梅雨だというのに全く雨は降らず、朝からさわやかなそよ風が尾白側渓谷を下っていく。昨日は同僚のガイドと白州道の駅で、ご奉仕品の中トロを食べながら飲んだくれて車中泊したので、若干頭が重いが谷を渡る風が生気を取り戻させてくれる。
今日は、ここ竹宇駒ヶ岳神社から黒戸尾根を登り甲斐駒ヶ岳に至るBS TBSの番組制作取材陣に同行する。本日の予定は七丈小屋までとなる。この番組の旅人役は海洋冒険家の白石康二郎氏。この方、ヨットでの単独無寄港世界一周を最年少で成し遂げたいわゆるスーパーマンだ。この後も2回単独世界一周を成し遂げている。筋肉隆々、日焼けがよく似合い、テレビ写りもすこぶる良さげで、気の利いたコメントを即座に繰り出し、しかもとっても話しやすい好漢だ。僕は彼の案内役で、予期せずテレビに出演する事になってしまった。
取材同行だから、いつものツアーとは勝手が違い飽くまでも撮影が中心となる。先ずは駒ヶ岳神社で、出発のご挨拶を撮影しお祓いをしてもらって出発する。撮影されて居るかと思うと心は落ち着かず、二日酔い気味の頭はぐるぐる巡り、いったい何をしゃべっているのか解らなくなってしまう。えらいことになってしまった。
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撮影スタッフは、プロデューサー、ディレクター、アシスタントディレクター、カメラマン2名、音声さん、空撮屋さん2名、歩荷さん、白石さん、そしてガイド二名の総勢12名となる。それぞれが機材をもっての登山はなかなか大変だ。ただ七丈小屋へ登るだけでも大変なのに、絵になりそうな所では、撮影しながら進んでいく。三脚を据えたり、手持ちのままで舐めるようなアングルで歩きながら撮ったり、プロ意識に妥協はない。
白石康二郎氏
今回の取材で一番驚いたのは空撮屋さんだ。空撮と言えば普通ヘリコプターを使ってのものを想像するが、今回はヘリはヘリでもそれはラジコンで、しかも、UFOに四つのプロペラをつけたような形をしていて下には小型ビデオカメラを装備している。それが、プエーーーンと舞い上がって、白石さんと僕を追いかける様に撮影するのだ。森の中を縫うように、そして、刃渡りの岩稜を上空から。こういうものは男心をくすぐるので、空撮ヘリをつい見てしまいたくなるのだが、それはNGだ。カメラ目線はダメですからと釘を刺されているし、そのへんが辛いところ。夕方、七丈小屋に到着してから、その画像を見せてもらったが、それは今まで見たこともない映像で僕はかなり興奮してしまった。早く放映を見たいものだ。
SKYSHOT製空撮ヘリかっこいい。STARWARSの世界
刃渡りを上空から撮影
甲斐駒ヶ岳遠景を撮る
五合目小屋跡の岩窟 人がのみ一本で掘ったもの
撮影は白石氏と僕の歩きのシーンだけではなく、花や木々のざわめき、しっとりとした苔や遠景も撮りながら進む。歩きのシーンはNGが出るともう一回戻って撮り直したりする。五合目小屋跡から上部は梯子や鎖が連続するので、危険な状況で細心の注意を払いながら撮影を進める。幸か不幸か天気が良くて、カメラマン的にも撮りたいものが沢山あるのだろう、この日七丈小屋へ到着したのは午後7時30分となった。すっかり陽は暮れていた。
二日目は午前2時半スタートで、八合目からのご来光を狙う。雲一つない快晴、素晴らしい日の出、最高の絵が撮れたんではないだろうか。
朝日の中の撮影
鳳凰三山と富士山も
10時ごろだったか、コースタイムで2時間半ほどの所を、7時間以上をかけて撮影隊は頂上へ到着。お疲れ様の握手で僕の登場シーンの撮影は終わった。
山頂では、湯を沸かし、カップラーメンをすする。ガイドはインスタント焼きそばを振る舞った。一応撮影はここまでなのでスタッフもほっとしているようだ。撮れるものは全部撮った、やるだけのことはやった、そんな感じだ。タイミングよくガスが沸き始め、カメラマン達のプロ根性にも少し雲がわいたようだ。北沢峠への下山に集中する。
柳の芽吹きと小仙丈ヶ岳
コミヤマカタバミ ハート型の葉っぱがかわいい
コウライテンナンショウ
北沢峠からは、南アルプススーパー林道を歌宿まで歩く。この時期はまだ北沢峠まではバスが運行していないので仕方がないが、これが結構きつかった。
白石さんは体力的にはバリバリだから問題ないが、今回のスタッフはみんな年齢は若いものの登山をそれほど経験しているわけではなく、それぞれ足にマメが出来たり、膝痛だったりさぞ大変だっただろうと思う。今頃きっと筋肉痛で苦しんでいるはずだ。どうだい、みんな?
白石さん、スタッフの皆さん、ほんとにありがとうございました。放映を楽しみにしております。
放映予定 7月6日(土)午後9時~ BS TBS「日本の名峰絶景シリーズ、甲斐駒ヶ岳」タイトルは違うかも?
恥ずかしながら、皆さん見てね。