先日、銀座に寄ったついでに、ある呉服屋さんをのぞいた。
1-2度訪れたことがあり、帯揚げを1枚買ったことしかないが、新作とリサイクルものの両方を扱っている店で、比較的オープンな雰囲気の店であった。
1年ほど前に店舗移転の案内をもらっていたので、はじめて行ってみた。
新店舗は大通りを一本入ったところにあるビルの5F。
小さなエレベーターで上がる。
酷暑ということもあり、お客は一人もいなかった。
店内は明るく、都会的な雰囲気に洗練されていた。
のんびりひとまわりしていると、すかさず女店主が出てきて、ディスプレイしている着物や帯を指し示しながら、次々と作家名を挙げていく。
さすがに琉球紅型の有名作家や芭蕉布の人間国宝の方々の名前はわかるけれど、あとは「はあ、そーですか・・」って感じ。
「うちはリサイクルも扱ってますけど、やはり、リサイクル(の着物)にリサイクル(の帯)はねえ(笑)」
ちょうど、小千谷縮を使った赤いレトロ可愛い半幅帯を見ていたところだったので、ドキッとした。
『だめですか?』
「重くなります。色遣いが昔のものは重いんですよねー。素人の方でも、並べてみればわかると思います。今はもっと明るくて軽い感じのものが主流です」
たしかに、それはわかる。
同じ赤でも、昭和の赤と平成の赤は明らかに違うし、色彩のトーンはかなり明るい傾向にある。
「強い気迫」を感じる布も少なくなっているような気がする。
おそらく着物業界は、洋服の世界にも違和感無く、馴染む着物姿を目指しているのだと思う。
こと、東日本においては、反対色をあわせたり、柄に柄を重ねるのは野暮ったい、タブーだとする空気さえ感じる。
スーツ着物なんて言葉もあるくらい、男物のような地味な着物を好む一派も。
ここ一番のドレスではなくて、ちょっとしたお出かけ用のおしゃれなワンピースのような着物と帯のほうが、もっと気軽に着物を楽しんでもらえるのではないかという業界の思惑の表れなのかもしれない。
御店主は、安いものをあれこれ持つよりも、高くても良いものを厳選して持つというのがお薦めとおっしゃる。
確かにそれもひとつの考えだとは思う。
都会に暮らす有閑マダムならね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます