映画祭を振り返る その2

2012-01-02 12:34:16 | 代表日記
<12月4日 2日目>
この日最初の上映はハオ・ジエ監督の『独身男』。
出演者は全員実際に村に暮らす人々で、本当に村であったエピソードをミックスして作られた物語。
今では映画で知られるようになったため、観光客が大勢訪れているそうです。


2本目は趙大勇監督によるドキュメンタリー作品『ゴーストタウン』。
監督はある撮影でこの町を訪れて気に入り、その後毎年のようにここへ通って過ごすうちに、映画に残そうと思ったとのこと。
この作品を最後に彼はドキュメンタリーを撮るのを止めていますが、この村にはその後も行っていて、実験映像を撮ったりしています。


この日最後の『占い師』上映の後は、ゲストによるトークショーがありました。
ジャ・ジャンクー監督の『一瞬の夢』や『プラットホーム』で主演俳優をし、現在は栗憲庭電影基金でアート・ディレクターをしている王宏偉さんと、その『プラットホーム』でプロデューサーをされ、東京フィルメックスのプログラム・ディレクターとしても知られる市山尚三さんの対談です。
お二人は長年の付き合いですが、日本で会うのはこれが初めて。
普段の王宏偉さんは俳優としての過去をあまり話したがらないのですが、この日はジャ・ジャンクーに口説かれて学生時代に嫌々出演したときのことや、『プラットホーム』では本当は二枚目俳優が主演の予定だったのを急遽彼に変更した話など語ってくれました。
彼とジャ・ジャンクーは北京電影学院の映画理論学科で同級生でしたが、志望していた監督学科に入れなかったのは、実はふたりとも身長の条件を満たせなかったからだという秘話?も披露。
ファンにはたまらないトークショーでした。



<12月6日,7日 関連イベント 慶應大学日吉キャンパス>
6日は慶應大学で章明監督の講義が行われました。
文学部の授業の一環として、『新娘』の予告編や、大衆向けともいえる最新作の『郎在対門唱山歌』の映像などを流しながら、中国インディペンデント映画の歴史や最近の傾向などについて90分間講義しました。
詳しい情報はこちらにあります。
この間、王宏偉さんは夫人を伴って近くの温泉へ。
タクシー代が高くて驚いていました。

7日は日吉電影節というイベントが行われました。
ゲストに章明監督、王宏偉さん、そして本映画祭代表の中山が参加。
新入生のためと銘打ったイベントではありましたが外部からの参加も可能で、後半になると外部からの人がほとんどでした。
章明監督や王宏偉さんの話を聞きたくて集まってくれた人たちだと思われます。

映画祭を振り返る その3

2012-01-02 12:34:16 | 代表日記
<12月8日 6日目>
第二陣として一足先にやってきたのは徐童監督と彼の作品に出ている唐小雁さん。
本当は8日到着予定が間違えて7日のチケットを買ってしまい、やや勇み足での到着でしたが、そのぶん観光をして楽しんだ様子。
唐さんは生魚が苦手なので焼いて食べようとしていましたが、徐童監督はそれを制止していました。



<12月9日 関連イベント 武蔵野美術大学>
この日は武蔵野美術大学のイメージライブラリーが企画した映像講座で『収穫』の上映と徐童監督の講演が行われました。


上映を一緒に見た徐童監督は、「久しぶりに見て、とても感慨深い。複雑な心境だ」と語っていました。
上映中に隣にいた唐さんによれば、監督は見ながら何度も涙を拭いていたそうです。
監督にとって初の映像作品であり、その後各地の上映で女権団体から妨害を受けたこともあり、そして今では主人公の女性も結婚して幸せになったとの知らせもあり、いろんな思いがこみ上げてきたのでしょう。


夜、ホテルに着くと、中国から張賛波監督と劉健監督が到着していました。

このあと、深夜にもかかわらずラーメンを食べに外へ。
中国の人たちはラーメンが好きです。


<12月10日 8日目>
この日最初の上映は周浩監督のドキュメンタリー作品『書記』。
今回都合により唯一来日できなかった周浩監督でしたが、ネット中継でQ&Aを行うことが出来ました。
これは地方の県書記が主人公ですが、この人は映画の撮影後に収賄の罪で逮捕され、今は獄中にいます。
ただ、収賄というのは在任期間中の8年間で受け取ったプレゼントなどの総額数百万円に対するものだそうで、中国の一般的な収賄に比べたら非常に小さな額です。
権力闘争の結果なのかという問いに、監督も同意していました。


