アジア映画巡礼

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本日よりJAIHOで配信開始! インド映画の最高峰作品『炎』!!

2022-08-06 | インド映画

本日8月6日(土)より、JAIHOで配信が始まったのがインド映画で最高の人気を誇るヒンディー語映画『炎』(1975)です。原題を『SHOLAY(ショーレー)』というこの映画は、「インド映画の金字塔」「インド映画オールタイムベストワン」「5年間ロングラン上映を続けた史上最大の人気作」等々どんな形容詞を付けても足りないくらい、インド人に愛されている映画なのです。ですので、「私はインド映画ファン」と言えるためには、『炎』を見ておくことが「マスト」中の「マスト」。それも、10回ぐらい見て、主要セリフは全部暗誦できるぐらいでないと、インド人からは「インド映画ファン」の認定は出してもらえません。それもそのはず、『炎』以降のインド映画には、『炎』のセリフを引用したものが星の数ほどあるのです。最近も2本の映画で引用に遭遇したのですが、それをお話する前に、『炎』の基礎知識とストーリーをどうぞ。

Sholay-poster.jpg

『炎』
 1975年/インド/カラー/204分/原題:SHOLAY शोले
    監督:ラメーシュ・シッピー
 製作:G.P.シッピー 
    脚本:サリーム=ジャーヴェード(サリーム・カーン&ジャーヴェード・アクタル)
 作曲:R.D,バルマン
 出演:ダルメーンドル、サンジーウ・クマール、ヘーマー・マーリニー、アミターブ・バッチャン、ジャヤー・バードゥリー、アムジャド・カーン
  公開日:1975年8月15日

ご存じの方もあると思いますが、『炎』はハリウッド映画『荒野の7人』(1960)から着想を得て、ラメーシュ・シッピー監督が作った作品です。『荒野の7人』の元ネタはご承知のように黒澤明監督の『七人の侍』(1954)なのですが、ずっと前、1988年1月にラメーシュ・シッピー監督に会った時には、「いや、『七人の侍』は見ていない」と言っていました。下の写真は、事務所で会ってくれたラメーシュ・シッピー監督です。友人のナスリーン・ムンニー・カビールが連れて行ってくれました。

この年1988年4月には、日本政府とインド政府の協力による催し「インド祭」の一環として「大インド映画祭1988」がぴあ主催で開かれ、セレクションを担当した私は上映作品25本の中に真っ先に『炎』を入れたのでした。開催の2年ほど前に日本にやってきた交渉担当のインド人高官から、「『炎』などという下らない映画を入れるのはけしからん」と言われ、猛反発して反論したことを思い出します。その人が引き下がってくれたおかげで、無事『炎』は上映され、第2会場となったいまはなき吉祥寺バウスシアターで上映した時は、チケットを求めるインド人観客の長ーい列がバウスから西友の前を越えて、駅の方まで続いたのでした。映画祭後、この時の上映作のほとんどは国立映画アーカイブが買い上げて下さり、その後何度か上映されたので、ご覧になった方も多いと思います。今回は字幕を一新し、かつデジタル・リマスター版での配信なので、きれいな画面でお楽しみいただけます。では、ストーリーもどうぞ。

主人公は、ケチな泥棒コンビのヴィールー(字幕は「ヴィール」/ダルメーンドル)とジャイ(アミターブ・バッチャン)。2人は昔、勇敢な警部タークル・バルデーウ・シン(サンジーウ・クマール)と共に列車を襲った盗賊と戦い、負傷した警部を病院に運んだことがありました。警部はその時逮捕した2人を護送中で、逃げようと思えば逃げられたのに誠実な行動をとった2人に感銘を受けます。でもその後も2人は悪事を続け、刑務所に入ってばかり。ところがある時出所してみると、警部が2人を待っていました。「もう警部ではない、単なるタークル(地主等に対する敬称)だ。お前たちに頼みがある」と言うと、盗賊のガッバル・シンを生け捕りにしてくれるよう言い、多額の報酬を呈示します。こうしてタークルの村にやってきた2人は、おしゃべりな馬車の御者娘バサンティー(字幕は「バサンティ」/ヘーマー・マーリニー)と知り合い、また、タークルの家には息子の未亡人ラーダー(ジャヤー・バードゥリー/この頃は旧姓を名乗っていた)とも出会います。穀物を奪おうと村にやってきた盗賊ガッバル・シン(アムジャド・カーン)の手下3人は、ヴィールーとジャイによって追い散らされますが、怒ったガッバル・シンは大規模な襲撃を仕掛けてきました...。

