「資格検定情報センター」準備事務局より

各種資格・検定の情報を分析し、信頼性の高さや疑問点の有無を報告します。

「金融士」2010年度にも誕生

2008-05-01 11:27:27 | Weblog
4月30日、新資格制度の概要が金融庁から発表されました。
5月1日付けの新聞各紙でも小さく概要が報じられています。

ただ、「弁護士や公認会計士のような法定の業務独占資格とはしない考えで、国家資格とするか民間資格とするかの位置づけや、試験の難易度、資格者数については今後議論する方針」、と報じられているように、この資格の位置づけはあいまいです。

現実的には、何かの業務を行うために取得が必要な資格、とはならないでしょう。
ある程度の能力を評価するだけであれば、あまり広がりを見せていない「法学検定」の二の舞になるかもしれません。
社会的にあまり意義が見出されなくても、省庁の管理下にある団体が増えることは、各省庁にとっては利益となるのでしょうか。

・「金融士」の基本的なコンセプト
http://www.fsa.go.jp/news/19/sonota/20080430.pdf

すでにネットの掲示板やブログなどでは、あらたな利権の創出ではないかとか、天下り先の確保ではないかという声があがっています。
そういった声をはねかえすだけの内容がこの資格には求められるでしょう。

金融士資格創出の背景には下記のような考えがあるようです。
http://www.fsa.go.jp/news/19/sonota/20080430.pdf
P8「法科大学院修了者で実際に弁護士になれなかった者等であっても、専門職大学院で習得した知識を金融界で活かすことは有益と考えられるため、こうした者の円滑な資格取得が可能となるような工夫が必要」

法学検定が生まれたとき、趣意書には下記のように書いてあります。
「大学で法律学を学ぶ学生にとって、一つの目標として司法試験や公務員採用試験等があります。しかし、わが国の現状ではこれらの国家試験が学生にとって必ずしも共通の目標とはなっておらず、法学部の卒業生の多くは、民間企業等法曹以外の道に進んでおります。そして、それらの卒業生も、法の役割と機能を十分に理解し、社会のリーダー・担い手として活躍することが期待され、大学における法学教育の重要性は従来にも増して大きくなってきております。
 そこで、全国の法学研究者のご協力を得ながら、財団法人日弁連法務研究財団と社団法人商事法務研究会は、共同して、法学検定試験委員会を組織し、その下で、「法学検定試験」を実施することといたしました」

法学検定も、金融士も、法律を学んだ人の実力を認定してあげようという考えはわるくないと思うのですが、人を育てるためには、資格検定を設けるよりももっと大切なことがあるのではないでしょうか。
だいいち、こんなに各種の法律・金融関係の資格が細分化されているのは世界中で日本くらいのものです。
細分化され、法制化され、規制の枠にはめられ、人々の創造力を萎縮させてしまえば、世界に通じる知的なダイナミックさを持った人々の育成から程遠くなってしまいます。

金融庁では新資格について意見も募集しているようです。

●「金融専門人材について (基本的なコンセプト)」に対する意見募集の実施について
http://www.fsa.go.jp/news/19/sonota/20080430-1.html


新聞記事ではフジサンケイビジネスアイが比較的詳しく報じていました。
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200805010007a.nwc
■「金融士」2010年度にも誕生 専門資格制度の概要公表
FujiSankei Business i. 2008/5/1  

 金融庁は30日、昨年からの検討結果を踏まえ、金融業界に広く通用する専門資格「金融士(仮称)」の創設について、基本的考え方を発表した。一般からの意見を求めた上で今夏から具体的な制度設計に着手、2010年度にも第1号誕生を図る。

 法令順守(コンプライアンス)と金融ビジネスの水準向上に役立てるため、金融関係法令や財務会計、金融工学など幅広い金融専門知識▽金融業に高い付加価値を生み出す能力▽法令と収益性のバランスの判断力-などの資質を求める。

 具体的には、大学などでの単位取得を条件に、資格試験合格と3年程度の実務経験により、資格取得を認定する。また、取得後も継続教育を行うことで、変化の激しい金融ビジネスでの能力維持と、取得者同士の交流を図る。

 金融庁は、資格制度とすることにより、人材育成の具体的目標ができるうえ、一定の能力水準が証明され、人材流動化にもつながると期待している。金融機関などへの就職を希望する大学生や、金融機関の役職員、金融を専門とする弁護士などの取得を想定。また、海外からの人材活用にも役立てたい考え。

 ただ、弁護士や公認会計士のような法定の業務独占資格とはしない考えで、国家資格とするか民間資格とするかの位置づけや、試験の難易度、資格者数については今後議論する方針。

 金融専門資格は、渡辺喜美金融担当相が国際金融センターにふさわしい人材の厚みを増すべきだとして提唱。昨年10月から「金融専門人材に関する研究会」(座長・吉野直行慶応大教授)で、求められる資質や資格の位置づけなどについて検討してきた。