セブ島移住者の本音トークⅡ

セブ島でNGO活動に従事する管理人が、フィリピン人家族との奇妙な生活や、現地での国際交流について語ります。

フィリピンと日本の根本的な違い

2007-12-08 | フィリピンの文化・風土・風習

【写真:とあるハイスクールの教室】

 





さて、今回は、かなりハードな話題なのですが、どうしても、書かねばならない…そんな思いで書き始めております。


なぜかと言えば、この部分での皆様との、ある程度の意識の共有が出来ないと、僕が現地から発信する情報が、ちゃんと伝わらず、‘差別や偏見’として解釈されてしまう可能性もあるのではないか…と、最近、ちょっと怖くもなって来たからです。


人間というモノは、良くも悪くも、自分が属している国なり、文化なりというものについて、その中で、日々、生活していると、‘こんなものだ’と、ある面、慣れてしまって、恰も、世界全体が、自分や周囲と同じスタンダードで動いているような錯覚に陥る事は、やむを得ないし、普通、人間というものは、自分が生まれて始めて触れたモノ、環境を、先ず、‘是’と受け止めて、(受け入れて)そこを基準に、色んな価値判断をして生きて行くモノだと僕は思います。


従って、僕らが、異文化に触れる時、日本人の価値判断に従って、良いとか悪いとか、色んな事を言うわけです。また、もっと小さな世界で言えば、自分の生まれ育った家庭での価値観は基本的に‘是’なのであって、他所の家庭が違う事をしていると、それだけで違和感を覚えてしまったりするケースも少なくはないような気がします。


異文化を深く知るには、まず、自分の素性が良く分からないと、それは果たせないし、異文化に触れる事で、逆に己を再発見する…これも良くある事です。


僕自身も、この7年以上の時間を掛けて、出来るだけ、そうしたモノを取り払って来た積りではありますが、未だに日本で生まれ育った者には変わりが無く、そんな中で、僕のいう事が、皆様には偏った意見と解される事も充分に在り得ると思います。


…そんな訳で、どうぞ寛大なる心をもって、これから僕が言わんとする事を受け止めてやって下さい。





まず、歴史的な問題になるのですが、フィリピンと言う国家は、植民地から始まった国家です。スペインの侵略を受ける前には、この地には、マレー系を中心とする部族がおり、小部族が群雄割拠している状態で、統一王朝のような存在は無かったようです。


しかしながら、当時の文化水準としては、かなり高度なモノが既に存在していたが、スペインの侵攻に伴う破壊と略奪により、歴史から抹殺されていった…という事が、どうやら真実に近いところのようです。


それ故、今、フィリピン国家統一のシンボルとなるものは、皮肉な事に、スペインが持ち込んだキリスト教のみ…要は、元々は異民族の宗教が、国家統一のシンボルになってしまっているという事が、如何に深刻な事なのか、僕にも外から見ている内には分からなかったのですが、この辺りの事は、アジア各国では唯一、列強と呼ばれた国々による植民地支配を免れたと言う歴史背景を持つ、日本に居住されている日本人の皆様には、幾ら理解して欲しいと言っても無理な部分があるかも知れません。


この事についての‘難しさ’は、ここでの生活のあらゆる場面に現れて来ますが、フィリピンの‘植民地文化’とも言える400年にも渡る他民族による支配の中で培われた文化には、想像を絶するものが数多くあります。


一口に言えば、この社会の中で‘庶民層’に属する人々には、自立する事を極度に難しくし、何時まで経っても‘誰かの使用人’的な生き方しか許されないような目に見えない仕組み…これは支配者側の問題だけでなく、支配される側にも問題はありますが、それを問題と感じさせないようにする何かが厳然と存在している…僕はそのように見ています。


‘それを問題と感じさせないようにする何か’…とは?


それは、教育に代表される知識他の情報不足であり、それらを庶民には入れまいとする、或いは、それらから目を背けさせようとする作為、無作為を含む、社会の流れです。


別に、彼らの文化レベルを貶す訳でも何でもありませんが、ここに居て、色んな事象に出会い、肌で感じる事には、庶民以下の階層の人々の精神・意識レベル、或いは知識レベルは、未だに中世をそのまま引き摺っていると言っても過言ではないのですね。


2,3年前だったか、フィリピンの地方の小作農民の生活を評して、ヨーロッパのあるジャーナリストは、‘中世の農奴以下である’…と伝えましたが、確かにミンダナオ地方などは、その通りです。(…実は、西暦2000年に、今ではもう、外国人などは入れなくなってしまった、イスラム過激派の拠点、サンボアンガ州のバシラン島にも、僕は入って、その状況を垣間見た事があります)


