転 覧 記

ほぼ展覧会レポ。たまに読書記録。

「エミール・ガレの生きた時代」展 @目黒区美術館

2010年04月18日 00時05分32秒 | 展覧会


ガレ展内覧会へのブロガー招待イベントに参加してきました。
目黒区美術館では初の試みだそうです。
今後も継続して行われるかは我々の記事の反響次第ということで責任重大w

というわけで、いつもより気合を入れてお届けします。

 # 画像は全てクリックで拡大します


◆イントロ

これまでもガレの展覧会はあちこちで頻繁に行われてきましたが、今回の展覧会の特徴は、
ガレの「アール・ヌーボー以前」にも焦点を当ているところ、だそうです。

ガレが何から影響を受け、どのようにそのスタイルを成長させてきたか、それを辿ることが出来るよう
彼の若いころの作品とともに、同時代のガラス作品、家具などの調度品、彫像、タペストリーなどを
あわせて展示しています。


このため、ただ作品を横並びに並べるだけでなく
こちらの写真のように、家具・調度品を組み合わせて
当時の部屋の様子を再現して見せるようなコーナーも
ありました。



会場では是非、作品を通じて「ガレの生きた時代」を感じてみてください。


◆ロココとガレ

ガレの作風を語る上で、外せないものが2つあります。
ひとつは西洋の伝統、もうひとつはジャポニスム。

まずは「西洋の伝統」から。


 会場でまず目に飛び込んでくるのが
 ロココ調の陶器・ガラス器の数々。
 これは置時計の部分ですが、
 まるでフラゴナールの絵から飛び出してきたようなデザイン。




こちらは19世紀の食器棚の部分です。
ザ・ロココ!な装飾画ですが、枠のデザインにも注目。

このような有機的な曲線美の感覚が、
アール・ヌーボーにも受け継がれていったのです。




 そうそう、家具といえば、足元も見てみましょう。
 ケモノやネコみたいな足を持つ家具が幾つかあるはずです。

 これはガレが若いころに流行った、ロココ調の家具の特徴で
 「カブリオール・レッグ」というそうです。
 カブリオールとはダンスなどで
 ジャンプのとき足を開く様子を表す言葉です。

 ・・・学芸員のかたは「ガニマタ」と表現されてましたがw




目を転じて、ガレのデザインした家具も見てみましょう。
足回りに装飾はなくシンプルになっているものの、
ガニマタで踏ん張ってるようなカタチは同じです。

これもロココからの影響のひとつだそうです。
調べてみたら、18世紀にチッペンデールという人が
始めた様式なのだとか。




◆ジャポニスムとガレ


 続いて、ジャポニスムの影響について。
 ガレの家具にあしらわれたデザインを見てみましょう。
 これなど、まるで日本の花鳥画のようです。




ジャポニスム(日本趣味)ブームが吹き荒れた
19世紀末のヨーロッパ。
でも当初は表面的にそのデザインを真似るだけでした。

ガレもそれは同じで、たとえばこのカエルは
北斎漫画の絵柄を書き写したものです。

(「北斎漫画」は葛飾北斎による絵のお手本帖です)




 しかし彼は後に、
 足元の草むらにつつましくも強く生きる小さな生き物を敬い慈しむ、
 そんな日本の自然観そのものを理解し
 独自の世界を作り上げていくことになるのです。

 たとえばこの作品。

 巣を張り息を潜めて獲物を待ち構えるクモ。
 そうとは知らず巣の上で葉を食む虫たち。
 しかしその両者の命に区別は無く、
 葉むらの薄闇のなか、平等に色とりどりの光を放っています。



ちなみにこの作品、正面から見るだけだと気づかないのですが
そこかしこに虫がいるので、左から右から眺めて探してみてください。
個人的には、今回、一番楽しい作品でした。


◆家具x陶器xガラス


ガラスで有名なガレですが、
彼の工房ではガラス器以外の調度品も製作していたそうです。
先ほどは家具をご紹介しましたが、このような陶器も作っていました。



このため、彼は家具や陶器の技法をガラスに転用することにより、独自の表現を切り開くことに成功しました。
今も昔も、ブレイクスルーは既存技術にあり、です。

たとえば、「ジャポニスムとガレ」のところでご覧いただいた花鳥画風の装飾。
アレは、いろいろな木肌の木材のカケラを地の板にはめ込んで作られています。
この技法を「象眼(ぞうがん)」と呼ぶのですが・・・



 その「象眼」をガラスに転用したのがこちら。
 板状のガラスのカケラを、まだ軟らかいうちに
 地のガラスに貼り付けて模様をつくってます。

 「マルケトリー」と呼ばれる技法で、
 ガレはこれで特許をとりました。





一方こちらは、従来は陶器に用いられていた
「エナメル装飾」をガラスに施したものです。




 そして、そんなガレの技術の粋を極めた一品がこれ!

 チラシにも載っている、今回の展覧会の目玉作品です。
 会場では鏡で裏側も鑑賞できるようになってますので
 彫りの多彩さなどもじっくりご覧ください。




◆ガレのライバル

ドーム兄弟、ティファニー、レッツ・ヴィトヴェ工房・・・
ガレと同時代を生きたライバルたちの作品も多数展示されています。


こちらはレッツ・ヴィトヴェ工房のテーブルランプ。
マーブル模様を切り裂く亀裂が
日本の茶器の金継ぎを連想させて面白いです。





 ドーム兄弟は森や木立をデザインした作品が多いのですが
 少ししゃがんで下から見上げて鑑賞するのがお勧めです。
 こちらは上から見たところ。




で、こちらが下から見上げたところ。

なんていうか、上から見るよりも
より「大地と空の広がり」を感じられませんか?

