キリストのあかしびと 公教会の教父たち

公教会(カトリック教会)の諸聖人、教父、神父らの伝記を掲載していきたいと思います。彼らは、クリスチャンの模範です。

シュステル枢機卿 16 純金のカリス

2018-03-04 02:26:31 | シュステル枢機卿
『シュステル枢機卿 - 模範的な司牧者』カスティリオニ神父・デルコル神父共著

◆16、純金のカリス

 大司教館を訪れるのは、聖職者だけではありません。いろんな人々がやって来ました。ある日、大司教館の芸術委員として選ばれたひとりの宝石商人が、お供をつれてやって来ました。「大司教さま、感謝のしるしとして、貧しい教会のために、銀のカリス(ミサ用のさかづき)を三つ持ってまいりましたが、受けとってくださいますか」

 宝石商人は、大司教さまの喜びを考え、胸をときめかしながら、カリスの包みをといて、箱からとり出し、テーブルの上に並べました。午後の陽ざしが窓からしのび撃んで、カリスをキラキラと輝かせます。かれは、もう得意の絶頂でした。お供のものも、じっと見ています。

「あの……すみませんが、たりません」とカルディナルはいいました。

 まったく予想していなかった言葉でした。

「大司教さま、どうぞご遠慮なくおっしゃってくださいませ、いくらでもさし上げますから」と宝石商人。

「いいえ、そうではありません。純金のカリスが一つほしいのです」

 この方の望みなら、何を惜みましょう。「承知しました。すぐ持って来ます」とかれは一つ返事です。

 シュステル大司教はほほえんで、いいました、

「いやいや、誤解しないでください。わたしが欲しいのは、あなたの心ですよ。これこそ、わたしの一番望む純金のカリスです」

 宝石商人は、もう感激のあまりに涙をおさえることができません。かれは、この上もないよろこびにみたされたのでした。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。