さて、いよいよ『炎』の引用のある映画のご紹介ですが、偶然にも今、JAIHOで『炎』と同時に配信されているのが、1997年に日本で公開されて、現在のインド映画ブームの第一歩となったヒンディー語映画『ラジュー出世する』(1992)です。実は実は、『ラジュー出世する』の中にも、『炎』のセリフが引用されているのです。映画の冒頭、シヴァ神を拝み倒して無事大学を卒業した主人公ラジュー(シャー・ルク・カーン)は、ダージリンから鉄道を使ってムンバイ(映画が撮られた当時はボンベイ)にやってきます。彼はムンバイで就職し、建築技師として立派な建築物を作ることを夢みているのですが、まず最初に頼ったのが「アーザード・ナガルに住むラーム・モーハン」という知人。ところが、アーザード・ナガルに着いてみんなが集まるお茶屋で聞いてみても、誰もそんな人を知りません。途方にくれるラジューを気の毒に思ったお茶屋の店主は、「グッルー・ダーダー(親分)なら知っているだろう。グッルー親分のところに連れて行ってやれ」と皆に頼んでくれます。それで、何人かが一緒にグッルー親分のところに行くのですが、その時グッルー親分はと言うと...。

盗賊の親分ガッバル・シンを演じたアムジャド・カーンの写真を見ながら、こうつぶやいているのですね。

グッルー「"この手を貰おう タークル" あんたはうまい俳優だった」

「この手を貰おう タークル」は「Yeh haath mujhe de de, Thakur」で、劇中では下のシーンとなります。ちょっと怖いシーンで、1976年1月にデリーで初めて『炎』を見た時には、場内から「ああっ!」という悲鳴のような声が上がりました。

続いてグッルー親分のところに手下の青年がやってきて、こう言います。

手下  「親分 誰か来てます」
グッルー「”相手は何人だ”」
手下  「”5人で”」
グッルー「映画『炎』の中じゃ2人だったがな まあいい」

「相手は何人だ」は「キトネー・アードミー・テー」という、村から何も奪わず逃げ帰ってきた手下をガッバルが問いただす時の、一番最初のセリフです。このセリフが出れば『炎』、とみんなわかるぐらい、超有名なセリフなので、ぜひ憶えて下さいね。「キトネー(何人の)・アードミー(男、人)・テー(いた)?」憶えたら、今度会ったインド人に何かの時に言ってみましょう。「お!」という顔をされるはずです。(されなくても責任は取りませんが)

この問いに対して逃げ戻って来た手下は「サルカール(親分)、ドー・アードミー(2人で)」と答えるのですが、『ラジュー出世する』の中ではラジューを連れて大勢がやってきたので、「5人で」となったわけですね。『炎』の方ではこのあと、ガッバル・シンがねちねちと3人の手下をいたぶり、最後には...というシーンが続くのですが、他作品で好んで引用されるのがこのシーンのセリフです。

そして、同じくこのシーンが引用されているのが、9月23日から公開の『スーパー30 アーナンド先生の教室』(2019)です。アーナンド先生が教え子たちを鼓舞するために、街中で英語劇をやらせる場面があるのですが、それが『炎』をベースにしたものなんですね。もちろん、「キトネー・アードミー・テー」も英文になって登場します。ここを十分楽しむためにも、ぜひ『炎』を見ておきましょう! 最後に、『炎』のソング&ダンスシーンを2つ付けておきますが、映画の前半に出てくるシーンで、「Yeh Dosti Hum Nahi Todenge(この友情は壊すまい)」と「Holi Ke Din Dil Khil Jate Hain(ホーリー祭の日は心が浮き立つ)」です。ソング&ダンスシーンはほかに3曲あるのですが、どの曲も憶えて歌えるようになるとインド人に大ウケしますので、ぜひぜひモノにして下さいね...と思って動画を貼り付けようとしたのですが、他のサイトでは利用NGだったので、YouTubeのアドレスをリンクさせておきます。

「Yeh Dosti Hum Nahi Todenge」はこちら

「Holi Ke Din Dil Khil Jate Hain」はこちら

『炎』と『ラジュー出世する』はDVDで出してほしいです~~~。永遠に残したい、名作2本です。インドでは、セリフを憶えるために名セリフ集レコードまで発売されたんですよ。インド人の『炎』熱がわかりますね...。


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