しゃがんで見るのは、ちょっと恥ずかしいですが
よろしければ、ほかの作品でもお試しください。




◆おまけ: 黒壁美術館 & 黒壁スクエア

今回は、滋賀県・長浜の黒壁美術館から作品を多数お借りしたそうです。
同館では普段倉庫に眠っているものも、多く出展されているそうです(特に家具類)。

黒壁美の館長さんがオープニングで「黒壁スクエア」の宣伝を熱心にされてましたが
東京ではあまり知られていないんでしょうか。
中部・東海・近畿あたりだと認知度高いと思うのですが・・・

「黒壁スクエア」は、古い土蔵の町並みが売りの観光地で、
倉敷・函館・尾道なんかが好きな人はハマると思います。
まあ基本、買い物や食べ歩きが楽しいところなので、女性向けの観光地かも知れません。

黒壁スクエアの近くには「成田美術館」というラリック専門の美術館もあります。
昨年、新美でやってたラリック展にも沢山出展していました。
入館者が少ないときは、学芸員のかたが熱心に説明してくださいます。

というわけで、黒壁はガラス好きなら一度は訪れるべき「聖地」のひとつですw
会場に観光案内コーナーもありましたので、気になる方はぜひご覧ください。





以上、学芸員さんによるツアー・ガイドの内容をベースにお届けしました。

より詳しくお知りになりたい方は、黒壁美の鈴木潔館長による講演が4月24日(土)に開催されるそうですので
そちらにご参加されてはいかがでしょうか(予約制です)。

最後になりましたが、目黒美術館の関係者のみなさま、
この度はこのような楽しいイベントにお誘い頂きまして、ありがとうございました!

春の庭園散策 @根津美術館

2010年04月09日 00時38分37秒 | Weblog
先週、根津美術館に行ってきました。
リニューアル後の初訪問。

# 画像は全てクリックで拡大します。


 水墨画展をやってます。
 伝牧谿の国宝「漁村夕照図」、雪舟「破墨山水図」
 雪村「山水図」など見所多数。




でも今回は庭園をご紹介。
これは前庭にある石灯籠。




 残念ながら、この日は曇り空でした。




 晴れた日にまた来たいです。




 ところどころに、石像などが置かれています。








 カメリアも満開。
 和名「乙女椿」というそうな。












錦鯉が何匹かいたのですが
うまく撮れませんでした。




 桜はあまり植えられてないみたいです。









 藤棚?もありましたが、まだなにも植えられてないみたい。
 来年の春に期待です。




さくら @皇居のお堀

2010年04月05日 00時24分10秒 | Weblog
4月3日(土)に昭和館に行ってきたのですが、
ついでに皇居のお堀で桜の写真を撮ってきました





他にもフォトチャンネルにアップしました。
こちらからどうぞ。

薄曇りだった上に、夕刻に撮ったのでちょっとくすんでますが・・・

アートフェア東京2010 @東京国際フォーラム

2010年04月04日 00時58分30秒 | 展覧会
国芳のつづき・・・の前にこちら。




行ってきました、東京でも最大規模のアートフェア!

実は自分は現代アートはあまり好きじゃないので
アートフェアはいったことがなかったのですが・・・

こちらは古美術のギャラリーも沢山出展するそうなので、今回はじめて行って見ました。
ところが現代アートも思いのほか面白、午後6時~閉場8時ごろまでフルに楽しめました。
もすこし早めに行けばよかった・・・

以下、印象的だった作品の感想です。

#()はタイトルをメモし忘れた作品、リンクは関連サイトです。


◆「龍虎図」 長沢芦雪 @加藤美術ブース

今回一番おどろいたのがこのブース。
芦雪の掛幅1対が露出展示されてるんですよ。信じられん。
動揺してじっくり見られなかったのを激しく後悔・・・

ただ龍の周囲にただよう空気のモイスチャー感がはんぱないのだけは、印象に残りました。


◆(竜と鯉の絵) 柳田征一郎 @一番星画廊ブース
http://www.1banboshi.co.jp/exhibition/Exhibition.html

今回、一番好きだ!と思った作品。これが載ってたらカタログ買ってたのに・・・

狭い画面いっぱいに、ちょっと窮屈そうにうずくまる龍。
墨絵調の絵ですが、龍の視線の先に一点だけ色がぽつんと燈ってます。
よく見ると、ひらひらと気ままに泳ぐ小さな鯉。
龍はそれを、うらやましそうに見ています。

鯉を見つけた瞬間、ああこれは水中なんだ、と気づき
たちまち画面に満ちる水を想像させられてしまう面白い絵です。


◆「二律背反都市」など 天野裕天 @椿近代画廊ブース
http://www.tsubaki-kindaig.co.jp/exhibit.html

今回、一番ほしい!と思った作品目白押しのブース

廃墟と化した街を背負う、青銅器のような面持ちの動物たち。
どっかの遺跡で発掘されたオーパーツです、と言われたら納得してしまいそう。

たとえ人が滅び去っても、人の作ったモノは残る。そして再び人に出会うのを待ち続けている。
古代に永遠を夢見た(元)男の子であれば、誰でもワクワクする作品ばかりです。