さて、ここで地下の映画館から1階のカフェへ移動し、場外シネマ研究所が開催しているイベント「轟轟烈烈!! 中国インディーズ・ムービー」に参加しました。
昼過ぎから『犬叫ぶ午後』という映画の上映が行われたところで、その後のトークコーナーで張賛波監督と徐童監督が今のインディペンデント映画について語るというものでした。
場外シネマ研究所のブログに詳しい情報があるので御覧ください。


続いての上映は徐童監督の『占い師』。
映画の中では警察に捕まって連絡が途絶えてしまっていた唐小雁さんがQ&Aに登場すると、客席からも声が上がっていました。
二人はその後のエピソードを語ってくれました。
実は唐さんを保釈させてくれたのは徐監督で、唐さんはお礼のために彼を実家に招いたそうです。
そこで唐さんのお父さんに魅力を感じた監督は、次の作品で彼を主人公にすることを思いつき、『老唐頭』という作品が生まれるのですが、これはまたいずれ上映することにします。


この日最後の上映は張賛波監督の『恋曲』。
ある女性の恋愛を追ったドキュメンタリーですが、修羅場などをきちんと撮っていて、どうしてこんな場面が撮れるのかと不思議になるような作品です。
このことについては、「自分でもカメラに魔力があるんじゃないかと思ったけど、そうではなくて、撮ろうと思って関わっているから撮れるだけ」とのこと。
もちろん写っている人たちとの関係があってこそではあるのでしょうけど、それにしてもよく撮れています。
主人公の後日談として、実はまだ二人の関係は続いていて、撮影もしている。しかも次はもっと残酷な話になりそうだとのこと。


上映の後、第二陣の監督たちを歓迎する会が開かれました。
たくさんのボランティアやサポーターの方々にサインをねだられ、監督たちもうれしそうでした。

映画祭を振り返る その1

2012-01-02 11:42:09 | 代表日記
年も明けてしまいましたが、映画祭を日付順に写真で振り返ってみたいと思います。

<12月2日 初日前夜>
第一陣のゲストたちが到着。
ハオ・ジエ監督のみ早い便での到着でしたが、それ以外の人は夜に成田で集合。
前回参加した顧桃監督も、日本での映画撮影のために来日し、映画祭に特別参加しました。


到着後にホテルの近くで食事。
章明監督は刺身が大好物で、何度もおかわりをしていました。
王宏偉さんはラーメンが大好き。初日から連日ラーメン三昧だったとか。



<12月3日 初日>
オープニング前に皆で集合写真。

右端の女性は王宏偉夫人です。

会場にはここでしか買えないDVDや顧桃監督によるオルグヤ絵葉書などグッズがたくさん。


ポスターにも使われている切り絵や、同一の切り絵作家・雷祥生氏による一連の作品も展示しました。
彼は北京の栗憲庭電影基金で勤めながら、インディペンデント映画をテーマにしたシリーズ作品を制作しています。


オープニング作品は章明監督の『花嫁』。
Q&Aでは、ヒロインの女優をレストランでスカウトしたことや、撮影中に主演俳優が怪我をして中断してしまった逸話などを話してくれました。
出演者はみな素人で、彼らの実際の生活を背景に物語を作ったそうです。


次に上映された作品は楊瑾監督の『冬に生まれて』。
前回の『牛乳先生』では2年前にネット中継で参加してくれた楊瑾ですが、今回は初来日です。
主演の二冬とその妻を演じた二人は実際の夫婦で、妻役は監督の親戚なのだそうです。
しかも、物語は実際の二人の馴れ初めをもとにしているとのこと。


初日最後の作品は趙大勇監督の『歓楽のポエム』。
彼は2008年にもここポレポレ東中野での『南京路』上映に来ており、縁のある映画館だと話していました。
詩人の警官を演じている人は実際の警察官で、彼はゴミ派とよばれる詩のグループに属しているそうです。


初日の上映が終わり、ボランティアやサポーターの方々も交えての歓迎会がありました。
本当はこの日に東京を離れることにしていた顧桃監督も、あまりに楽しそうだからと歓迎会に参加していました。