「資格検定情報センター」準備事務局より

各種資格・検定の情報を分析し、信頼性の高さや疑問点の有無を報告します。

カイロプラクティックについて

2007-06-20 21:07:27 | Weblog
「カイロプラクティック」という言葉を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。
整体に似たものをイメージしている人が多いかもしれませんが、整体と違い、関節を鳴らしたりはしません。マッサージも行いません。
基本的に背骨や股関節などのゆがみを手で直す技術です。

先進国を中心に、カイロプラクティックは少なくとも世界40か国以上で法律で規定されています。
ところが、日本ではカイロプラクティックも、整体も、法律での規定がありません。

治療ともいえる行為を行っているにも関わらず、何の規制もなく、無資格で営業を行っているところが多いのです。
カイロプラクティックに至っては、日本においては90%以上の施術者が、法制化された各国で学ぶ教育水準をクリアしていません。

本来、骨格や神経、生理学などについての知識を得る必要があるのですが、現在の日本では何の資格もない人が、カイロプラクティックや整体の看板を上げて患者の腰の骨や首の骨を動かしてもとがめられないのです。

法律的には、1960年に最高裁で療術行為において「有害のおそれがなければ、禁止処罰の対象とならない」との判決がありました。
この判決においては何をもって有害のおそれがないと判断するのか述べられていませんが、この判例を根拠に、無資格の整体院やカイロプラクティック院が増加していったのです。

もっとも、整体院を運営されている人は、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師などの国家資格を取得している方が多いようです。
(余談ですが、日本には漢方医という資格もないため、西洋医学を学んで医師の資格を取得した人が、漢方も学んで漢方医を名乗っています)

ただ、カイロプラクティックについては、何の国家資格も持たない人が診療行為を行っているのが実情です。

韓国では医師会やリハビリ協会などがカイロプラクティックの法制化に反対しており、カイロプラクティックを行うことが医療法違反となっています。

日本でも医師(特に整形外科医)はカイロプラクティックの法制化に消極的です。
腰痛治療などを医者が独占すれば医者の利益になりますから。
もう10年以上前からカイロプラクティックの法制化の動きはありましたが、カイロプラクティック業界の内部対立や医師たちの反対により、まだ法制化のめどが立っていません。

ところが、WHO(世界保健機関)は無資格で行われているカイロプラクティックに注目し、WFC(世界カイロプラクティック連合)の協力によって、カイロプラクティックの教育基準と業務内容を明記した「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン」を2005年に発行しました。

2006年に日本語版が発行されましたが、日本語版発行によせて、WFCの会長は次のように記しています。

 (略)カイロプラクティックの業務が国際的にいっそう確立され、
 業務に関する安全性や有用性のエビデンスがより多く明らかに
 なると、特に法律のない国々においてカイロプラクティック教育
 を商業的に悪用したり、不適格者によるカイロプラクティック営
 業などが問題になってきました。WHO 伝統医学の張博士(Dr.Zhang)
 が冒頭文で述べるように、これは、今回 WHO が各国の健康行政
 機関向けにガイドラインを作成した理由のひとつであります。(略)


続いて、「はじめに」には次のように書かれています。

 (略)カイロプラクティック業務に関する規定は、国によりかなり
 異なっている。ある国々、例えば、アメリカ合衆国、カナダ、ヨー
 ロッパの何カ国かでは、カイロプラクティックは既に法的に認識さ
 れ、公式な大学の学位が確立されている。これらの国々では、この
 職業は規制され、所定の教育基準が全般的に定められており、それ
 ぞれ承認機関の必要条件を満たしている。
 しかし、多くの国々では、いまだにカイロプラクティック教育が
 未発達であったり、カイロプラクティックの正規な業務を規定する
 法律が確立されていない。さらに、ある国々では、他の資格をもつ
 健康専門家や、素人の術者が、認可されたカイロプラクティック
 教育を受けていないにもかかわらず、脊椎手技療法のテクニックを
 使用し、カイロプラクティックのサービスを提供していると主張
 することもある。(略)


WHOが注目していることもあり、厚生労働省も対応を考え始めるかもしれません。
また、無資格の整体やカイロプラクティックで症状が悪化した患者たちが、賠償を求めて治療院や現状を放置した厚生労働省を訴え、対応が検討される可能性もあります。

ただ、すぐ法制化されるというわけではありませんから、安全のために、個人個人が治療院に行く前に、各治療院の実力を見極める必要があります。

日本では整体やカイロプラクティックの学校がありますが、専門学校や大学などの学校法人は1つもありません。
「専門学院」や「学院」を名乗っていても、専門学校ではなく、塾と同じです。
社団法人東京都専修学校各種学校協会の加盟校はありません。

何々協会加盟認定、などと名乗っていても、団体は財団法人や社団法人ではなく、多くは任意団体です。
しかも、1~2年の短期間で発行する資格は、その各種学校や任意団体が自ら認定する民間資格なので、公的に認められたものではありません。
「カイロプラクター」「カイロドクター」「カイロプラクティック師」などの名称は、鍼灸師や指圧師と違い、公的に認められていません。

また、現在しっかりとしたプログラムでカイロプラクティックについて学ぶ外国の大学の日本校がありますが、現在文部科学省から大学とは認められていません。(外国の大学の本校がある国からは大学と認められています)

外国の大学の日本校はカリキュラムが充実しているようですが、実際どれほど学生が習得しているのか確認できていません。
整体やカイロプラクティックに行く時は、事前にある程度情報を集めてください。
インターネットで院長の経歴を公表している治療院も多くあります。


<参考> WHO発行「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するガイドライン」の主な内容。

1.正式なカイロプラクティック教育は全日4年制4200時間以上の教育(うち臨床実習1000時間)。

2.ただし、医師、歯科医師、理学療法士等の医療有資格者は一部単位が認められ全日2~3年制2200時間以上の教育(うち臨床実習1000時間以上)でも正式に認められる。

3.正式な教育ではないが期限付きの教育(CSC等)においては、医師や他の医療有資格者を対象とした場合、2~3年制1800時間以上の全日もしくはパート教育(うち1000時間以上の臨床実習)が最低必要である。

4.正式な教育ではないが期限付きの教育(CSC等)においては、3.以外の自称「カイロプラクター」を対象とした場合、2500時間以上の全日もしくはパート教育(うち1000時間以上の臨床実習)が最低必要である。


TOEIC、英検、国連英検について

2007-06-18 19:04:46 | Weblog
英語の能力をはかる試験には、TOEIC、英検、国連英検などがあります。
ここではあまり知られていないそれらの試験の背景について述べます。

まず、TOEICは経産省、英検は文科省、国連英検は外務省に認可を受けている財団法人によって運営されています。
英語の検定試験は、各省庁の思惑と無関係ではないのです。

経産省、文科省、外務省がそれぞれ自らの利益のために各英語試験に関与していると言っても過言ではありません。


■TOEIC
国際的な資格だと思われていますが、発案者は日本人です。
通産省に勤務していたこともある日本人と雑誌社勤務の日本人が発案し、TOEFLなどを実施しているアメリカのテスト開発機関ETSに話を持ち込んだのがTOEICの始まりです。

経産省管轄の(財)日中経済協会に勤務していた渡辺弥栄司氏(現在は顧問)と雑誌「タイム」のアジア総支配人だった故北岡靖男氏が1974年法人組織をつくり、TOEFLなどを実施していたアメリカのETSと1977年にTOEIC開発について協議を開始しました。1979年に第1回のTOEICを実施しています。

当初はなかなか受験者が集まらず、利益があがりませんでした。
TOEICを運営しているIIBCの会長渡辺弥栄司(元通商局長)の著書には、次のような記述があります。

>ところが、TOEICを普及していくには、文部省(現文部科学省)の障壁が
>あまりにも大きかった。当時、教育産業への参入には厳しい規制があり、
>いとも簡単に潰されかねなかった。
>私は一計を案じ、古巣の通産省を巻き込むことにした。貿易振興・輸出
>増進のために、日本企業に対し英語教育による人材の育成を図るという
>名目で通産省に許可を求めた。つまり、通産省を後ろ盾にすることを考
>えたのである。
>
>「125歳まで、私は生きる!」ソニー・マガジンズ発行 2003年 p114

こうした働きかけがあり当時の通産省から財団法人として認可され、1986年に国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)は、創立されました。
現在も渡辺弥栄司氏がIIBCの会長を務めています。

日本国内での受験者数は1981年に10万人、1988年に20万人、1992年に40万人、1996年に60万人、2000年に100万人、2006年には150万人を達成しています。

全世界では約450万人が受験していますが、日本人と韓国人の受験者が大多数を占めます。
2004年のデータでは、受験者約340万人のうち、日本人142万人、韓国人183万人で合計325万人、総受験者の95.6%を日本人と韓国人が占めました。
受験者数はやや頭打ちですが、今後数年は150万人以上の受験者を確保すると予想されます。


■英検(実用英語検定)
1963年、英語関係の参考書で知られる旺文社の故赤尾好夫社長が旺文社の敷地内に財団法人実用英語検定協会を設立し、英語検定試験をはじめました。
赤尾好夫氏は1957年に設立されたテレビ朝日(当初は日本教育テレビ)の初代社長でもあります。
当時英語学習といえば「赤尾の豆単」(単語集)、旺文社といえば私設文部省などと言われ、教育界に大きな影響力をもっていました。