◆「海岸の水たまり」 神戸智行 @広田美術ブース
http://tomoyukikambe.web.fc2.com/
http://kgs-tokyo.jp/interview/2010/0402/index.htm

神戸さんはパステル調の花鳥画を描かれる方みたいですが、
今回はその世界観をブース内に再現する?展示。
ブースの壁際をエメラルドグリーンの磯に見立て、州浜が作られてました。

そして壁にはキャンバスに描かれたしだれ柳やトンボ。
切り取られた風景から、却ってその背後に空間のひろがりを感じられます。

謎なのは、州浜の石の上に立ち、漫画でいうところの「滝涙 T_T」を流すハニワみたいな像。
おかげで溜まってる水が、すべてこいつの涙に見えてくるw


◆(松の掛幅) 与謝蕪村@思文閣ブース
http://shibunkaku.blog15.fc2.com/blog-entry-28.html

こちらもビッグネーム目白押しで、ビビッてろくに見られませんでした (←チキン
この蕪村の掛幅は松の絵・・・だったと思います。(うろ覚え)
どんな太い筆使っとんねん、ぐらい豪快に描かれた幹が印象的でした。


◆(黒人の女の子の写真) ルード・ヴァン・ピエール @GALLERY TERRA TOKYO ブース
http://pictureyear.blogspot.com/2009/02/ruud-van-empel.html
http://www.galleryterratokyo.jp/
google 画像検索

折り重なるように繁茂した、色とりどりの蓮の葉。
そこに埋もれるように寝転んだ、黒人の女の子の写真。
(上記の一番上のリンクから実物が見れます。ページの中の一番下の写真)

最初はその原色のコントラストに目を奪われたのですが、じーっと見てると何か違和感が。
構図、特に蓮の葉のレイアウトにどこか人為的なデザインを感じるのです。
琳派の絵みたいと言えば良いでしょうか。

と思ったら、なんとこれ、コラージュ写真なんだとか。

後でgoogleで画像検索したら、更にデザイン的な作品も。琳派というより、ルソーに似てるかも。
緑をデザイン的に配置する発想は、西洋のガーデニングを連想させるところもあります。


◆「最初の気持ち」ほか 池永康晟 @秋華堂ブース
>http://www.syukado.jp/jp/gallery/2010artfairtokyo.html

美人画。涙袋フェチ必見!

どっかで見たことある絵だなと思ったら、
今店頭に並んでる「アートコレクター」4月号の表紙のかたでした。
浮世絵や新版画も、比較的お安く売ってます。


◆「生命のかたち」ほか 松尾太一@画廊くにまつブース
http://www16.plala.or.jp/kunimatu/

ドライフラワー?を透明な樹脂のなかに封入した作品がいくつか。
ヴァニタスの新しい形。

黒い円盤状の気持ち悪いものが入っていて、何だコレ?とよくよく見たら
ひまわりのドライフラワー?でした。

こどものころ、夏休みの終わりの夕暮れ、
太陽を思わせるはなびらが散り、うなだれたヒマワリのみすぼらしさを寂しく思う一方
満々に種をたたえたその「顔」が力強くも不気味だと感じたのを思い出しました。


◆(月夜の桜の絵) 吉田博 @三田アート画廊ブース

こちらは浮世絵&版画専門の画廊のようで、
先日、府中市美で見たばかりの国芳の「相馬の古内裏」や巴水のレア版画が多数。
欲しいなー、でも摺りも良いから高いなー、などと思いながらブースの外に出ると、
吉田博の大型の版画が飾られてました。

いやあ兎に角デカい! 一体どうやって摺ったんだコレ?と思いつつも
絵自体はあまり面白みが無かったので、特に気にせず通り過ぎました。

しかし!家に帰って「吉田博全版木画集」を見てみると、なんとこの作品が載ってない!!
他のブログでも見たという人がいるから、見間違いでもなさそう。

一体あの作品、どういうものなんだろう・・・

「歌川国芳 奇と笑いの木版画」展 @府中市美術館 講演その1

2010年03月30日 00時20分30秒 | 展覧会 講演メモ
府中の公園でも桜の花が咲き始めてました。
写真は府中市美の遠景。



# 画像クリックで拡大します


今回の国芳展ですが、代表作そろい踏み&珍しい作品多数で、
実は何気にすごい展覧会です。

慶応大准教授の内藤正人さんの講演が聴けるということで、今週の日曜に行ってきました。
立ち見が出るほどの大盛況。

大変面白いお話が聴けましたので、メモ書きから抜粋してご紹介します。

(掲載に問題がある場合はご指摘ください。エントリを削除します)


◆イントロ

寛政9年(1797年)生まれ、文久元年(1861年)没

初代豊国や柴田是真に師事、北斎に私淑。
同時代のライバルは国貞(三代豊国)、広重。
門下に月岡芳年、河鍋暁斎

1797年は面白い年で、広重の生年であり、蔦屋重三郎の没年でもある。
浮世絵の時代の節目となった年といえる。
(注:重三郎は歌麿や写楽をプロデュースした版元。ちなみに写楽は豊国に追い落とされました)

最初、泣かず飛ばずだった広重や国芳に対し、国芳の同門だった国貞は、超売れっ子。
役者絵・美人画を初めとして、合巻(見開き絵にかな交じりの文章を加えた小説)でも人気を博していた。

その後、広重は独自の「名所絵」を、国芳は「武者絵」という新ジャンルを確立することで評判を得るようになった。

国芳は晩年、中風(脳梗塞)にかかり工房の弟子達に代筆をさせていた。

◆人となり

門下の芳年や暁斎が国芳の肖像を描いており、ずいぶん慕われていたようだ。
暁斎の絵などは、幼いころ通った、猫があたりかまわずごろごろしている工房を懐かしむような絵。
(国芳は大の猫好きだった)

死絵(訃報を知らせる似絵)も何種類も描かれたようで、当時の人気ぶりがしのばれる。

口調は強い江戸訛りで、火消仲間たちとも親交が深く、豪放な性格。
一方、自身を絵の中に登場させるときはいつも後姿。
山王祭りに門下の者総出で参加した様子を描いた絵でも、やはり後姿。
シャイなところまで、根っからの江戸っ子。

参考図版:
『火消千組の図』 国芳

◆美人画くらべ 国貞・広重・国芳

国貞は脂粉が漂うような艶っぽい女性を描く。
これに対して広重の描いたのは、背筋をしゃんと伸ばした凛とした佇まいの女性。
武家の出の広重らしい美人像。
国芳はというと、なかなかコレも捨てがたく、張りのある溌剌とした女性を描いた。

ただやはり、当時の江戸で人気を博したのは国貞の美人画。
物語性を感じさせるシチュエーション・雰囲気づくりなども国貞がアタマひとつ抜けていた。

参考図版:
『星の霜当世風俗・行燈』 国貞
『あふみや紋彦』 国芳

◆武者絵の生みの親

国芳が一躍脚光を浴びるようになったのは、
「水滸伝」に登場する108人の侠客たちを描いたシリーズ版画を売り出したときのこと。

明代に書かれ「中国四大奇書」のひとつに数えられるこの物語は、
戯作者たちが翻訳・翻案して読本に仕立てて出版しており、ブームの下地はできていた。

このような伝承上の人物をエキセントリックかつダイナミックに描いた例はかつてなく
「役者絵」よりも刺激的な「武者絵」は、当時の人々には驚きをもって迎えられたに違いない。

役者絵が「型の美」を描いたものであったとするなら、武者絵はまさしく「型破り」であった。
国芳は、若いころに北尾派・勝川派の絵本をかなり勉強しており、
このような勇壮な図案を描く素地ができていた。

この後国芳は、登場人物を日本人に置き換え翻案された「本朝水滸伝」なども手がけた。

参考図版:
『通俗水滸伝豪傑百八人之壱人 短冥次郎阮小吾』 国芳
『花和尚魯知深初名魯達』 国芳


◆名所絵

北斎に私淑(リスペクト)していた国芳は、名所絵(風景画)も数多く手がけた。
しかし名所絵を描いても「人物」をクローズアップして描くあたりは、比較的保守的だったといえる。

(基本的に浮世絵は「人」を描くものであったが、
 北斎が広重画新しかったのは「風景」を主題として前面に押し出したところだった)

ただ、陰影表現や低い水平線など、西洋画の影響が色濃く見える斬新な表現・構図が
国芳の名所絵の特徴。

ただ当時は新しすぎたらしく、あまり売れ行きは良くなかったようだ。
「富士見三十六景」も現在確認されてい作品のは5点のみで、
販売不振のためシリーズのごく初期に打ち切られてしまったと考えられる。

参考図版:
『東都名所 佃島』
『東都首尾の松之図』 国芳
『忠臣蔵十一段目 夜討の図』 国芳
『相州江ノ島の図』 国芳
『東都御厩川岸之図』国芳
『東都富士見三十六景 昌平坂の遠景』

長くなりましたので続きは次回

≪ミュージアムグッズ紹介≫ 「大哺乳類展」×WWF コラボエコバッグ

2010年03月28日 00時22分45秒 | ミュージアムグッズ
「飛び出せs!科学くん」の特番などでも紹介され
話題の「大哺乳類展―陸の仲間たち―」@国立科学博物館。

実は夏に「海の仲間たち」編も予定されているのはご存知でしょうか?


 科博のチケットセンターで「陸+海セット券」を販売中です。
 「陸」の当日料金1400円+「海」の前売料金1200円の
 合計2600円です。

 なんだ、別にお買い得でもないじゃない、
 と思われるかもしれませんが…


もれなく、こんなエコバッグがオマケで付いてきます!
WWFジャパンとの限定コラボアイテム。

綿100%素材、CO2排出権つきで、環境にも配慮した製品だそうです。



綿製品とCO2の排出権がどう関係するんだろ?と思って調べてみたのですが
綿の栽培による年間のCO2固定効果3,630万トンなのに対して、
ポリエステルの製造による年間の排出量が11万トンであることから
綿製品を普及させると温暖化防止に貢献できるのだそうです。


サイズ的には図録を持ち運ぶのにちょうど良い大きさ。
あのミュージアムショップでもらうビニール袋、結構ムダだなと思ってたんで
コレ持って展覧会に行こうかなと思います。


