アジア映画巡礼

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秋の二重丸オススメ韓国映画<その3>『ベテラン』

2015-11-19 | 韓国映画

この秋の二重丸オススメ韓国映画、『尚衣院-サンイウォン-』『技術者たち』に続く3作目は、リュ・スンワン監督作品『ベテラン』です。これがまあ、まさに痛快作そのもので、リュ・スンワン監督の新境地に思わず拍手したくなる面白い作品になっています。日本語の「ベテラン」という地味な発音よりも、韓国語の激音化した「ベッテッラン!」がよく似合う本作、まずはデータをどうぞ。


 『ベテラン』 公式サイト

2015年/韓国/123分/原題: 베테랑
 監督・脚本:リュ・スンワン
 主演:ファン・ジョンミン、ユ・アイン、ユ・ヘジン、オ・ダルス、チャン・ユンジュ 

 配給:C J Entertainment Japan
 宣伝:中目黒製作所、田中館 

12月12日(土)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

 

 ©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

 主人公は、ソウル警視庁広域捜査隊の刑事ソ・ドチョル(ファン・ジョンミン)。けんかっ早くて品が悪いのですが、刑事としての使命感は人一倍、という熱血刑事です。彼の仲間は、そんな部下を持って愚痴ばっかり言っているチーム長(オ・ダルス)に、ハイキックが得意技の紅一点ミス・ボン(チャン・ユンジュ)、立派なガタイのワン(オ・デファン)、そして若くてイケメンのユン(キム・シフ)。今日もドチョルとミス・ボンがガラの悪い金持ちと愛人に化け、高級車窃盗犯事件を追って、車販売会社に来ていました。販売会社の社員が実は窃盗犯で、彼らは売った車に発信器を付け、顧客の所から盗み出してはロシア人一味に売り飛ばしていたのです。ドチョルたちは韓国人一味を捕らえ、彼らと共にプサンに赴いてロシア人たちも一網打尽。ミス・ボンのキックが決まり、「ミス・ボン、ナイスぅ!」と叫ぶドチョルらは、実にいいチームでした。

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そんなドチョルが次に直面したのは、この時プサンまで盗難車を運んでくれたトラックの運転手(チョン・ウンイン)が、賃金未払いで抗議に行った先の大企業で引き起こした自殺未遂事件。調べていくうちに、その企業は大財閥シンジン・グループの中核であり、財閥の御曹司チョ・テオ(ユ・アイン)が事件と関係がありそうなことがわかってきます。テオの異常さをその目で見て、確信を深めるドチョル。テオの腹心であるチェ常務(ユ・ヘジン)は何とか事件をもみ消そうとしますが、チェ常務の悪辣な工作に対し、ドチョルはますます闘志を燃やしていきます....。

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本作の見どころはまず、何と言ってもファン・ジョンミンのはみ出し刑事ぶり。汚い言葉は吐くは、血の気が多くて大暴れするは、上司の言うことは聞かないは....。それでいて、実に魅力的な人物像を創り出しているのですから、ここのところ『国際市場で会いましょう』(2014)、『新しき世界』(2013)、『生き残るための3つの取引』(2010)などで磨いてきた演技力が、さらにパワーアップしていると言えるでしょう。他の役者にはマネのできない、「ファン・ジョンミン・スタイル」が出来上がりつつある感じです。

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さらに、それを受けて立つユ・アインのヒール役がまた見事。「ナッツ姫」ならぬ「ドーベルマン王子」を、アクの強い演技でグイグイと見せていきます。これまでの『ワンドゥギ』(2011)などで見せたさわやかな若者像とは180度違う根っからのワルで、親戚でもある年上のチェ常務をあごで使い、笑顔の裏に潜む酷薄さを思う存分見せつける....。ぶちキレる演技などはまだちょっとかわいく見えてしまいますが、ユ・アインのこの悪役ぶりによって、ファン・ジョンミンの演技がいっそう引き立ちました。ユ・アインも、成長著しいですね。

©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

そして、リュ・スンワン監督と言えば、やはりアクション。いつも組んでいる武術監督チョン・ドゥホンと共に、本作でもイタいアクションの数々を見せてくれます。車窃盗団一味のアジトでの闘いから始まって、クライマックスの繁華街明洞(ミョンドン)での大アクションシーンまで、見ている観客の生身にこたえるアクションの数々はさすがリュ・スンワン監督ですが、本作ではこれまでと違う点も。本作ではガチのアクションの中に、笑いがいっぱい盛り込まれているのです。リュ・スンワン監督作品では、これまでもコメディとして作られた作品の中ではアクションの中に笑いが上手に取り込まれていましたが、シリアスな作品ではこれが初めてかも。

©2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

それがどんな効果を発揮しているかは、画面を見てのお楽しみ。私が特に好きなのはミス・ボンの活躍するアクションで、主人公ドチョルの声と合わせて、「ミス・ボン、ナイスぅ!」と叫びたくなります。ミス・ボンを演じるチャン・ユンジュ、これがスクリーン・デビューというから驚きです。また、チェ常務を前に、アクションシーン以上に胸がすくようなシーンを見せてくれるのが、ドチョルの妻を演じるチン・ギョン。このシーンは脚本のうまさが際立つシーンともなっており、そこ、リプレイして、と願ってしまったほど。リュ・スンワン監督、これまで男優の使い方がうまい人だとは思っていましたが、実はなかなかのフェミニストでは、と認識を新たにしました。

そのリュ・スンワン監督は、現在来日中。本日新宿で行われたイベントに登場したはずで、こんなレポートが早くもアップされています。武田梨奈、カッコいいですね~。事前にご案内できずすみません。

『ベテラン』の過激な予告編はこちらです。本編はこの何倍も面白いので、ご期待下さい!

映画『ベテラン』予告編

 


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