風のたより #72 千葉甫 2019-08-21 13:57:14 | 短歌 口の中まったく乾いて眼が覚めてまだ物音の無い夜明け前 変わらずに来る売り声は七年間同じ録音流しているか 三、四年ほど前に観たこの映画 記憶はところどころに残る
風のたより #71 千葉甫 2019-08-19 13:59:52 | 短歌 ゆっくりと記憶の底から浮いてきて象(かたち)を成してゆくもの見守る 影を見て思い途切れて眼をやった窓の外行く揚羽の光る カーテンを透して見える陽のあたる道行く人の馴染みの歩幅
風のたより #70 千葉甫 2019-08-17 13:53:48 | 短歌 縁光る雲の浮かんでいる空を見つめて思い整えてゆく 塀越えて土へ間近く垂れている蔓草揺れる意思持つように 階段の下の闇から来た音に振り返られない上りきるまで
風のたより #69 千葉甫 2019-08-15 13:46:58 | 短歌 タイプする言葉のさっぱり出て来ずにコンピューターはスリープをする おもむろに首をもたげて眼の合った寝ていた猫の小走りに去る カーテンが揺れているのは外からの風ではなくて扇風機の風
風のたより #68 千葉甫 2019-08-13 13:59:44 | 短歌 何気なく眼をやる壁の写真から常に私へ来ている視線 遠くから見つけてくれて手を振ってくれた幸せあったあの夏 一頻り轟いた後音絶えて今年の花火大会終る