このエコバッグ付「陸+海セット券」についての詳細はこちら
売切れ次第終了らしいですが、人気につき追加販売も決まったようです。



「大観と栖鳳」展 @山種美術館

2010年03月22日 20時02分20秒 | 展覧会
メインタイトル「大観と栖鳳」ですが、サブタイは「東西の日本画」。

ですので大観・栖鳳以外にも、当時の東京・京都の画壇で活躍した日本画家の作品が多数展示されてます。
近代日本画は一部を除いてあまりしっかり見たことが無いため、この展覧会は良い機会でした。

特に栖鳳が良かった。
「斑猫」しか知らなかったので、西洋画的な描写を日本画に取り入れた人、
・・・くらいの認識しかなかったのですが、どれもこれも激ウマい。
山水南画も、琳派風の花鳥画も。

今回の展覧会は図録がなくて、大観と栖鳳の館蔵品を掲載した小さな小冊子しかなかったのがとても残念。


◆月四題 より 春  菱田春草

月光の下、ふっくらと咲き誇る、桜の花・花・花
それをかろうじて支えているのは、震える筆線で描かれたか細い枝。
桜なのに、今にも首ごと落ちてしまいそうな危うさがあります。


◆緑池 竹内栖鳳

ひょこひょこと足を曲げ伸ばしして、一心不乱に泳いでいるカエルを描いた絵。

水面の上に出ている顔の部分は細密に描写されているのに対し
水面下に霞む体や四肢はさらさらっと淡彩の略筆で描かれています。

太ももやふくらはぎを、それぞれ一筆で描いてしまう省略っぷり。
でもそれが全く違和感ないのがすごい。


◆蛙と蜻蛉 竹内栖鳳

カエル描きたいから描きました、どうです? 的な絵。
あのカエルのプリプリ感を、あんな略筆で描き切ってしまうつーのがなんともはや。

当時71歳だった栖鳳は、蛙を庭に飼い込んで、
10日ばかりずーっと地面にしゃがんで蛙の営みを観察してたそうで、
おかげで腰を痛めたんだとか。なにやっとんじゃ。

「蛙の雌雄がよくわかった」とは本人の言ですが、
腰をさすりさすり、得意満面な姿が目に浮かぶよう。



◆斑猫 竹内栖鳳

みんな口々に可愛いと言ってたけれど、これよく見ると怖い。
値踏みされているような、見透かされているようなエメラルドグリーンの眼。



◆生 山口華楊

ぼんやり眺めていたら、そばに親子連れがやってきました。

母 「かわいいねえ」
息子「かわいーね」
母 「生まれたばかりだから立てないのかな?」
息子「早く立てるといいね」
母 「もう名前付けてもらったかな?」

・・・不覚にも、ちょっとウルっときた。



おまけ

美術館前に咲いていた梅




さくらカフェ @東京国立博物館

2010年03月21日 23時14分21秒 | つれづれ
東京国立博物館に行ったら、いつの間にか春の庭園開放が始まっていました。
知らなかった・・・

まだ桜が満開!というわけでもありませんが、春の兆しが見え初めている庭園の様子を、
園内に臨時オープンしている「さくらカフェ」とともにご紹介します。

#画像は全てクリックで拡大します。




 まず庭園入り口の脇に咲いているモクレン。
 こちらはもう満開でした。

 すこし奥まったところに咲いてますので
 見逃さぬようお気をつけください。






庭園に入って、右手の道を進むと
小さなスミレ畑が。




 そのまま、春草庵や転合庵の北側の道を進むと
 白い花が咲いていました。

 これ、なんだろう。シロツメクサ・・・じゃないよなあ。
 花鳥図見てもわからない花多いし、野草の勉強しようかなあ。




ツバキもそこかしこで見かけました。




 引いて見るとこんな感じ。
 立ち止まって写真をとるかたも、ちらほら。




六装庵のつくばいにも一輪咲いていました。




 こちらは九条館前。
 サトザクラが咲いていました。




 さて、こちらが「さくらカフェ」。
 本館裏手にコーヒーやカクテル、スイーツを売る
 ワゴンが出ています。

 松花堂弁当もありました。
 (雨天の場合は中止)




 庭園の池を眺めながら
 ゆったりおくつろぎください。

 この日は対岸の転合庵でお茶会があったらしく
 着物を召したかたがいらっしゃいました。





自分はクレープとエスプレッソを注文。
あまり美味しそうに撮れていませんが…
味は保障いたします。




 池の左手にシダレザクラが咲いてました。
 ちなみに、これはカフェの席からの眺めです。





少し寄ってみるとこんな感じ。

ガイドマップによれば、これからカフェの周囲では
オオシマザクラやショウフクジサクラも見られるはずです。





 こちらはおまけ。
 博物館の中でも春や桜にちなんだ展示が目白押し。

 写真は本館8室に展示されていた博物図譜の1ページ。





今週から国宝「花下遊楽図屏風」の展示も始まります。
オリジナル缶バッジがもらえる「さくらスタンプラリー」なるイベントも実施されるそうです。

というわけで、今年は東博で春を感じてみてはいかがでしょうか。
(庭園開放は4月18日まで)

《ズロクマニア》 「開基足利義満600年忌記念 若冲展」 @相国寺

2010年03月18日 00時52分53秒 | ズロクマニア
今回ご紹介するのはこちら。
2007年、相国寺にて行われた伊藤若冲の展覧会の図録です。


 //// 評価ポイント///////////
  図版の画質:A
  図版の大きさ:A
  小論・記事・コラム:B  
  作品解説:A
  ブックデザイン:B
  レア度:B
  プレミア:B 
 //////////////////////////