前にも、このブログの中で語った事がありますが、バシラン島の辺りが、‘ああなってしまう’のは、寧ろ自然な流れなのであり、先日もマニラで‘クーデターごっこ’が、あったばかりですが、この国の、この状態をして、流血の事態が起こらない方が不思議なんですね。


その根本の原因も、この国の大多数の人々が、最低限の教育レベルにも達していない為であり、要は、知識・情報不足から、本来は、痛みと感じるべきところを痛みとも感じられない…或いは、それも感じ始めてはいるが、何をどうして良いのか分からない。或いは、その不公平の原因になっている存在が、彼らにとっては、‘不可侵のモノ’として刷り込まれ(ある面、躾けられて)しまっているから、変な方向に走り出してしまう…その解決策を国内ではなく国外に求めるのが、その典型でしょう。


或いは、皆の足並みが揃わないから、どうしようもないのかも知れませんが、いずれにしても、既得権を握ってしまった連中の思うがままに動いているのが、この国、フィリピンです。…つまり、それが可能になるのは、植民地支配に適した社会構造や思想がそのまま未だに機能しているからなのですね。


日本という国は、明治維新に際して、‘富国強兵’という政策の下、国民への教育の普及を始めましたよね?…それは何であったかと言えば、欧米各国の植民地とならぬよう、国を強くしようとした…と言う事だろうと思います。良くも悪くも、これを為せば、一握りの為政者の思うがままに国や国民を牛耳る事は難しくなる反面、有事の際には、国民が一丸となって戦える…ここにメリットがある訳ですが、フィリピンは植民地をベースにした国家である為に、未だに、その逆を行くような体制にあるのです。


要は、庶民の大多数には、情報・知識・教育がないから、一人一人、日々の生活にあくせくして、その日暮らしをするだけ。一部の為政者が何をしようとも、庶民には、それが分からず、自分が踏ん付けられている事も理解できないで、‘旦那様、奥様’…と敬う....


…そして、天下国家とか、‘おらが国’なんて考えは非常に薄い。(…口では何と言おうとも、‘行動’にそれが現れてしまっている。国旗掲揚、国家斉唱と言った所で、機械的にやっているだけ。また、学校へすら行かなければ、そんな機会にも殆ど出くわさない)それ故に、皆がバラバラで、日々を何とか、食べて、飲んで、楽しく歌って、馬鹿笑いをして、他にこだわりも無く、生きられれば、それで満足…そんな感じなんでしょうね。


客観的に見れば、実は、元気に働き、ストレスにも耐え、長生きするのに必要な栄養素を摂れる状態ではないのに、それすらも分からないで、それ相当の働き・動きしか出来ないで、彼らは過ごしているような感じです。(…それを見て、日本人の中には、彼らフィリピン人を十把一絡げに、‘怠け者’と酷評する方々もおりますが、それは余りにも偏った見方だと僕は断じます)


良くも悪くも、日本の場合、教育の普及という事については一定の成果を収め、その結果、社会の大多数を占める庶民のレベルが上がった…その結果として、偶々、学校という窮屈な社会に合わないで、義務教育だけとか、高校も卒業すれば充分で、後は実務で頑張ると言ったタイプの人にも、やる気さえあれば、仕事をしながらでも勉強して、色んなものを吸収できる社会的な土壌も出来た…しかし、フィリピンには、最初から、‘庶民へは知恵を付けさせない’という流れがある事、更には、未だに初等教育すら、修了できない人が過半数にも上る事から、学校へ行って、金を払って、教育を受けない限り、社会からは何も吸収できない…そんな土壌があります。


…上記で、わざわざ‘金を払って、教育を…’と強調しましたが、これ、実は重要なポイントでして、比国の文化の中では、生きる糧となる技術・知識は、彼らにとっては非常に重要な財産で、これを、おいそれと他人に渡す事、それによって、場合によってはライバルを作ってしまうような事を極度に嫌って、出来るだけ、独り占めしようとしますから、‘比国社会’の中では、知識・情報の共有化が難しい側面がある事を忘れてはならないのです。


また、日常のテレビ番組の構成を見ても、フィリピンの国内放送には、ドキュメンタリー、教育的な番組は極めて珍しく、大きく分ければ、①お笑い ②歌番組 ③バラエティ(…と言ってもお笑いと歌番組が組み合わさったような代物で、知性を刺激する内容のものはない) ④ドラマ(恋愛モノが多い。‘アニメ’も、これに含んで)  ⑤スポーツ(バスケットが中心) ⑥ニュース …こんな感じです。(…僕は、こんな構成には耐えられないから、各国の国際放送が見られるケーブルTVを引っ張っていますが、月々約1,700円の受信料-ギリギリの生活を送っている庶民の3日分の日当相当-になりますから明らかに一般向けではありません)


