The Smiths と Morrissey

スミスとモリッシーについて。

こんなんじゃ善い人間だって悪くなってしまう

2017-06-24 02:56:58 | 音楽

The Smiths " Hatful of Hollow" 収録 1984年リリース

" Please, Please, Please Let Me Get
What I Want "

とても短い歌。聴き惚れていると直ぐ終わってしまうような、はかない歌。

Good times for a change
see, the luck I’ve had
can make a good man
turn bad
So please please please
let me, let me, let me
let me get what I want
this time

変わるのに良い時
僕は悪いヤツになることだって出来た
ああ どうか、どうか、
僕にチャンスを与えてください

Haven’t had a dream in a long time
see, the life I’ve had
can make a good man bad

長い間 夢を持つことが出来なかった
分かるよね こんな生活じゃ善い人間も悪くなってしまう

So for once in my life
let me get what I want
Lord knows it would be the first time
Lord knows it would be the first time

そう 僕の人生の一度だけ
僕の欲しいものを掴ませて
神様は初めてのチャンスだって知ってる
神様は初めてのチャンスだって知ってる




若いころは、自分が人よりツイていないような気がしたものだ。
神様、一度だけチャンスをください、と。
でも一通りの人生を過ぎて、いくつかあった分岐点のことを考えると、そこでもう一つの道を選んでいたら、チャンスに繋がっていたかも知れない、と思う。
神様はチャンスを与えてくださっていたのかも。…となると選べなかった自分に腹が立つだけだ。

"善人だって悪人になってしまう"
先日観た「私は、ダニエル・ブレイク」は、そんな映画だった。
心臓疾患で医者から仕事を止められている主人公。
「手は動きますか? 歩ける? じゃあ障害者には該当しません。」と言われ
、公的支援はなかなか受けられない。仕方が無いので失業手当を受けるため、就職活動をする。
採用の電話がかかってくると、「ドクターストップで働けない」と仕方なく断る。「じゃあ何で仕事くれなんて言ったんだ?」と相手に怒鳴られ、落ち込む。

どうしろって言うんだろう?

シングルマザーの友だちは切り詰めた生活の中、万引きしてしまう。そして生活費のため売春するようになる。

主人公はずっと大工として真面目に生きてきた。シングルマザーの友達も、自分の働きだけで何とか子どもを育てようとしていた。
でも人の信頼を裏切り、犯罪を冒してしまう。

どうしてこうなっちゃうんだろう?

主人公は役所の対応にアタマに来て、真昼間、通行人の前で、そこの外壁に
" I, DANIEL BLAKE " と書く。
「私はダニエル・ブレイク、人間だ…」

見回すと、似たような話はよく見聞きする。セーフティネットから零れ落ちる人たち。
誰だって、生まれたときは悪人になりたいなんて思っている訳ないのだ。
神様、彼らを善人のままいさせて下さい。
そして、どうかチャンスを与えて下さい。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」2016年公開 (2017年日本公開) ケン・ローチ監督 イギリス・フランス映画







"The Smiths - "Please, Please, Please, Let Me Get What I Want"" を YouTube で見る


The More You Ignore Me, The Croser I Get

2017-06-04 01:29:32 | 音楽
"The More You Ignore Me, The Closer I Get"



The more you ignore me the close I
get
You’re wasting your time

あんたが無視したら
俺はあんたを手に入れるため もっと近づく
あんたは時間をムダにするだけだよ

I will be in the bar
with my head on the bar
I am now a central part
of your mind’s landscape
whether you care or do not
Year, I’ve made up your mind

俺はカウンターに頭を乗せてバーにいるだろう
俺はあんたの心のなか 風景の真ん中にいて
あんたがオレを気にかけるかどうか
ああ 仕向けるのさ


The more you ignore me
the close I get
You’re wasting your time

あんたが無視したら
俺はあんたを手に入れるため もっと近づく
あんたは時間をムダにするだけだよ

Beware!
I bear more grudges
Than lonely high court judges
When you sleep
I will creep
into your thoughts
Like a bad dept
That you can't pay
Take the easy way
and give in