  評価基準はこちら




若冲ファンには釈迦に説法になりますが、
昨年、東京国立博物館で開催された「皇室の名宝展」でも話題になった「動植綵絵」は
もともとはここ相国寺のために、若冲が「釈迦三尊像」とともに仏画として描いたものでした。

その「動植綵絵」が120年ぶりに相国寺に里帰りし、「釈迦三尊像」と合わせて展示されたのです
江戸・明治の観音懺法の折には、同様にこの33幅がずらりと掛け連ねられ参拝者が詰め掛けたそうで、
その光景が世紀を超えてよみがえる!ということで、大変話題になった展覧会でした。




 さて、若冲といえばもっと有名な図録があります。
 2000年に開催され、若冲を一躍有名にした
 京都国立博物館の展覧会。

 約150点が勢ぞろいした、空前絶後の回顧展でした。

 図録もプレミアが付いており、古書店では
 12000円~15000円の相場で取引されています。




にもかかわらず今回、あえて相国寺の若冲展の図録を選んだのは理由があります。
それは、収録されている図版の圧倒的な画質!

百聞は一見にしかず、次の「向日葵雄鶏図」の図版の比較画像をご覧ください。
左が相国寺展の図録、右が京博展の図録です。





ご覧の通り、羽根の精彩感が違います。
京博の図録も決して画質が低いわけではないのですが、相国寺展の図録の画質の高さは異常。

このほか、水墨画などの図版も素晴らしい。墨のみずみずしさが半端ないです。
これは私見ですが、黒の美しい図版は色彩も豊かです。

(なお、上掲の写真は実際の図版の状態を完全に再現しているわけではありませんが、
 撮影条件は同じですので比較に問題はないと考えています。)

個々の作品解説も非常に詳しく、
各作品には、それぞれ1000字以上にわたる解説が加えられています。



若冲ファン必携のこの図録は、販売時2500円でしたが、
2010年3月現在、古書店相場4000円程度になっており、そろそろプレミアAランクになりそう。

とこが昨年秋ごろ、佐野市立吉澤記念美術館のショップで見かけましたので
来館予定の方、まだ定価で買えるチャンスです。

応挙館茶会(2月) @東京国立博物館

2010年03月15日 00時35分39秒 | つれづれ
で思い出したのですが・・・

先月21日、東京国立博物館の応挙館茶会イベントに行ってきました。
今回はそのレポートです。
すっかりアップするの忘れてた・・・

#画像はすべてクリックで拡大します




 庭園の入り口では早くも梅の花が満開でした。
 現在、庭園はイベント時以外の立入りは禁止されていますが、
 この梅はレストランからも見える位置にあります。
 まだ咲いてると良いのですが。




ただ庭園の中はさすがにまだ冬の装い。
枯れ木に止まるカラスがお出迎えw




 いやーまさに、冬ぞさびしさまさりける、って感じです
 これはこれで趣きがありますが




でも、お茶室に入ったらまた梅の花に出会えました。
このお茶菓子、わざわざ京都から取り寄せてるそうです。
牛皮に餡が入った生菓子。ちょこんとのってるのは梅の実。

あまり味を伝えるのは得意じゃないのですが
餡のやさしい甘さと梅の実のサッパリした甘さの
両方が楽しめて美味しかったです。



 お茶立ての実演も見学できます。

 案内のかたには
 「修行ではありませんから足を崩してお気楽に」とお話し頂きましたが
 ほとんど誰も足を崩す気配なしw

 もちろんお抹茶も頂けます。ゴクゴク飲める薄味で美味しかったです。




お茶の後は三十六歌仙絵巻 切断事件のお話がありました。
(切断事件の詳細はウィキペディアの解説をどうぞ)
写真のように、絵巻の複製を茶室に広げてご解説いただきました。



 これは小野小町の部分。
 切り売りしたとき、男性より女性の断簡の方が
 値付けが高かったのだとか。
 逆に坊さんの断簡は安く売られたそうです。
 ・・・売り立てのクジ引き引きに参加した方々は、
 坊主めくりをするような心境だったかもしれませんw




さて応挙館といえば当たり前ですが応挙の貼付け絵!
複製とは言え、松がせり出してくる感じを初めて体験出来て感激です。
梅図襖は外されていてちょっと残念。




 床のお花も良かったです。
 何気に青磁の花瓶も素敵。欲しい。

 何の花かご説明いただいたと思うのですが、メモり忘れました・・・



こちらのお花も同様。
せっかくお話いただいたのに申し訳ないです。



 応挙館のお茶会は、
 お茶とお菓子の実費500円だけで参加できます。
 興味をもたれた方は是非どうぞ。




次は桜の季節に行けると良いなあ・・・

「浮世絵の死角」展 @板橋区立美術館

2010年03月14日 23時20分47秒 | 展覧会
この土曜日に行ってきました。
美術館前の公園では、梅が満開でした。



画像クリックで拡大します。

展示作品201点のうち、国芳25点、国貞(三代目豊国)36点。
幕末の作品に偏ってはいますが、奥村政信、鈴木春信から月岡芳年、小林清親、川瀬巴水まで
浮世絵史&近代版画史を俯瞰できる展覧会です。

◆「牧童図」 喜多川歌麿
猛々しい牛に対して、それを引く子どもの飄々とした感じが対照的。
半笑いの表情とか、スキップしてるようなポーズとか、悪ふざけしてるようにしか見えない。
「牧童寒笛倚牛吹」という漢詩がモチーフらしいのですが、どんな話なんだろう・・・

