『次の世でもその次の世でも、必ずおまえを妻に迎えてみせる。』
『私の妻は未来永劫おまえだけだ。』
彩玉は抱かれた後も允の腕の中で、眠らずに允の言葉を想い返していた。
心に不安を抱えた日の夜は、允に優しくされればされるほど、必ずあの男の夢を見てしまうからだった。
・・・どうしても忘れることができないあの男・・・チャン・ソンベクの夢を・・・
けれどもう・・・あの男の夢は見たくなかった。あの男のことを . . . 本文を読む
左捕盗庁の従事官邸で暮らし始めた允と彩玉の元に、婚儀の日から幾日かが過ぎたある夜、ナニが訪ねて来た。
「ご結婚、おめでとうございます。ご婚儀にも出席できず、お祝いを申し上げるのも遅くなってしまいました。お詫び申し上げます。」
そして彩玉の方を向き、改めて言った。
「奥様。おめでとうございます。」
彩玉は青ざめた顔で頭を下げ、允は苦しげな顔をして答えた。
「・・・申し訳ありません・・・。この様なこと . . . 本文を読む
「姉さん!本当に姉さんだ!遠くからじゃ別人にしか見えませんでしたよ。綺麗だ!さすが姉さんだ!姉さんが両班のお姫様だったなんて、俺はもうびっくりしちまって・・・」
「こら!チュクチ!従事官様の奥方様に何という口のききかたをしているのだ。姉さんなどと気安く呼んではならん!!」
部屋に入るなり彩玉の前に躍り出てまくし立てるマ・チュクチをチュワンが慌てて止めに入った。
「ペク武官様、チュクチ、どうか気にな . . . 本文を読む
都の左捕盗庁の従事官邸では、左捕盗庁従事官に復職した允と王命により両班への身分回復が認められた彩玉の婚儀が、王の名の下に左捕盗庁長官チョ・セウクの手により執り行われていた。当初セウクは長官邸で盛大な婚儀を執り行うつもりであったが、允がそれだけはと固く辞退し、二人の婚儀は従事官邸で簡素に行われていた。
しかし、王より下賜された婚礼衣装を纏った新郎新婦は共に山を流れる清流のように瑞々しく美しく煌いてい . . . 本文を読む
允はくすくすと笑い続ける彩玉のふっくらとして柔らかく生温かい唇を熱く塞いでいた。
そうして口付けながら允は何度も同じ問いを、彩玉が答えるまで繰り返している。やっと彩玉が望み通りに答えると、とても嬉しそうに笑い、安心した様子で彩玉を抱き始めた。
允は酔っており、隣室にはウォネもいる。彩玉はやんわりと押し留めようとしたが、酔っているせいもあり、允は尚更聞き入れない。
「酔っていてもできる・・・」
. . . 本文を読む
允はくすくすと笑い続ける彩玉の小さくて紅い形の良い唇を熱く塞いでいた。
彩玉がかつて茶母として関わった数々の殺人や傷害事件の中には、男女間の痴情のもつれによるものも数多くあった。彩玉は自身が、我を忘れ世間の人々からは考えられないような事件を引き起こしてしまう男女の世界に生涯身を置くことがないであろうことを、官婢である自身の身分とともに侘しく思いながらも、心のどこかで、世間を騒がせ人々からこれ以上 . . . 本文を読む
山道を足早に歩いていく一組の男女がいた。だが二人は急いでいるというわけでは全くなく、その健脚ぶりは明らかに二人が只者ではないことを思わせた。
允がふと振り返った。彩玉はまた少し俯いて、塞ぎこんでしまっている様子だった。
それがただ単に疲れを理由とするものでないことは十分承知していたが、日はすでに正午の位置から少し傾いている。途中軽く昼食を取ったとき以外、早朝からずっと歩き通しだった。
「チェオク . . . 本文を読む
允は一人都に戻るようにと言う彩玉の俯いた顔を、強い視線で真っすぐに見つめていた。
「おまえは私に一緒に山に帰ろうと、都には戻らずに山で暮らそうと、そう言ってくれた。嘘だったのか。あの言葉は嘘だったのか。・・・死にいく私への、最期の慰めの言葉だったのか。」
「ナウリ・・・都であなた様の夢を実現させてください。都にはあなた様がご結婚をお約束されたお方が、あなた様のお帰りを待っていらっしゃいます。」
「 . . . 本文を読む
*必ず!当カテゴリー内「はじめに」にて、内容についてのご了承事項をご確認の上、お読みください。
*物語中話言葉以外の部分では允(ユン)と彩玉(チェオク)は漢字表記しています。
*当第1話は「大長今(宮廷女官チャングムの誓い)」とコラボレーションしています。
允(ユン)は彩玉(チェオク)の兄がソンベクだったと知り、もはやソンベクに剣を向けることはできなかった。彩玉があれ程恋慕い会いたい会いたいと . . . 本文を読む
皆様、こんにちは。
今月の月記にてご案内申し上げましたように、現在書いております「大長今(宮廷女官チャングムの誓い)」二次小説と並行し、新たに「茶母(チェオクの剣)」二次小説も書き始めました。
悲劇が苦手な弱弱ちひろ・・・のはずなのですが、あまりの悲劇からは逆に目が離せず、ついつい無謀にも自ら!幸せな二人を書いてしまうのかもしれません。
と申しますわけで、内容は、ドラマ&小説「チェオクの剣」 . . . 本文を読む