気を付けな!
俺は一人きりで法廷に立つよりも もっと恨むだろう
あんたが眠っている時に 酷い負債のようにあんたの気持ちに忍び込み
あんたはそれを支払えない
簡単な方法を取れよ
そして 俺に降参しろよ

Year, and let me in
Oh, let me in
Oh let me
Oh, let me in
it's war
It's war
It's war
War
War
War
Oh, let me in
Ah, the closer I get
Ah, you’re asking for it
Ah, the closer I get
Ooh, the closer I

ああ 受け入れてよ
ああ 受け入れてよ
ああ 受け入れてよ
これは戦いだ
これは戦いだ
これは戦いだ
これは戦いだ
戦いだ
戦いだ
戦いだ
戦いだ
おお 受け入れてよ
ああ 手に入れるため近づく
ああ あんたは何のためと尋ねるだろう
ああ 手に入れるため近づくのさ
ああ



ストーカーか、というような歌詞が延々と続く。
誰か特定の人について、書いたのだろうか。

今の恋愛なんてあっさりしたものだ。付き合っては些細なことで別れる。自然消滅で終わり。メールやLINEで終わりも聞く。もちろんそんな簡単に終わりたくない人もいるだろう。

この歌の「俺 」も決して諦めるつもりはないみたいだ。
「あんたの心のなか、風景の真ん中にいて、あんたが俺を気にかけるかどうか仕向ける」だって。
モリッシーの声で、あのメロディで歌われるとしたら、こんなに思われる人が羨ましい。

でも恋愛ストーカーソングだけか、と聞かれたら、私は違うと思う、と答える。

この曲を作る前頃、モリッシーはアルバムのセールスが良くなかったり、不遇な時期を過ごしていたらしい。
ソロデビューして、マーみたいな相棒がいなかったのが、心細いこともあった、かも…。

でもスミスが解散してもう7年が過ぎ、ソロとはいえいろんな人と組んで沢山の曲を作った。思うように評価するされない時期があったとしても、歌で食っていけてる。根強いファンもいる…という自負もあっただろう。

ステージでスポットライトを浴び、自分の歌が人々に熱狂的に受け容れられた、その歓びは忘れられないだろう。

だからもう、マーに連れられてスミスを始めた、それ以前のように、マンチェスターで引きこもって他人と関わらずにいたように過ごすわけには行かない。

ステージの上のモリッシーは全力で歌い、踊り、暴れ、もがくように表現する。着ているシャツを引っ張り、胸を掴み、寝転び、身もだえする。
自分のこの歌、魂をどうしたら分かって貰えるか。

俺はあんたの心の真ん中にいて
あんたが俺を気にかけるかどうか
ああ、仕向けるのさ…

あんた、you というのは彼の歌を聴く人々全てのことではないだろうか。

もっと歌っていたい。自分の歌が直ぐには受け容れられなくても、歌い続ける、無視されたとしても、自分は歌いたい。自分を表現し続けようという決意を込めているのではないだろうか。

Year, and let me in
Oh, let me in
let me in
It's war
It's war
It's war

私はこの曲を聴いていると勇気が湧いてくる。
社会の中で生きていくのは戦いだ。自分を誤魔化して、意見も言わず、生きていきたくない。でも自分を出して生きていくのって案外難しい。
…それでも自分らしく生きていこうと。
しつこく、しつこく、人生の最期の日まで。

The More You Ignore Me, The Closer I Get 1994年リリース



"Morrissey -The More You Ignore Me, The Closer I Get" を YouTube で見る


Ganglord

2017-06-02 03:20:00 | 音楽
車のヘッドライトが目前を通り過ぎる。あとはまた暗闇が辺りを覆う。



"Ganglord"

Ganglord, the police are kicking their way into my house
And haunting me
Taunting me !
Wanting me to break their laws

ギャングロード 警察は俺の家にやって来ては 俺を罵り 蹴り出し 法を犯すのを待ってる

Ganglord, the police are kicking their way into my house
And haunting me, taunting me,
wanting me to break their laws.
And I'm turning to you to save me

ギャングロード 警察は俺の家にやって来ては 俺を罵り 蹴り出し 俺が法を犯すのを待っている
俺は救いを求め あんたの所へ戻る

Ganglord, the police are grinding me
into the ground
The headless pack are back
small boy jokes and loaded guns
And I'm turning to you to save me
And I'm turning to you to save me,
Save me, Save me, Save me

ギャングロード 警察は俺を地面に押し倒し 踏みつける
愚かな群れの背後には
つまらない男のジョークと
装填した銃がある
俺はあんたに救いを求めに戻る
俺はあんたに救いを求めに戻る
俺を救ってくれ 救って 救ってくれ

Gandlord, There's a clock on the wall
making fun of us all
Ganglord, the clock on the wall
Make a joke of us all
And I'm turning to you to save me
And I'm turning to you
To save me! save me, save me, save me

ギャングロード 壁に時計があるのは
皆が楽しむためだ
ギャングロード 壁に時計があり 皆が冗談を言う
俺はあんたの元へ戻る 救ってもらうために
俺はあんたの元へ戻る 救ってもらうために 救って 救ってくれ


Ganglord, remember, the police can always be bribed
Ganglord, remember―the police can always be bribed
they say 'to protect and to serve'
But what they really mean to say is :
'Get back to the ghetto ! The ghetto,
the ghetto,
Get yourself back to the ghetto!
The ghetto, the ghetto !
Get yourself back to the ghetto!
The ghetto.! The ghetto! '

ギャングロード 忘れるな 警察はいつも買収される
ギャングロード 忘れるな 警察はいつも買収される
彼らは「保護するため 奉仕するため」 と言う
しかし彼らが言ってることの本当の意味は
「ゲットーへ帰れ ゲットーへ帰れ
ゲットーへ帰れ!」


Ganglord は同義語に、criminal leader / the leader of a criminal gang がある。ギャングのボス。

ghetto はナチスドイツのユダヤ人収容所として知られているが、差別される人々や社会的弱者が住む場所のことも言う。

ライブでこの曲を演奏する時は、いつもステージの後ろに、アメリカの警察官が誰かを殴り、蹴り、突き倒し、倒れた人の横の地面に血溜まりがある、そんな映像が写し出される。
ドキュメンタリー番組を切り取り、繋ぎ合わせたもののようだ。ひたすら暴行シーンが繰り返される。

暴行されるのは丸腰の市民。いきなり室内に入って来た警官に突き飛ばされ、床にしたたかに後頭部を打ちつける女性。路上で射殺される犬。犬と同じように射殺される男性。
警察は、道端に倒れ、背を丸めて頭を抱える、無抵抗な男性の腹部を何度も蹴る。

2016年の大阪公演でも見た。大きなスクリーンに映る惨劇に目を逸らしたくなった。あまりにも躊躇ない暴力。

彼らが何をしたかの説明はない。アメリカでは、いくつかの主要な産業が廃れた街で、失業者が増え、薬物が蔓延し、銃を使用した事件が頻発しているらしい、というのはニュースなどで聞いていた。スクリーンの中の彼らも何か事件の容疑者かもしれない。
でも、だからといって、際限なく人を(犬も)暴行していい訳では無い。

大阪公演の少し前に、ルイジアナ州とミネソタ州で、何の罪もない黒人男性が、警察官に射殺される事件が相次いだ。無抵抗なのに。


警官も毎日スラム街と化した街で仕事するのはストレスになるだろう。街に薬物と銃が溢れている中で、いつ襲われるか。それが過剰防衛に発展するのか…。

The ghetto! The ghetto!
トランプが大統領になり、人種差別、移民問題が浮彫になっているアメリカで、この歌はどんなふうに聞こえるだろう。
テロが頻発し、難民問題で揺れる世界で、この歌は人々の心に響いているに違いない。


そうだ、そうだ! あいつらはそんなふうに俺たちを叩きのめした!
俺たちを排除しようとしている。
そうだ、この歌のとおりだ! と…。



2006年リリース " The Youngest Was The Most Loved ” 収録曲

"Morrissey, "Ganglord"" を YouTube で見る