春堤食堂

ささやかですがハッピーのおすそわけ♪
もっともっと太くなろう~!
見た目じゃなくて こころよ心☆

戦う理由<5>

2007-07-14 08:25:17 | ボクシング
 
 
日刊  2007年(平成19年)6月5日 火曜日   発行


2007年の風景 ・・・ 新開ボクシングジム 戦う理由<5>


南武線じゃないとダメだ


 ボクシングの(日本)タイトルマッチについて、基本的な知識を紹介しておきたい。

 まず、(指名)挑戦者がチャンピオンになると「義務」が生じる。 選択試合といわれるもので、チャンピオンになって6ヶ月以内に、相手選手(ランキング選手に限る)を選択(選択選手は自由)し、試合を行わなければならない。 今回、三枝健二(24)がチャンピオン河野公平(26)と戦うのは、このケースである。

 これをクリアすると、指名試合が待っている。 チャンピオンは初防衛してから9ヶ月以内に、JBCが指名する選手(最上位者を指名)と試合しなければならない。

 さて、タイトル戦を行うまでの手順はこんな具合だ。 対戦が決まったらJBC立会いのもと、双方のジム間で契約を結ぶ。 内容は試合の日時、場所、ファイトマネーなど。 今回はチャンピオンを持つワタナベジムと、帝拳プロモーションがプロモーター役を担い、興行権すべてを握ることになる。

 ちなみに、ファイトマネーは4回戦が6万円、6回戦が10万円、8回戦は15万円以上となることが多い。 タイトルマッチはチャンピオンが100万円程度。 挑戦者はランキングにもよるが35~50万円が相場となる。 ただ、プロスポーツである以上、人気や知名度によって大きな開きがあるのは事実である。 勝っても負けてもファイトマネーは同額だが、大ざっぱにいえば、うち33%が経費としてジム側(マネージャー)に引かれ、67%が選手の手取りとなる。

 もちろん挑戦者のファイトマネーはプロモーターから支払われるが、その金の一部はチケットとして用意されることがある。 つまり、ジムはチケットを売らなければ、タイトル戦での収入もおぼつかなくなる。 リングに上がる選手自らチケットを売って歩くのはこのためである。

 もっともプロモーター側も試合のポスター、チケット、プログラム印刷など費用がかさむ。 収益は主にチケット収入、ほかにテレビ放送料などがある。

 「渡辺さん(均=ワタナベジム会長)はやり手だからなぁ。 今回はテレビ中継(日本テレビ、G+)も引っ張ってきた。 これが収入を助けるし、力があるよな。 トランクスにスポンサーを入れたらどうだ、とも言われたけど、こっちはそんなスポンサーもいないし。 とにかくチケットを売って、それで足りなけりゃ、金を借りることになる」と新開ボクシングジム会長、新開徳幸(60)はぼやく。 100万円単位の用意が必要なのだ。

 それでも「三枝には相場35万円のファイトマネーを40万円にしてやりたいよ。 ジム始まって以来、初のタイトル戦だ。 何とかしてチャンピオンを出したい」。

 三枝には3月13日の夕刻、タイトル戦の正式決定を伝えてある。 「トレーナーを2人、つけようと思ってるんだ。 前田(真吾、29=武相高出身、国民体育大会ベスト8)だ。 『何が何でも勝つ!』って、ヤツには言っといた。 あいつはセンスのいいヤツなんだけど、根性がなくてなぁ。 6回戦ボーイまでいったのに」と根性論をひとくさり。 前田は「ふーん」と聞こえないふりをしている。 「もう1人は富士(大輔)、弁当屋をやっているんだ。 いつもジムへタダで昼の弁当を届けてくれるヤツ。 こいつらを三枝につけようと思ってる」。 もっとも、後に富士に変わって佐々木文彦(33)がトレーナーとして登録される。

 そしてこう付け加えた。 「だいたい(山の手を走る)東横線、田園都市線沿いに強いヤツが出るはずがない。 (ジムに近いJR武蔵新城駅のある)南武線、この沿線じゃないとダメなんだ」という理屈はよくのみ込めないが、要はかつて砂利運搬線として地元に溶け込んだ南武線の、その泥臭さこそが新開ジムの真骨頂で、勝利を呼び込む。 そう言いたかったのだろう。 新興住宅地としてスポットが当たる武蔵小杉駅、武蔵溝ノ口のはざま、取り残されたような風場で、武蔵新城駅はある。

 この時点で、試合まであと3ヶ月。 やっておかなければならないことは、いくつでもある。


          (敬称略)
          【石井秀一】


最新の画像もっと見る

コメントを投稿