◆「紫陽花にひわ」歌川広重
右上と左下にふわりと咲く、二朶の紫陽花。
その間を、真っ逆さまに落下するかの如く疾駆する2羽のマヒワ。
そして、その飛跡に沿うようにすらりと伸びる紫陽花の茎。

画面の上から下へ、2羽が駆け抜ける一瞬を捉えた一枚なわけですが
彼らが何処から飛来して何処へ行こうとしているのか、
絵の外側に広がる空間を想像せずにはいられません。


◆「百物語 さらやしき」
有名な怪談「皿屋敷」のお菊を描いた一枚ですが、その姿が異様極まりない。

無表情で上目遣いにこちらを見つめる真っ白い横顔。
その下に蛇のように連なるのは、青い染付けの皿、皿、皿。
長い髪は皿の連なりをつなぎとめるように、ねっとり纏わりついている。
口からは、なにやら得体の知れない桃色のか細い気を吐く。

写真では見たことがあったのですが、実物を見るとまた迫力があります。
何よりこちらをねめつける目が怖い。


◆「二代目中村富十郎の長吉姉お関」 ほか2点 3枚一組 三代目歌川豊国
背景の右上から左下へ走る青と白のストライプがサイケデリック。
役者もストライプの流れに沿うようにポージングした格好で描かれており
非常に躍動感のある構図です。


◆「柘榴に鸚鵡」 小林祥邨
真っ黒な背景に、真っ白なオウムが映える一枚。
平木浮世絵美術館にある、若冲の花鳥版画みたい。

違うのは、オウムが止まる柘榴の実や花の艶かしさ。
手を伸ばして撫でてみたくなるような赤。

◆「霞む夕べ-不忍池畔」 笠松紫浪
どっかでみたなー、と思ったら、現版木がまだ残ってるようで
渡辺木版美術画廊が後刷り版を売ってました

・・・欲しい。

前景の柳の茶以外は、ほぼ全面薄い青紫一色。
立ち込める霞の水の匂いが漂ってきそう。


ほかに、おもちゃ絵を集めて展示している一角があり面白かったです。
トレーディングカード?あり、着せ替え人形あり、鳥類・魚類図鑑あり。

特に着せ替え人形は、反物のような縦長の柄付の紙を折り
人形に「着付け」するらしく、いまとは全く違う発想で面白い。
でも、実際どうやって着付けるのか判らなかったので、解説が欲しかったです。


実は、個人的には新版画を見るのが目的だったのですが
ほかにも色々と楽しめた展覧会でした。

《ミュージアムグッズ紹介》 「長谷川等伯展」 @東京国立博物館

2010年02月28日 00時43分30秒 | ミュージアムグッズ
ミュージアムグッズ紹介番外編。





東京国立博物館で開催中の等伯展。
その特設ショップからグッズをご紹介します。

こちらのフォトチャンネルからどうぞ。
(「スライド」をクリックすると大きい写真で見られます)

※掲載に問題がある場合は、ご指摘ください。エントリを削除します。

《ミュージアムグッズ紹介》 ドレミはにわ

2010年01月18日 00時09分05秒 | ミュージアムグッズ
◆グッズ紹介

東京国立博物館のショップでまたヘンなもの見つけました


 「展示室では吹かないでね」と
 お店の棚の片隅でお願いするはにわくん



何かと思ったら、はにわ型の笛のようです。
しかもメロディを奏でられるらしい!

そこで・・・奏でてみました
思ってたより、ちゃんと演奏できるのでびっくり。



◆どこで買える?

東京国立博物館の本館地下のショップで買えます。
はにわのぬいぐるみが置いてある棚にありました。


なおこのハニワ、ネックストラップが付いていて
首から提げることもできます↓。





うっかり子供に買い与えたりした日にゃ、
首から提げて一日中ピーヒャラ鳴らしまくると思われる、
大変危険なアイテムです(笑


「洛中洛外図屏風(舟木本)」 徹底ガイド

2010年01月09日 19時54分39秒 | 展覧会
1月13日(水)から東京国立博物館で「洛中洛外図屏風(舟木本)」の公開が始まります。
保存の都合上、1年に1回、2週間限定の展示。

それに伴い関連イベントや新グッズの販売が行われています。
あわせてお楽しみいただければ、てことでご紹介します。


◆ミュージアムシアターで予習しよう!


 まずはシアターの高精細・大画面の映像で予習するのがお勧め!
 くわしくはこちらの公式ページをどうぞ。

 なお、土偶展を開催している関係で、受付場所がいつもと違います。
 本件エントランス左手の部屋入ってすぐのところにあります。
 



なお今回のシアター上映は新たな試みとして
シナリオリクエストを取り入れています。
6つのシナリオの中から、
来場者リクエストの多かったもの2つを上映するしくみ。

受付時に右のようなラインナップリストをもらえますので
見たいものを来場までに選んでおいてください。



◆タッチパネルで見所をおさえよう!

 残念ながらシアターで見たいシナリオが見れなかった!
 という場合はこちらをどうぞ。
 本館2階、エントランスの階段を上ってすぐのところに
 このようなタッチパネルディスプレイが設置されてます。
 洛外洛中図屏風の「見所」を解説するとともに、
 自由に拡大・スクロールして鑑賞できるシステムです。




◆本物を見に行こう!

