アジア映画巡礼

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第40回香港国際映画祭(HKIFF)レポート(4)『美好合一2016』

2016-03-31 | アジア映画全般

香港国際映画祭では、毎年4人の監督をアジア各国から招き、『美好(Beautiful)20●●』というオムニバス映画を作り続けています。昨年は、台湾の蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督作品に日本人俳優安藤政信が出演、そのスチールをアップしたので、安藤政信ファンからたくさんのアクセスがありました。そして今年は、日本の中田秀夫監督が一編を担当、往年の美人女優香川京子が主演する「鎌倉にて」が誕生しました。他の監督とその作品はそれぞれ、香港の關錦鵬(スタンリー・クワン)監督作品で葉童(イップ・トン)主演による「是這様的」、台湾のアイドル出身の俳優蘇有朋(アレックス・スー)監督の「住在幸福大街的王大[女馬]」、そして賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督による「營生」で、今年は合一影業という会社がスポンサーになったため、全体のタイトルは『美好合一 2016(Beautiful 2016)』となっています。

3月23日には、香港文化センターでお披露目上映が行われ、4人の監督と出演者やスタッフが参加。上映前の記者会見に登場した、左からアレックス・スー監督、中田秀夫監督、ジャ・ジャンクー監督、そしてスタンリー・クワン監督です。


アレックス・スーはこれまでにも『左耳』(2015)という劇映画を監督しているのですが、大監督たちと並んでちょっと緊張気味でした。台湾や中国のドラマでお馴染みのアレックス・スーは、以前小虎隊というアイドルグループを呉奇隆(ニッキー・ウー)や陳志朋(ジュリアン・チェン)と結成していて、その後各人が俳優として活躍するようになり、アレックス・スーは今や監督としても羽ばたこうとしている、というわけです。40才を過ぎてしまいましたが、キュートな童顔は昔のまま。この日も会場にはいっぱいファンが詰めかけていました。

中田監督は、ご承知のようにジャパニーズ・ホラーの立役者で、『リング』(1998)シリーズや『仄暗い水の底から』(2002)、そして近年の『クロユリ団地』(2013)など、たくさんの作品をヒットさせています。


記者会見では、記念撮影後香港女優のイップ・トンと固い握手を交わしていました。イップ・トン、中田監督のファンなのでしょうか? それとも、中田監督がイップ・トンのファン? 映画評論家宇田川幸洋さんのように、日本にも1980・90年代にイップ・トンのファンになった人は多いですからね。


こちらは、ジャ・ジャンクー監督とスタンリー・クワン監督です。


スタンリー・クワン監督はもちろん主演女優のイップ・トンと登場したのですが、ジャ・ジャンクー監督のそばにも、彼の妻であり作品のミューズでもある趙濤(チャ・タオ)が。ところがジャ・ジャンクー監督が強調するところによると、「今回彼女は出演していません。実は脚本に関わってくれて、スタッフとしてこの場にいるのです」とのこと。別の意味で、インスピレーションを与えてくれたのですね。


舞台挨拶では、監督や俳優、スタッフなど、大勢の人が舞台に上がり壮観でした。


アメリカでの仕事が長い中田監督は、流ちょうでわかりやすい英語でスピーチをし、さすが、という感じ。


中田監督の「鎌倉にて」は、こんなお話です。共働きの息子夫婦と一緒に都心に暮らす老婦人美津子(香川京子)のもとにある日手紙が届き、それを読んだ彼女はあわただしく外出していきます。お手伝いさんで22才のさおり(大後寿々花)は、留守を預かる責任感で彼女を追いかけ、1日彼女に付き添って鎌倉の町を巡ることになります。その手紙は美津子の初恋の人からで、戦後間もなく「あなたを絵のモデルにしたい」と声をかけられ、一夏彼の家に通ったのですが、その後連絡が途絶えてしまった相手だったのです。逡巡しながら意を決してその相手の家を訪れた二人が見たものは....。


中田監督作品だというので想像していたタッチとはまったく違う、実にオーソドックスな作品でした。香川京子という女優を美しく撮りたいがために、こんな脚本になったのかも知れません。「香川さんは、まだまだ映画の仕事を続けたいと言っておられました」と中田監督は紹介していました。

「こんな大物監督の皆さんと同じステージに立って、とても緊張しています」と挨拶したアレックス・スー監督の「住在幸福大街的王大[女馬]」は、中国に住む、老境に入りながらも元気なおばさんを撮ったドキュメンタリー映画です。三峡ダムに近い町に犬と共に暮らすチリチリパーマの王大[女馬]は、公園や集会所で踊る人たちのリーダー的存在で、みんなの人気者。その彼女の生活を追った、セリフらしいセリフもコメンタリーもない作品でした。


スタンリー・クワン監督の作品と、ジャ・ジャンクー監督の作品は、ちょっとワケあってのちほど別の記事と一緒にご紹介します。『美好合一 2016』の予告編を付けておきますが、今回は中田監督作品もあるので、日本でも何らかの形で上映されるといいですね。

HKIFF40 Beautiful 2016 Trailer

※のスチールはHKIFF提供




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