヤクザたちを率いる、コ社長(イ・ギョンヨン)の麻薬密売組織のナンバー2だったのですが、そんなジェホにヒョンスはタメ口で話しかけます。3年前に刑務所で知り合った2人は、以来様々な出来事を経て、年齢も20歳以上の差がありながら対等な関係になっていたのでした。

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刑務所でジェホがヒョンスに目を付けたのは、なまっちろい青二才のくせに、平手打ちケンカの賭け試合で大力の相手に挑んでみたりする、肝っ玉の据わり加減のせいでした。刑務所でタバコの闇流しを一手に仕切っていたジェホでしたが、そこに新しい囚人として大物ヤクザ(ホ・ジュノ/特別出演)が入ってきてその特権を奪ったため、刑務所内でのジェホの地位は低下、反撃に出ようとしていたところだったのです。やがて大物ヤクザを始末したジェホはヒョンスも取り込み、2人の間には友情というか兄弟愛のようなものが芽生えてきます。それが固い絆となったのは、ヒョンスの母親が交通事故で亡くなり、葬儀にも参列できなかった時に、ジェホが裏から手を回してヒョンスを一時出所させてくれた時でした。戻ってきたヒョンスはジェホに、「兄貴、俺は警察の人間なんだ」と告白します。ヒョンスは女性チーム長のチョン主任(チョン・ヘジン)の指揮下、麻薬密売組織殲滅のために刑務所に潜入していたのでした。

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それを聞いたジェホは、2人で麻薬密売組織を乗っ取ることを考えます。こうして、先に出所したジェホがヒョンスの出所を迎えに来た、というわけなのでした。コ社長に引き合わされたヒョンスは、組織の中ですぐに頭角を現していきますが、それを苦々しく見ていたのは、コ社長の甥で常務のビョンガプ(キム・ヒウォン)でした。ビョンガプは前々から、ジェホがナンバー2の地位を占めているのを苦々しく思っていたのです。こうして、警察も含めたそれぞれの思惑が交錯しながら、物語は沸点へと突き進んでいきます...。

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映画の冒頭、あるチンピラが釜山港の岸壁で、魚料理を食べています。料理に手を出さずに立っている男と何やら面倒くさい魚論議を始めたかと思うと、立っている方の男、ビョンガプが相手を撃ち殺します。撃ち殺された男は誰だったのか、そしてなぜ撃ち殺されたのかは、物語の進行に従って謎が解けていくのですが、こうしたミステリー要素も随所に挟みながら、異質な存在であるジェホとヒョンスが結びつき、さらには破綻するまでがスタイリッシュな映像で描かれていきます。どの人物も一筋縄ではいかず、それぞれの人物別に一編の映画を作ってもいいぐらいで、特にソル・ギョングが演じるジェホはつかみどころがありません。残虐かと思うと心優しく、大胆かと思うと小心で、見ている方はとまどうこともしばしば。複雑な人物像を作ろうとするあまり、脚本が少し凝りすぎたかな、という気もします。

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特にジェホの残虐さが発揮されるのは、ホ・ジュノ演じる新来の大物を刑務所の食堂で料理する場面。ヒリヒリするような拷問が続くのです。ホ・ジュノの映画出演は久しぶりだなあ(調べてみたら、2010年の『黒く濁る村』のちょい役以来のようです。テレビドラマでは2016年の「ビューティフル・マインド~愛が起こした奇跡~」や2017年の「仮面の王 イ・ソン」に出演しているので、そろそろ本格復帰なのかも知れません)とか思っていたら、思わず顔をそむけたくなるシーンが続き、震えがきてしまいました。

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イム・シワンが演じるヒョンスも見どころシーンの多い役で、潜入捜査官になりたての頃のりゅうちぇるのような格好から、刑務所時代の少年のようなたたずまい、そして出所後にいっぱしのヤクザになった図太い表情など、様々な顔を見せてくれます。『弁護人』(2013)、『戦場のメロディ』(2015)、『ワンライン/5人の詐欺師たち』(2017)、さらに本作と、映画俳優としてもしっかりと基礎固めをして兵役に就いたイム・シワン。特に、ソル・ギョングとがっぷり四つに組んだ本作は、彼の中で大きな足跡を残しているに違いありません。来年4月の除隊後が楽しみですね。

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あと2日残ったゴールデン・ウィーク、どうぞ韓国映画でお楽しみ下さい。



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