竹心の魚族に乾杯

Have you ever seen mythos?
登場する団体名、河川名は実在のものとは一切関係ございません。

カツイチV長良LTR

2020年05月18日 22時04分11秒 | 兵法書・具足編
カツイチV長良LTR。鮎用の針です。

この針無くして自分の釣りは成り立たないと言っても過言ではありません。

スレ針で且つギザミミ。ギザミミでどうやって結ぶのか疑問に思う人もいるかと思いますが、カツイチのギザは細かくて滑りにくいです。ワタクシの場合ナイロン直結の変型漁師結びです。これまでG社の「G-Hardジョー」、「ラチャ」等使ってみましたがみんなすっぽ抜けました。ところがカツイチに変えてからすっぽ抜け激減です。もちろん結ぶハリスはナイロンでもフロロでも大丈夫ですが、糸質は硬めの方が良いようですね。またハリの号数に対してハリスの号数も合わせてあげます。

使い始めたのは2007年の4月22日。意外と遅いんです。鮎針を使ったのはこれが初めてではなかったんですけど、気に入っていた「G-Hard改良ヤラズ」が販売中止で、代わりになるものをずっっと探してたんですよね。それまで使っていた「ラチャ」などの鮎針は根巻糸でミミクビを作ってそれにハリスを結ぶことになりますけど、この「V長良LTR」だと直結で結べますね。


特徴


「V長良LTR」の特徴はこの形状にあります。「長良型」というのはタチが短く、フトコロに緩いRを持っています。このため合わせた瞬間針先が一瞬外側に開き、また元に戻るようです。ですから大きな本アタリを待つ必要がなく、小さなアタリでもパッと合わせてしまって問題ないです。

早合わせでも魚の顎をより深くキープしてくれていると感じます。「カッパStyle-1」みたいに針先が眠っている針だと結構クチビルだけ浅く掬ってることが多かったんですが、この針に変えてから唇を掬うことが少なくなり、その後のやり取りが非常に楽になりました。この事実に気付いてからはこの針ばっかりですね。

この針での典型的なフッキングは、仕掛がフケた時に軽く糸フケを取ってやると魚が口先でつまんでいた餌を咥え直してくれるみたいで、竿先にグッと重みが乗ると同時に上顎ど真ん中に掛かるパターンです。


「LTR」というのは針先周辺の「ロングトライアングル加工」だそうで、①針先のテーパーが緩いため軽い力でスッと刺さる;②トライアングル加工のため線材のねじれが抑制され弾力が最大限に活きる;という特徴があるようです。①のロングテーパーの恩恵で特にヒラタの小さいのを刺した時に刺さりの良さが実感できます。他のスレ針と比べても、明らかに川虫の持ちの良さ、動きの良さが感じられます。
ゴアかなんかのストッキングウェーダー履いてると、かなりやばいです。簡単にスパッと往ってしまいます。

もちろん②の「トライアングル加工」のおかげで合わせも余裕を持って行えます。フォーリングや仕掛が馴染む途中にフッと咥えてくる魚も掛けられます。早掛タイプですからその後のやりとりでバレる確率が高そうですが、ねじれが少ないせいか案外持ちこたえてくれます。

3つ目の特徴は、線径が細く自重が軽いことです。ヒラタ・オニチョロをエサにした時の馴染みやすさ、アタリの多さは小針を使った場合に近いですね。餌の比重が小さいのに針が重いと餌の舞い方がどうしても不自然になって用心深い食い方になりますから、針を軽くするだけでアタリが出ることが結構あります。また根掛かりが少ないというのも軽い針のメリットですね。

4つ目の特徴は、表面がつや消しになっていること。透明度が高い場合、つや消しかそうでないかでアタリの出方が結構変わってきます。特に7月以降はそんな感じがします。本流でやる時は関係ないですが。


スペック


号数		線径		自重
6.0号		0.35 mm		N.A.
6.5号		0.37 mm		N.A.
7.0号		0.41 mm		N.A.
7.5号		0.435 mm		N.A.



号数の使い分け


号数ですが、通常使うのは6.5号で、7.0号は流速のややきつい時に使います。6.0号は4月頃の短い期間だけ使いますが元気なヤツが掛かるとバラシがやや多いです。7.5号は0.5号という数字の差以上に大きい感じがするんであまり使ってません。水の抵抗も大きくなるから急流だと波に入れにくく、また自重もあるためヒラタよりもオニチョロやブドウ虫向きです。また放流物狙いなら飲まれにくくてちょうどいいと思います。


そんな訳で、V長良LTRは6.5号と7.0号の2サイズが常用サイズで、使い分けの目安は水温12〜14°Cなら6.5号、水温15〜18°Cで7.0号といったところです。

線径は6.5号が0.37mm、7.0号が0.41mmです。

ハリスについては6.5号には0.25号、7.0号なら0.3号を一応の目安としております。



長良型について


長良型の針について、かの恩田俊雄さんはこんなことを言っています。

30年前に、重兵衛のアマゴバリがでたんやが、ひょっとしてもう少し前からあったかも知れんが、わしは知らなんだんや。
〔中略〕
アマゴバリは、今でいう長良型や。ハリ先が非常に短いんがこのハリの特徴や。商売人はアマゴを抜いた時に、すぐはずれる針を好んだで、都合が良かったんやな。
(柴田勇治『郡上釣り アマゴ釣りの原点』山と渓谷社、1988年)