予習をしたら、いよいよ本物を見に行きましょう!
場所は本館2階7室です

まだ公開前なので写真はありません。ごめんなさい。
代わりに公式ページの画像をどうぞ。


◆ギャラリートークで知識を深めよう!

次の日程で、東京芸大の学生ボランティアによるギャラリートークが開催されます。
 2010年2月7日(日)
 2010年2月13日(土)
 2010年2月14日(日)
 2010年2月20日(土)
 2010年2月21日(日)

各回とも15:30~15:50。詳しくはこちら

このギャラリートークは年に2クール開催される、東博と芸大のコラボイベント。
芸術学や工芸史専攻の院生のかたがたの詳い解説を聴くことが出来ます。

普段は平日開催が多く、週末にこれだけの回数開催されるのは異例で、またとない機会。
舟木本について少し深く知りたいというかたには是非お勧めのイベントです。


◆洛中洛外図屏風を持ち帰ろう!

 本館地下のショップには
 1/4サイズの洛中洛外図屏風リーフレットが登場!

 これはマジ凄い。
 ミュージアムグッズマニアな自分としては
 これを紹介したくて今回の記事を書いたと言っても
 過言ではありませんw



ペットボトルと比べてみました。デカイです。
しかもこれは右隻だけで、同じ大きさの左隻も付いてます。
裏面には詳しい解説も。

一般家庭で飾って見るのはなかなか難しい思いますが、
畳の上に広げて町の人々の様子を眺めるのはほんと楽しい。



 細部の拡大映像。
 人物の表情がギリギリわかる大きさということで
 1/4サイズにしたのではないかと思います。



 驚くことに、これでお値段たったの840円!

 シアターの方のお話では、このリーフレットを製作された凸版印刷の方に
 「これ安すぎないですか?」と訊ねてみたところ
 「皆さんに見ていただきたいんです!」と答えられたそうです。
 凸版印刷、太っ腹! そして男前!

 ショップで併売してる小学館の解説本と合わせて買えば
 あなたも舟木本マスター!



◆おまけ:もうひとつの洛中洛外図屏風を見よう!

1月11日(月・祝)までですが、本館2階第10室
別の洛中洛外図屏風(作者不詳・17世紀)が展示されています。
時間に余裕があるかたは事前に見ておいて、
舟木本との違いを見くらべるのも楽しいと思います。





「柴田是真の漆x絵」展 @三井記念美術館

2010年01月07日 00時12分22秒 | 展覧会
江戸~明治の時代を生きた、漆工職人・柴田是真の展覧会。

漆でいろんなイミテーション・フェイクを作るのに情熱を注いだ人。
紫檀という高級木材や、鉄・青銅・砂張などの金属、古墨、陶器などなんでもござれ。

また当時の漆工は分業制で、職人が自分で下絵を描くことはなかったのだけど
是真は自分で絵も描きたい!と思って、四条派の絵師・岡本豊彦に弟子入りしたんだとか。
最終的には、絵の分野で帝室技芸員(今の人間国宝)になっちゃっというんだから凄い。

展覧会では照明が暗いこともあり、残念ながら漆器はあまりよく見えず・・・残念。
モノによっては図録のほうが肌の様子がよくわかる、というものも(逆に言えば、図録の写真が良い)。
絵のほうは問題なく楽しめました。

なお、入り口に漆工用語の解説のリーフレットが置かれてます。
キャプションとあわせて読めば、かなり勉強になりますので是非もらって下さい。


以下、作品の感想です。

◆ 面相描図漆絵

画面右側、洋梨形の「白いもの」が幾つもごろごろと転がっている。
何コレ?・・・あれ、目鼻がついてる! 人の首?!
・・・いや、横に硯と筆がある。なるほど、これは作りかけの人形の首か。

初めて目にしたとき、誰もが一瞬ギョッとする作品。

でも落ち着いてよく見ると描かれた顔は優しそうに微笑んでる。
この首ひとつひとつが丹精こめて作られているんだろうなあ、
完成したらどんな人形になるんだろう?作っている職人さんはどんな人なんだろう?
いろいろと想像が膨らむ作品です。

◆漆絵画帖 のなかの猫の絵

後ろ足で耳元を掻くミケ猫。
なかなか痒いところに手が届かないのか、口をへの字に曲げてなんだかもどかしそうな表情。
手を伸ばして掻いてあげたくなるような一枚。

◆松に藤小禽図
松の枝から川面に向かって藤が垂れ下がっている。
延びた蔓の先は一度水をくぐって、くるりとまいた先っぽがまた水面から顔を出している。
川面には、蔦にかき乱されたあとがうねっている。

画面には動きがまったく感じられないのに、
蔓に咲いた藤の花房が、川の流れでゆらゆらと揺れている様子が想像される面白い一枚。


◆漆絵画帖「墨林筆哥」 のなかのカエルの絵

木の葉を琵琶に見立て、あぐらをかいて大音声で弾き語りを聞かせるカエル
まわりのカエルはみな静かに聞き入っている。
ひとりだけとなりの観客に向かって口をひらいている。
欠伸をしているのか、となりのカエルに感想を伝えているのか。

この絵の中では長い長い物語とともに、ゆっくり時が過ぎています。


【おまけ】
以前、東京国立博物館で取ってきた是真の漆絵画帖の写真です↓




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