日本には嘗て、厳しい職人さんの世界があって、下働きからでも、一生懸命頑張って積み上げれば、それなりに成功できたような側面があったのですが、フィリピンでは、使用人は何時まで経っても使用人、オーナーは、何時何時までもオーナー…こうした世界(要は、これが植民地の発想)ですので、何とか技術移転をと考えても、その下地すらが出来ていない…これが実情です。


…そんな訳で、これまでも、日比結婚の事他で、色んな投稿をしまして、フィリピン人の結婚相手のレベルについては、少なくとも、ハイスクール卒、出来れば大学2年中退位以上の学歴がある方でないと、結婚生活そのものが難しくなります…と言った事を何回か、言葉を変えて述べて来た僕ですが、過半数の初等教育が修了していないレベルの比人女性が、日本人の奥さんになったとして、足し算、引き算は出来るが、掛け算、割り算が怪しいとかって事になると、家計をやり繰りして、ちゃんとやって行くという事すら、大変に難しい事になりますね。


理数系の御話に偏って、恐縮ですが、(…と言いつつ、僕も理科系出身のくせに数学が苦手だった変なヤツですが...)基本的な方程式を解く力や、中学校程度までの理科の知識は持っていないと、生活の中で出くわす色んな事象を分析したり、改善したりって事が非常に難しくもなりますし、その他の情報知識が極度に不足している事も相俟って、そうしたフィリピーナには、こちら(日本人)の言う理屈が全く受け入れられなくて、感情だけで物事を処理する事にもなってしまうでしょう。
(…フィリピン人は、一般的には、理数系に弱い傾向があります)


そのような事情を鑑みて、僕らは、庶民層のやる気と才能のある若者たちを支援して、高等教育を受けて頂き、この社会に、一石を投じて、何かの変化を生み出せれば…そんな思いからの教育支援を展開しているのです。







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17 コメント

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Unknown (meseyan)
2007-12-08 18:12:08
権兵衛さんの言われたいことが
非常によく伝わってきました
僭越ながらこのmeseyan益々お手伝い
させて頂く意思を強くいたしましたので
よろしくお願いします
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meseyan さん..... (権兵衛)
2007-12-08 23:03:04
meseyan さん、ありがとうございます。

何とか、頑張って、エキス分だけを表現したかったのですが、結構な長文となってしまいました。最後までお読み頂き、ありがとうございます。

今後とも、どうぞ宜しくお願い致します。
返信する
フィリピンと日本の変わらない所 (crocodile roro)
2007-12-09 00:01:58
そうですねお互いの文化、国の成り立ちの違いを知れば
相互理解が出来ますね。
でも私はチョッと違った見方をしている部分が有ります
人として変わらない部分がかなりある!です。
ただし違う部分の程度がフィリピンの場合ケタが違いすぎますが

>異文化に触れる事で、逆に己を再発見する…これも良くある事です。

私の場合自分を良く知っているからフィリピンなんですね、
まあ自分をほぼ理解できたのは40歳を過ぎてからですが

>自立する事を極度に難しくし、何時まで経っても‘誰かの使用人’的な生き方しか許されないような目に見えない仕組み…

これは私も強く感じました、多分向こうのレストラン
のレベルが低いのもこの事が関係しているのかな?

>彼らフィリピン人を十把一絡げに、‘怠け者’と酷評する方々もおりますが、それは余りにも偏った見方だと僕は断じます)

私は権兵衛さんと違う部分で彼らは怠け者ばかりじゃ
無いと思います、パロパロな奴もいましたが良く働く
人も沢山見ました。


>中学校程度までの理科の知識は持っていないと、生活の中で出くわす色んな事象を分析したり、改善したりって事が非常に難しくもなりますし、その他の情報知識が極度に不足している事も相俟って、そうしたフィリピーナには、こちら(日本人)の言う理屈が全く受け入れられなくて、感情だけで物事を処理する事にもなってしまうでしょう

私の場合ラッキーですね妻は中退ですが大学2年まで
行きましたし、こちらのいい加減な英語交じりの日本
語で説明してそれなりに家計簿もつけてますし、プレ
ゼントの礼をさせる様に家族に説明させて、すぐに実
践してます。
ドイツに嫁いだ姉のドイツの家庭では姉のフィリピン
人がインターネットのヤフーメッセンジャーのセット
アップをしたそうです旦那は形無し
やはり教育は重要ですね。

でも必ずいつか権兵衛さんの支援している学生の中か
ら優れた人材が出ますよ、何でも上り詰める原動力は
ハングリー精神ですから。
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ガァーーン (crocodile roro)
2007-12-09 00:07:24
  上り詰める>登りつめるでした、
はーーー
教育は大切、身をもって感じてます。
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私も常々感じています。 (masahero)
2007-12-09 05:36:57
私はフィリピン・パブと言う、いわば比人の中でも最下層に位置する人達が多く働いている場所にいますから、常々感じていますよ。
このPinaちゃん達は現在、タレント・ビザがほとんど下りない為に結婚している方が多いですが、本当にまっとうな結婚生活を営む事が出来てるかどうか?とっても不安ですし、生まれて来た子供達をまともな人間として育てられるか?不安ですよ。
結婚相手の日本人男性の方にもあまり教育には無関心な方が多いようですから。
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Re:フィリピンと日本の変わらない所 (権兵衛)
2007-12-09 23:08:44
crocodile roro さん>そうですね。仰る通りです。フィリピンと日本の違いと言うのは、国とか文化とか、或いは言葉の違いなのであって、フィリピン人と日本人が人間としてどれだけ違うのかと言えば、実は殆ど違わない…僕もそう感じています。

違いが出るとすれば、生まれ育った環境の違い(…要は育ち方の違い)なのであり、その辺りが良く分からない日本人は、つい、フィリピン人を非難しがちなのですが、本当にこの国の、この環境を理解して、‘自分ならどうする’、或いは、‘自分ならどうなる’って事を考えると、本当に‘なるべくしてなっている’んだと納得できると思います。

また、御指摘の通り、‘そんな状態’で本当に良くやるよ…と思えるくらい働ける人(…特にフィリピーナ…比人女性には)…そうしたタイプも少なくはないですね。ただ、栄養状態が悪い事、気候的な問題もあって、ムラッ気が多い事と、継続と言う面で弱い面を見せる事、それに、日本人ほど、無理が利かない面がある事は、長い目で見ていると、だんだんと分かって来ます。…しかし、だからと言って、人種的に劣っているなんて事は決してありませんね。

やっぱり、大事なのは、‘鉄は熱いうちに打て’って事で、若くて柔軟な内に、必要な知識・情報を入れて上げて、生きる為に必要な技術も入れて上げられる事が理想ですね。

才能があるのに、恵まれない状態のまま、この環境で歳をとってしまう事は本当に惜しい事だと思います。
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Unknown (meseyan)
2007-12-09 23:14:53
すみません
話ぶったぎって悪いんですが

PLDTとGLOBE
携帯屋さんとしてすごく差がありますか?

流れぶった切ってすみません
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Re:私も常々感じています。 (権兵衛)
2007-12-09 23:23:49
masahero さん>フィリピンパブで働く女性たち…実は色んな階層の人が入り混じっているようですが、御指摘の通り、やはり、‘それでしか、海外へ出るチャンスがなかった女性たち’が大多数になるようですね。

実は、僕が日本で、初めてPPに踏み込んだ時の印象ってのは、彼女らの英語のレベルが余りにも低かった事です。(こちらがまとも英語で話しかけると、逃げ腰になる人が多かった感じです)…勿論、中には結構なレベルの人も居ましたが、寧ろ、少数派で、(その当時は分かりませんでしたが、)その事は、彼女らの大多数は、才能のあるなしは別にして、標準的な教育を受ける機会に恵まれなかった人たちなんだという事の表れなんですね。

そんな意味で、そうした女性たちの大多数は、日本でまともにやって行く事が難しいのは想像に難くはなくて、それ故に、日比結婚の半数以上が5年以内に離婚に至る…こうした現象も理解できます。

また、御指摘の通り、日本人の旦那様方にも問題のある方が多くて、マニラ行きの航空便に乗り合わせれば、それがモロに分かってしまうのは怖いところですね。

何とも難しい事です…(苦笑)
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meseyan さん..... (権兵衛)
2007-12-09 23:29:25
携帯の会社ですね?

PLDTはSMARTで、GLOBEは、GLOBEという携帯電話のプロバイダーを持っていますが、今、状態としては、やはり、PLDT乃至SMARTが最大手ですが、例えば通信の状態とかについては、現在、セブの周辺では、そんなに大きな差があるとは思えません。

しかし、確かにクリスマスイブからクリスマスへかけての日本で言うところの‘おめでとうコール’が集中するような時には、やはりGLOBEの方の回線の方が早く潰れてしまうような印象はありますね。
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Unknown (meseyan)
2007-12-10 00:26:36
大変ありがとうございました
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