文部省との良好な関係もあり、英検は順調に受験者数をふやし、毎年300万人以上が受験するという時代が長く続きました。

ところが1990年からTOEICの受験者数が増え、1990年代初頭には大学生や社会人に限るとTOEICが最も受験者数の多い英語検定試験となってしまいました。

さらに、2000年に入ってからは文部科学省の認定がはずれるという話が広まり、受験者数が一気に減っていきました。
しかし、現在受験者数は下げ止まり、この数年1~5級の全級をあわせて250万人程度をキープしています。
2006年には「文科省認定」が廃止となりましたが、これは文部科学省が民間の資格検定を公にバックアップしません、というだけであって英検自体は何も変わっていません。
「文科省認定」がはずれた現在、英検は「文科省後援」を名乗っています。

なお、レベルとしては、一般的に英検1級はTOEIC900点以上レベル。準1級は730点レベル、2級は500~600点などと言われていますが、人によって差があります。
2級をとっていてもTOEICでは500点以下の人もいますし、英検3級でも500点以上とる人もいます。


■国連英検
1981年から、外務省の外郭団体である「日本国際連合協会」が実施しています。
日本国際連合協会は、戦後国連への加盟を目指して作られた団体ですが、国連加盟後は国連に対する理解を深める団体として活動しています。
事実上、外務省職員の天下り先として温存されています。

国連の名前を名乗っているので国連が関係している英語検定試験だと勘違いしている人も多いようですが、日本の、国連に対する理解を深める活動をしている団体による検定試験であって、国連が関与している検定ではありません。
国連の名前を権威に利用していますが、国連はバックアップしていません。

なぜこのような名称で団体や検定試験を運営することを国連が黙認しているのかいうことには疑問があります。
仮に、どこかの財団法人が「外務省英語検定」あるいは「外交官英語検定」などという名称の検定試験を作れば、外務省はクレームをつけないのでしょうか?
(もっとも、外務省のよいスポンサーであれば外務省もクレームをつけないかもしれませんが)

また、国連英検は当初から講談社ともつながりを持ち問題集も講談社から出していますが、受験者数はTOEICや英検の1%以下と少なく、経営状態が危ぶまれています。
2004年からは外務省からの補助金も打ち切られてしまいました。
現在、公式ホームページでも受験者数を発表していません。



学位商法と資格商法

2007-06-13 19:45:34 | Weblog
一般的に大学卒業資格を得るには、文部科学省(海外なら教育省など)認定の学校で勉学に励み、単位を取得して卒業する必要があります。
しかし、ちょっとした論文を審査したり、仕事上での成果を単位に認定したり等の方法で、安易に大学卒業資格を認定する組織もあります。
そういった価値のない学位を認定する組織は、アメリカではディプロマミルあるいはディグリーミルと言われています。
学位とひきかえにお金を支払う場合が多く、一種のビジネス(学位商法)となっています。

肩書きを求める人が手軽に大学卒業資格や博士号を名乗るために、手をのばすことも多いようです。
ニューヨーク国際学士院から体育学博士号を得たデューク更家氏、アメリカンM&N大学から哲学・理学博士号を得た三遊亭楽太郎氏、ニューポート大学で教育博士号を得た七田眞氏、パシフィックウェスタン大学で博士号を得た水野晴郎氏や吉村作治氏や福永法源氏など、話題になった人も多くいます。
ドクター中松が日本や米国の正規の大学で博士号を取得したという記録もありません。
(なお、日本人もディプロマミルに深く関与しており、イオンド大学、ニューポート大学、国際学士院大学などは、日本人が設立に関わっていたり、運営に深く関わっています。日本人が設立したバベル翻訳大学院やカリフォルニア人間科学大学院大学はグレーゾーンの大学であるとも言えます)

※ディプロマミルに関しては静岡県立大学の小島教授のサイトに詳しい記述があります。
http://degreemill.exblog.jp/m2006-09-01/


日本では、大学設立の基準が厳格なこともあり、ディプロマミルと言われる組織の本部は設置されていません。海外の大学の日本校として設置されている学校はいくつもありますが、もちろん日本の学位は取得できません。

その代わり、各種の資格・検定が玉石混交状態の野放し状態となっています。
弁護士や公認会計士などの国家資格は信頼性が高く、省庁が管轄している財団法人が実施している英検や漢検などは公的資格と呼ばれるものが多く信頼できるものが多いのですが、任意団体が行っている民間資格は名称だけもっともらしくても全く価値のないものも多いのが現状です。
例えば、「労務管理士」の資格を持っていても、ニューポート大学教授とか国立ミンダナオ大学名誉教授といった称号と同じく、全く信頼性がありません。

各種の資格・検定について調査・分析するにあたり、問題のある資格・検定については注意を喚起していきたいと思います。

まずは各種英語関係の資格の比較、カイロプラクティックや整体の資格の比較、などをリリースしていきたいと思っています。
何か各種資格・検定についての情報や意見をお持ちの方は、「資格検定情報センター」準備事務局までご連絡ください。