ロイター (By Chan Ka Sing)
2024年7月10日
7月9日、少なくともトレーダーには中国人民銀行(中央銀行)の現状がはっきり見えている。写真は北京の同行前で2018年9月撮影(2024年 ロイター/Jason Lee)
[香港 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 少なくともトレーダーには中国人民銀行(中央銀行)の現状がはっきり見えている。
人民銀行は8日、短期金融市場への介入を開始する方針を表明。1週間前には長期国債を借り入れて売却する用意があることを明らかにした。
他の条件が全て同じであれば、これは人民元の安定維持という人民銀行の責務の達成に寄与する。だが、もう1つの重要な責務である経済成長の促進が犠牲になる可能性が高い。
経済成長の促進では、利下げが理想的な手段だろう。これは関連する2つの影響をもたらす。まず投資家から見た国債の魅力が低下する。投資家はここ数週間、資金の安全な逃避先として国債に殺到しているが、国債の魅力が低下すれば、より生産的な用途に資金を振り向けることになる。
利下げが問題になるのは、「人民銀行には金融緩和以外に選択肢はない」とみて国債を買い漁っていたトレーダーに事実上、屈する形になることだ。
また、習近平国家主席が年初に掲げた2つの核心的要素の否定にもつながる。習氏は「金融強国」として実現を目指すリストの筆頭に「強い通貨」、2番目に「強い中央銀行」を挙げた。
人民元はこのところ厳しい局面にある。2022年3月の米利上げ開始以降、対ドルで10%以上値下がりしており、07年以来の安値付近で取引されている。
元安の抑制では、今回の人民銀行の新たな措置が助けになり得る。この措置では、銀行システム内に「妥当で十分な流動性」を維持するため、必要に応じて臨時の債券レポ、リバースレポ取引を実施する。これにより、金利の取引レンジが狭まり、人民銀行の管理能力が高まる。
人民銀行がこうした政策手段を導入するのは約10年ぶりとなる。中銀が今回の2つの措置で予想しているバランスシートの圧縮は、利下げの用意がないという強いシグナルを送っている。
為替の安定か、経済成長の促進か。これは厄介なジレンマだ。人民銀行の潘功勝総裁は来週の共産党第20期中央委員会第3回総会(3中総会)がこのジレンマを解消してくれることを期待するだろう。
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