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『身体障害者の聖人 聖ヨゼフ・コトレンゴ』アロイジオ・デルコル神父、4
ヨゼフが神父さまになってから16年が過ぎ、町の人たちは、かれのことを"貧乏人の神父さま"と呼んでいます。
夏の盛りが過ぎようとする9月のはじめでした。ひとりの善良そうな男が、あわただしく教会にかけつけました。
「神父さま、大変です。町によそものがやってきたのでてあてすが、奥さんが重病です。いっこくも早く手当をしないと、もういのちが危いんです」
「じゃ、病院に入れたんですね、どこの病院ですか?すぐ行ってあげます」
「まあ、待ってください。それが、いちもん無しですし、よそものということで、病院も施設も、どこにも入れてもらえないんです。だんなさんは、ただもう、おろおろするひさんばかり、子どもは泣きわめくし、悲惨なことで!」と男は涙をふきました。
ヨゼフ神父が臨終の床にかけつけたのは、いうまでもありません。病人は罪のゆるしを与えられ、大きな慰めのうちに死んでいきましたが、問題は残された家族です。その涙とひどい苦しみは、ヨゼフ神父に、あまりにも強いショックでした。
「こんなことが、あってはならない」
かれの心が叫びをあげました。
ヨゼフ神父の足は、教会にいそいでいます。
「お帰りなさいませ」と玄関に顔を出した香部屋係にただひとこと、
「さあ、早く鐘をならしなさい」
「でも、神父さま、式の時刻ではございません」
「いいから、文句なしにならすのです」