軸とハリ先が短いハリは、昔フジジュウ(藤本重兵衛商店)から売られていたんや。30年か40年前や。型は今の入間に似ているが、もっと軸が短いんや。だけど外れやすいということで、一般受けしなかったんや。
(吉川栄一編『秀渓回帰』釣り人社、1998年)


恩田さんの言う「重兵衛のアマゴバリ」が果たしてどの針を指していたのか分かりませんが、今手元にあるのが「新アマゴ」という針です。

藤本重兵衛 新アマゴ7号

G社の「がまアマゴ」という針に似ていますね。

がまアマゴ7号

G社からはもう一つ「アマゴ引抜」という針も出ていましたね。

アマゴ引抜7号

どちらもバシャバシャ遊ばせているとバレるので抜調子の竿でサッと抜いてしまう、そんなベテラン向けの針でした。また、この頃の渓流針は強度の方も相当なものでしたね。

最近では鮎針でも長良型の針は少なくなってるみたいですね。代用品がなかなか見つからず困っています。
そういえば「入間型」って消えましたね。「人間」じゃないですよ、「入間」です。「練馬」の弟です。<嘘。ケンちゃんコロナで死んじゃったし。


そしてカツイチからは「V長良LTR」の後継として「丸掛」というのが出ているんですが…

ちょっと違うような…

針先が内側に入っちゃってますから“早掛け”するのはきびしいかも…


有効なシーン


針の形状で釣果が大きく変わってくるというのは釣りの面白いところなのですが、上述の『郡上釣り アマゴ釣りの原点』の中で古田万吉さん(万サ)がこんなことを言っています。

柴田:
針は、昔はソデバリでしたね。ハリ先を短くして使ったと聞いたんですが……。
古田:
ほうや、研いで短こうしていくのや。何故かというとやな、アマゴはくわえる時にフッとくわえる。ガクッとはくわえんのや。短いとスーッとかかるが、長いと横にくわえて倒れるんで、なおはずれるんや。
(前掲書)


プロは針先の短さにうるさかったようですね。こちらは袖型ですが。

また、恩田さんも別な本の中で、針先を短くすることのメリットについて触れています。

針先を短く削ることもある。こうすると、引き抜いたときにタモ網の中で口から外れやすくなるし、食いもいいから一石二鳥なんや。
(斎藤邦明編『釣聖 恩田俊雄』つり人社、1995年)


では、どうして針先を短くした方が掛かるのでしょうか?

盛期の波に着いてる山女魚/天魚って、どうも淵にいる奴らと喰い方やアタリの出方が違ってるような気がするんですよね。こんなところにヒントがあるんじゃないでしょうか。

瀬の中のスジに着いている魚の食い方って、あんまり口を大きく開けない気がするんです。

といいますか、むしろ餌を喰うのに口は動かしていないっていう感じがします。いつもうっすら口を開けて酸素を取り入れている訳で、そのまま鰓の動きで水流を増やし、餌を口に誘導すると思うんですよね。それで、どうしても口に入ってくれない時だけ仕方なしに口をちょっとだけ開けると。
口を大きく開け過ぎると水の抵抗が大きいですし。

昔から山女魚・天魚の中にアタリを送って来ない奴がいるという事実は知られていますからねえ。

この辺りの生態については今後、改めて考察してみたいと思います。


他社製品との比較


さて、同じ鮎用の長良型で比較してみたのがこちらの写真。
左がカツイチのV長良LTR 6.5号で線径0.37mm、右ががまかつG-Hardジョー6.5号でもう少し太軸の針になります。


左:V長良LTR 6.5号、右:G-Hardジョー6.5号


左:V長良LTR 6.5号の針先、右:G-Hardジョー6.5号の針先

V長良LTRの方が針先が外側に向いていて、掛かり重視なのがお分かりいただけると思います。


結び方


他の鮎針と同じく変型漁師結びです。通常の漁師結びの絡みを2回多くする、これだけです。
接着剤等は基本的に不要です。締め込みが甘いと稀に抜けることがありますが、現場でチャチャッと結んで充分に強度が出ます。これはW8等でも同様です。


まとめ


カツイチV長良LTRを使うメリットは①掛かりが良い;②川虫が刺しやすい;③川虫の持ちが良い;④手網入れすると自動的に外れてくれる;⑤ツヤ消し・耳なし・細軸でステルス性が極めて高い;⑥細かいギザで結びやすく、すっぽ抜けない;⑦ソコソコ外れにくい;⑧100本入りでコストパフォーマンスが高い;⑨不良品がほとんど入っていない;とてんこ盛りなのと対照的に、デメリットの方は、①石に掛かった時針先がなまることがあり、交換しなければならない;②結び方は何度も練習する必要がある;③さすがに尺クラスが掛かかるとやばい;と、少なくなっています。
これが渓流用の針じゃなくて鮎の友釣り用に設計された針なのだから驚き!です。


いや〜〜、渓流釣りに鮎針使うのって、最初はかなり躊躇したんですけど、
最近になってつくづく思うのは、
こんな優秀な針渓流釣りに使わないのはもったいない!!
なんて。


たぶん、名品「V長良LTR」亡き後もカツイチを使っていくとは思うけど、キツネ系だときっと遅アワセになっちゃって、釣果も落ちちゃうんだろうなあ…

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渓流釣りでスレ針を使う方法 | トップ | こんなご時世だし、英気でも… »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

兵法書・具足編」カテゴリの最新記事