goo blog サービス終了のお知らせ 

アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

第40回香港国際映画祭(HKIFF)レポート(3)中国映画の最前線

2016-03-30 | 中国語圏映画

香港国際映画祭(HKIFF)は昔から、インディーズ系の中国映画を幅広く紹介する映画祭として定評がありました。特に1997年の香港返還の前は、中国では公開どころか上映もできない地下電影(アンダーグラウンド映画)がHKIFFで上映され、中国政府との間に火花が散ったことも。返還後はその状況も徐々に変わり、今回の中国映画のラインアップを見てみると、インディーズ系の作品が多いとは言ってもすでに日本の映画祭などで上映済みの作品も入っていて、何やらHKIFFの先鋭度が薄れたような印象も少々。今回の映画祭で上映された中国映画の一覧は以下の通りです。

見た作品には短いコメントを付けておきましたが、詳しくはHKIFFの公式サイトから作品名をクリックしてみて下さいね。

★首映禮(Galas)部門
『火鍋英雄(Chongqing Hot Pot)』
 監督:楊慶/主演:陳坤、秦昊、白百何

こちらで紹介済み。とーっても面白かったので、日本でも公開、あるいは映画祭上映されることを願っています。


『長江圖(Crosscurrent)』
 監督:楊超/主演:辛芷蕾、秦昊、王宏偉

本年のベルリン国際映画祭で、撮影監督の李屛賓(リー・ピンビン)が芸術貢献賞(銀熊賞)を受賞した作品です。古い中型船「廣徳039号」が、荷物を運んで上海から上流へと航行していく旅を撮ったもので、若い船員高淳(秦昊/チン・ハオ)が船中の古びた缶から「長江図」と命名された記録を見つけ、それを辿りながら南京や三峡ダムなどを通過していく、という物語になっています。上海で見かけた女性(辛芷蕾)がその後も現れたり、「長江図」に書かれている詩が画面に現れては読み上げられたりと、夢幻的な雰囲気を持つ作品で、芸術貢献賞を受賞したのがうなずける力のある構図が展開していきます。中でも、三峡ダムの巨大な水門には圧倒されました。


『美好合一2016(Beautiful 2016)』~オムニバス映画の1編が賈樟柯監督作品。のちほどご紹介します。

★新秀電影競賽(Young Cinema Competition)
『枝繁葉茂(Life After Life)』
 監督:張憾依/主演:張力、張明軍


住民が町へと移ってしまい、寂しくなった農村に住む父と小学生の息子。母は10年前に亡くなっており、父は母との思い出がある木が気になっています。ある日山へ薪をとりに行った時、突然息子が「明春」と父に呼びかけます。自分は亡くなった妻の秀英だと言うのです。こうして息子の口から語られる妻の言葉に従い、妻の実家へとやってきた父は、次々と不思議なことを告げられます....。まるで中国の民話のような物語でした。最初、「薪のオンドルよりも電気暖房にした方が便利だよ」とか言っていた小学生の息子が、やさしげな声で亡き母の思いをいろいろ語り出すシーンは、その声変わり前の声が女性の声に聞こえ、不思議な気分になりました。撮影手法等は素人に近いのですが、農民の樹木への思い、開発や発展への批判的眼差しなども込められていて、見飽きない作品でした。


『老石(Old Stone)』
 監督:馬楠/主演:陳剛、耐安、王宏偉



★記録片競賽(Documentary Competition)
『悲■魔獣(Behemoth)』
 監督:趙亮



『翡翠之城(City of Jade)』
 監督:趙特胤



★作者風(Auteurs)
『徳昴(Ta'ang)』
 監督:王兵


『タルロ』~2015年東京フィルメックスで上映され、最優秀作品賞を受賞した作品です。
 監督:ペマツェテン



★中国電影新貌(Chinese Cinema Now)
『向北方(Back to the North)』
 監督:劉浩/主演:南笙、蘇藝娟


全編モノクロで撮られた作品。長江沿いの町が舞台で、そこの織物工場で働くハイティーンの小艾(南笙)が主人公です。小艾の父は北の方の町の大工場で働いており、数えるほどしか帰宅しません。どうもその地に別の女性がいるらしく、帰宅しても母とはベッドを別にしたりしています。フェリー乗り場で働く母は、まだ父のことを愛しているのですが、両親の間はぎくしゃくし、小艾は心を痛めます。そんな時、小艾が心臓病と診断され、工場にも行けなくなりました。艾は両親の間を修復することを希望し、父は両親が新婚時代を過ごした内モンゴルの町へ2人を呼び寄せます....。ちょっとテーマがわかりにくい作品で、小艾役の南笙と、母親役の蘇藝娟のチャーミングさは魅力的なのですが、モノクロで撮った意図もよくわからず、というところ。


『凱里ブルース』~2015年中国インディペンデント映画祭で上映
 監督:畢贛/主演:陳永忠、趙達清、羅飛揚



『喊・山(Mountain Cry)』
 監督:楊子/主演:王紫逸、郎月婷

貧しい山村にやってきた一家。物乞いをなりわいとする夫は乱暴者で、美しい若妻(郎月婷)は口が不自由。幼い娘と生まれたばかりの赤ん坊の4人は何とか暮らしていますが、ある時夫が韓沖(王紫逸)が仕掛けた動物の罠にかかり、片足をちぎられてそのまま亡くなってしまいます。村人たちは、生きる手段を持たない未亡人一家に韓沖が三食分の食糧を提供することを義務づけ、こうして徐々に未亡人のこともわかってきます。彼女は裕福な家の娘だったのですが、子供の頃夫にさらわれ、舌をどうにかされて声が出なくなった上、成長すると妻になることを強制されたのでした。紅霞という自分の名前を取り戻した彼女は、長年の重圧から自分を解放し、韓沖と愛し合うようになりますが...。未亡人になったとたん、それまで伝統的な少数民族衣装の着たきり雀だった紅霞が、現代的な洋服を次々と着替えて出てくるなど、リアリティに欠ける部分があって残念。実話を元に作られたそうですが、商業的な成功を意図した作品のように見受けられました。



『岡仁波齊(Paths of the Soul)』
 監督:張揚/主演:楊培、尼瑪礼堆



『河』~2015年東京国際映画祭で上映
 監督:ソンタルジャ



『告別』~2015年東京国際映画祭で上映
 監督:徳格女那



★自主新潮(Indie Power)
『李文漫遊東湖(Li Wen at East Lake)』
 監督:李珞/主演:李文、左炎、小鐵



『癡(ち)』~2015年中国インディペンデント映画祭で上映
 監督:邱炯炯/主演:張新偉、馬小鷗、蔡逸凡


★真的假不了(Reality Bites)
『喜馬拉雅天梯(Ladder to Paradise)』
 監督:䔥寒、梁君健



『吾土(My Land)』
 監督:范倹



『我祇認識nei(Please Remember Me)』
 監督:趙青


実質参加3日間だと、なかなか数をこなすことができず残念です。中国映画に続いて香港映画の各作品もご紹介したかったものの、「香港電影面面観(Hong Kong Panorama 2015-16)」の8作品はまったくDVDが用意されておらず、トニー・ジャー主演の『殺破狼Ⅱ』も見られずじまい。日本でも映画祭上映された『華麗上班族』や『Little Big Master』も入っていました。

(スチールはすべてHKIFF提供)



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« キネマ旬報「2015年映画業界... | トップ | 第40回香港国際映画祭(HKIFF... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国語圏映画」カテゴリの最新記事