ドラマよりもドラマチックなフィギュアスケート世界選手権で、今年、表彰台に上った選手達は受賞したメダルに値する演技で観客を魅了しました。
キムヨナ選手はもはや孤高の女王として、自身の最高記録を更新して、歴史的記録を塗り変え、より高い境地を目指して邁進しています。
他選手の追随を許さないその強さの秘密はどこにあるのでしょうか。きっと、キムヨナ選手は表現力豊かな感性を磨いているだけではなく、「フィギュアスケートの力学を探究する知性」も磨いているのではないでしょうか。あの目を見張る冒頭のトリプル・トリプルのジャンプを目の当たりにするとそう思わずにはいられません。あんなにもすらりとした体で、びっくりするほどダイナミックなジャンプを跳び、しかも二度目のジャンプがさらに高さを増しているのですから、一体どういう力学の法則が働いているのか、その神業的技量に驚嘆するばかりです。
昔、伊藤みどりさんが、ものすごく長い飛距離でトリプルアクセルを跳んでいましたが、あの時の感嘆の気持ちが蘇ってくるほど、それほど、キムヨナ選手のジャンプは大きく高く、しかも華麗で、着氷も美しい。「自分が確実に出来る技の完成度を最大限に高めること、そしてその為の研究と練習を怠らないこと」、そういう姿勢が今回の歴代最高記録を得ての圧勝をもたらしたのではないでしょうか。
キムヨナさんは、まだ１０代という若さなのに、いつもなんて落ち着いて冷静なんだろうと思っていただけに、昨日、表彰台の真ん中に立って、感無量になり、堪え切れずに嬉し涙を流していたキムさんは、いじらしいほど可愛らしかったです。
そんな可憐で初々しいキムヨナ選手が、氷上で魅せた「死の舞踏」は表情も一転して、息を呑む圧巻の舞踏でした。曲の解釈、そしてそれを表現することの出来る感性、知性、技量。ディテールのステップも含めすべてが完璧な演技でした。
そして、ジョアニー・ロシェット選手の流麗で、自信に満ちた力強い演技も素晴らしかったですし、銅メダルを獲得した安藤美姫選手のパフォーマンスも素敵でした。
昨年世界選手権を途中棄権した安藤選手の復活に会場から温かい拍手喝采が湧き起こりました。
妖しい魅力を漂わせたミキティと明るく勝気な真央ちゃんと真面目で柔和な中野さんと独自のワールドを展開する村主さん。脚本家でもこれだけ個性豊かな人間群像はなかなか描けないと思うほど、今の日本女子フィギュア界は素晴らしいです。
ということで、昨夜はフィギュアスケートの醍醐味を存分に満喫しました。
キムヨナ選手、優勝おめでとう！
そして安藤美姫選手、世界選手権での二度目のメダル獲得おめでとう。
浅田真央さんは惜しくも表彰台を逃しましたが、エキシビションでは気持ちをすっきりと切り替え、華麗なタンゴを明るい笑顔で軽やかに踊って、とても可愛いかったです。
トップスケーターの真央さんの洒落たステップからタラソワ・コーチの見果てぬ夢が美しく滴り落ちて、二人の絆の強さが光輝くパフォーマンスでした。来シーズンはさらに進化した浅田真央さんの姿を楽しみにしています。
