写真は20年以上も前のものとなりました

つれづれなるまゝに日ぐらしPCに向かひて心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつづっていきます

科学新書 その2(の1)

2017年03月05日 | 随想

一気に冊のブルーバックスを紹介

・・・を、しようと思ったが、それぞれが余りにも内容が濃いので、とりあえず冊ずつ。

 

まず、「人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか」。

ブルーバックスの新着情報で、著者の「まえがき」が紹介されているが、その中で思わずアンダーラインを引いた箇所を挙げてみる。

「1000年は人間にとっては非常に長い時間だが、地球の歴史の中では一瞬にすぎない。」

「地球の過去には、現代とまるで似ていない時代があった。現代の基準では「災害」としか表現できない出来事が、日常的に繰り返していたような時代もあった。じつは現代は、地球の歴史の中では比較的めずらしい、おだやかで暮らしやすい時代なのである。」

「過去にじっさいに起こったことであれば、いつかふたたび起こる可能性は常にある。」

「飛行機は1回の墜落で数百人を犠牲にしてニュースになるが、自動車の事故で亡くなる人の数が、全世界の合計だと3日で1万人に達することはそれほど注目されない。ニュースとしてのインパクトの大きさは、出来事の深刻さを正確に反映するとは限らない。」「気候変動は飛行機よりもおそらく自動車の事故に似ている。」

「10年の物語なら小説になりえるが、1000年の話は原則として教科書にしかならない。」

「1991年の春、福井県の若狭湾岸にある水月湖(すいげつこ)という湖で、良質の年縞堆積物の存在が確認された。」「水月湖の年縞は、『世界一正確な年代が分かる堆積物』としての地位を確立した。」

「日本国内でも、水月湖は2016年の春から中学校の理科、社会、数学、国語の教科書に掲載され、さらに2017年現在、福井県若狭町の現地では、年縞を展示する専用施設の建設準備が進行している。」

 

「まえがき」にして、これだけの名言揃いである。

水月湖の年縞については、以前、このブログの「暖かい初冬の立山連峰(2015年2月9日)のところで、写真とともに水月湖(福井県:三方五湖1つ)の「年縞」(湖水堆積物などに見られる一年ごとの縞模様)によって、数万年前の毎年の気温がわかってきたそうなのだが、この水月湖の「年縞」が世界の歴史の「標準時」となっているのだそうである。」と紹介していたことがあり、今回、あらためて詳細を学ぶ機会を得た訳である。

ただ、この「年縞」という名の命名者である安田喜憲がどこかで展開している日本海側の豪雪起源の話題が一言も触れられていなかったことには、正直、落胆した。気候と生活の視点がなく、しょせん机の上の議論の披露本でしかないということは指摘しておきたい。

 

このあたりについては、「自然災害と恵みの循環」というサイトにいろいろと紹介されているので、そちらから抜粋してみる。

「日本列島がアジア大陸の一部だった約2億年前、中緯度にあったために台風に襲われるようになりました。あと2億年は、毎年、必ず台風がきます。」

「地震と火山噴火と津波は、1500万年前から。」「2000万年ほど前に大陸との間に割れ目ができて500万年かけて太平洋のほうに移動しました。ですから、日本列島の原型と日本海ができたのが1500万年前です。」「火山が噴火し、地震が起きて津波がくるようになりました。この現象は、あと5000万年は続きます。」

「ヒマラヤ山脈が低くなるまでに1億年ほどかかるので、あと数千万年は梅雨が続くことでしょう。」

「日本海沿岸に大雪が降るようになったのは8000年前からです。氷期には海面が今より120mほど低かったのですが、1万5000年前に氷期が終わり陸上の氷河が融けて海面が上昇。8000年前には、対馬暖流が日本海に流入しはじめて、冬でも水蒸気が盛んに発生するようになり、シベリア寒気団で冷やされて雪となるのです。」

「台風はあと2億年続くのに、護岸の鉄筋コンクリートは50年しかもちません。」

 

温暖化で大陸との陸続きから解き放たれた対馬海峡に、黒潮の流れの一部である対馬暖流が入るようになる8000年前よりも古い時代には日本海側に雪は降っていなかったことなどが、水月湖の年縞から明らかにされているのである。(温暖化がなければ、あの半島と繋がったままだったのかと思うと反吐が出そうになるよなぁ。「温暖化、バンザイ!」だよ。

これらは「予言」ではなくて「予想」な訳であり、それなりの根拠に基づいているのだが、Youtubeにわかりやすい解説動画がある。(解説者は「・・・10万年史」の著者である中川毅 氏)

なにげにすごい水月湖 

奇跡が生んだ世界の標準時計 福井県水月湖

数十年前、この三方五湖を遊覧船観光で楽しんだことがあったが、こういう貴重な学術資産はあまり人間を入れて環境を乱すことは避けたほうが良いだろう。美浜町商工観光課のサイトにはチャイニーズやコリアン向けの簡体字やおでん文字のページがあったりするが、それ、一気に環境破壊に繋がりかねませんぞ。

 

・・・に、しても、冒頭の新着情報のところでは、恐竜の大絶滅が6604万年(プラスマイナス3万年)前と推定されている(驚くべき精度の年代特定!)という紹介もあるが、その恐竜たちの棲息地がすぐ近くの勝山市周辺だということも、やはり、歴史というか地球からの贈り物のような気がしてならない。