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君死にたもうことなかれ

(ニジェール)南東部で栄養失調が急増

2005年05月02日 | 環境一般
ニジェール南東部のマラディで栄養失調が深刻化している。国境なき医師団(MSF)が運営する栄養治療センターには、重度栄養失調の子どもの数が増加しつづけている。MSFの医療チームは2004年だけでも約1万人の患者の治療をおこなったが、今年に入り状況はさらに悪化している。先ごろ訪問した村々では、子どもの5人に1人は栄養失調の危険のある状態であった。

土地を売りはじめた農民たち

昨年の作付けは、干ばつと昆虫の被害によって不作に終わった。もっとも被害の大きかったタウアとマラディでは、作付けの10%しか収穫がなかった。キビの備蓄は空になり、サトウモロコシは元々備蓄がない。そのため農民たちは自分が食べる分も市場で買わなければならず、食料の価格が跳ね上がっている。買うことのできない人たちはアンザと呼ばれる植物などを食べてしのいでいる。これは苦い実をつける野生の植物で、食料が不足しているときにしか食べない。放牧業においても状況は同じく深刻だ。砂漠のなかにわずかに残っている牧草地は、茶ばんだ麦の小島のようにしか見えない。それぞれの牧草地の間には広大な距離があり、家畜の多くはその間を移動するだけの体力がない。家畜の飼料は著しく不足しており、乳製品の生産は激しく落ち込んだ。放牧業に従事している人々は、自分の食べ物を買うために若いメスの家畜までも売りに出さなければならなくなっている。食料に比べて家畜の価格はとても低いにもかかわらず、今日明日の生活のために大切な資産に手をつけざるを得ないのだ。ついには土地を売りはじめた農民もいる。これは極度の困窮のサインである。

子ども5人中1人に栄養失調の危険

「私たちが訪問した村々では子どもの5人に1人が栄養失調の危険にさらされていました。」食糧管理を専門とするロジスティシャンのアルノーは、状況調査を終えてこのように語った。「5月になるまで雨は降りません。牧草が再び生え始めるのは6月ごろです。農作物が収穫できるのは早くても9月です。」


栄養失調の診断

5才未満の子どもの栄養状態を調べるには、「上腕周囲測定帯」と呼ばれるメジャー(写真)を用いる。子どもの上腕にこのメジャーを巻いて太さを測る。太さ110ミリ未満(赤)の場合は重度の栄養失調で入院治療が必要、110~124ミリ(オレンジ)は中等度の栄養失調、125~134ミリ(黄色)の場合は栄養失調の危険があることを示している。

早急な対策をとらなければ、子どもたちの体重は減りつづけ、栄養失調の度合いを測る「上腕周囲測定帯」(写真)が示す値は、黄色(危険)から赤(重度栄養失調)へと変化していくであろう。患者の数にも変化が見える。栄養失調で入院する子どもの数は2月半ばには週あたり170人だったのが、250人近くまで増えている。MSFの栄養治療センターでは外来診療を始めたことで入院患者の数は大きく減った。にもかかわらず、この地域最悪の食糧危機がはじまる3ヵ月前すでに、センターは飽和状態になっていた。

早急な対策が求められている

MSFの調査結果は、状況が非常に深刻であることを示している。国内の食糧状況をモニターする早期警報システムでも、憂慮すべき数値が出ている。時間はない。すぐに行動を取らなければならない。MSFは新たに2つの集中栄養治療センターを開設するため、新たな医療チームを派遣した。食糧不足によって数千人もの子どもの命が奪われるようなことのないよう、他の援助機関にも迅速に行動を起こすことが求められている。

国境なき医師団
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