ケアトリハ

介護とリハビリの仕事をしている方、目指している方、介護やリハビリってどんな世界なの、という方に読んでいただきたいです。

自律神経のお話「心臓の場合」

2020年03月04日 | リハビリ・医療
自律神経のお話をします。 少し難しい内容なのですが、できるだけ簡単にお伝えしてみたいと思います(^-^; 分かりづらかった場合は、コメントに「やっぱり分かりません!!」とお叱りメッセージをください。 私の目標である「難しいことを、できるだけ簡単にお伝えする」の評価の参考にさせていただきます。

さて、そもそもですが「自律神経」という言葉は、よく耳になさると思います。
・自律神経失調症
・自律神経が乱れている
・ストレスが自律神経の調子を悪くする…などなど

自律神経は、解剖生理学的な分類として、「交感神経」、「副交感神経」という2つの神経に分類されます。 この2つを合わせて自律神経といいます。 この2つの神経は、どちらかが活動している時(ON)、もう一方は休憩する(OFF)、という「拮抗」した働きを持っています。

この自律神経の働きについて結論からお伝えしますと、自律神経は「本人の意識に関わらず、体内の多くの臓器の活動を活発にしたり(促進(①))、休ませたり(抑制(②))する神経」です。
「本人の意識に関わらず」というのは、言い換えますと「自分の意思ではコントロールできない」ということです。

今回は「心臓」の働きで説明します。

運動すると心臓は、全身に血液に乗せた酸素を届けるために、活動が促進(①)されます。 心拍数が増えたり、一回にドクンと送り出される血液の量(1回拍出量)が増えたりします。 やがて運動が終了してリラックスした状態になると、急いで全身に酸素を運ばなくてもよくなりますので心臓の活動は抑制(②)され、もともとの活動量に抑えられます。 これらの活動と抑制は、自分自身ではコントロールできません。 この心臓のコントロールは、「交感神経」と「副交感神経」である自律神経が行っています。

自律神経は、体内の臓器のほとんどを自動的に調整しています。 ただし、「促進(①)」と「抑制(②)」の切り替えのきっかけは、そのお体の持ち主である皆さん自身の行動によって起こります。



心臓の働きは通常、活動している日中は比較的「交感神経」が促進(①)されている状態です。 ただし、日中であっても、デスクワークで体を動かしていない状態であったり、起きていますが静かに腰かけている状態などでは、交感神経ON状態ではありますが、それほど強く促進されている訳ではありません。 例えば、仕事で失敗したことを上司に怒られるかもしれない! と思った瞬間、あるいは奥さんにだまって購入して、そっとしまっておいたゴルフの道具が見つかった瞬間など、心臓が「ドキッ!!」としますよね。 その瞬間「やばい!!」と感じ、「逃げ出さなくちゃ!」と本能的に逃走態勢に入ろうとする時に、交感神経は一瞬で心臓の働きを促進(①)させます。
逆に、一日のお勤めが終わり、風呂に入ってユッタリとし、そろそろ温かい布団に優しく包まれて休もうか…という状態では、副交感神経によって心臓の働きは抑制(②)されます。

このように、身の危険を感じると、心と体は本能的に「イカン! この体は何かしら大変だ! → つまり生死にかかわる問題か!? → 逃げる( or 戦う)必要があるはずだ!」と判断して、逃げる(or 戦う)ために全身の筋肉に酸素を送るべく、心臓の働きを促進(①)しようと、交感神経のスイッチをONにします。 
逆に、上記のような「イカン!」という状態でない場合、本能的に「もう安心…この体には危険が伴わなくなった → つまりユックリ休んでも大丈夫 → 体を休ませよう」と判断して、心臓の働きを抑制(②)(この場合は、高まった活動を、通常モードに戻す、というもの)します。

自分の意思ではどうにもなりません。 そんな自律神経にとって、長期間の強い精神的ストレスは、大敵です。
精神的なストレスは、常に交感神経が優位に働きますので、心臓の場合は四六時中ドキドキが続く、動悸として感じる、といった症状につながります。 交感神経が優位に働いていると、汗をかいたり、息が荒くなったりと、逃走(or 戦闘)と同じような状態になっている訳ですね。

まったくストレスのない生活は、それはそれで生物としての「強さ」の損失につながりかねませんが、やはりこのご時世、ほどよい程度のストレスでいいので、できれば穏やかに過ごしていきたいものですね^-^;

片足立ち持続時間の目安

2020年03月04日 | リハビリ・医療
今朝も、いつも通りに目覚め、いつも通りに朝食を摂り、いつも通りに朝の支度を済ませて一日を過ごし始めている方が、多くいらっしゃると思います。 いつも通りと違うのは、ここしばらく続く新型コロナウイルス感染症によって生活が激変しているところでしょうかね…。

明日もいつも通りの生活を過ごしていくためには、やはり病気やケガを予防し続けることが重要です。
たびたびお伝えしていますが、介護が必要になる原因には「認知症」、「脳卒中」などありますが、「転倒→骨折」、というケースも多いです。 特に、「転倒→骨折」は、「認知症」や「脳卒中」と違って、血管の病変が徐々に進んできた結果…というよりも、全身の筋力やバランス能力が徐々に低下してきた結果、ちょっとしたきっかけ(小さな段差、歩行中のちょっとした不注意など)で転んでしまい、打ちどころが悪くて骨折してしまう…というケースが多いようです。

徐々に全身の筋力やバランス能力が低下する…と書きましたが、何がどのくらいできなくなると筋力やバランス能力の「低下」となるのでしょうか?
筋力は、以前のブログで「下肢筋力」を簡単に測定する方法をお伝えしました。 今回は、バランス能力を簡単に判定する方法をお伝えいたします。

日本整形外科学会は、高齢者で、歩行・移動の能力の低下のために転倒しやすい、あるいは閉じこもりとなって日常生活での障がいを伴う疾患のことを「運動器不安定症」と提唱しました。

運動器不安定症の診断基準のうち、運動機能として「開眼片脚起立時間:15秒未満」、または「3m Timed up-and-Go Test(TUG) : 11秒以上」と具体的な数値で示しています。

今回は、この2つのうち、「開眼片脚立位」について、お伝えします。 実際にご家庭でも実施してみてください。 ただし、転んでしまう危険性がありますので、くれぐれも気をつけて実施してくださいね。
TUGについては、また後日、お伝えします。



●靴、または素足で滑らない配慮のもと、しっかりした床の上で行います。 転びそうになったらすぐにつかまれる物のそばで実施します。 万が一に備え、誰かに支えてもらえる状況でも結構です。
●両手を腰に当て、片足を床から5cmほど挙げ、その姿勢で立っていられる時間を測定します。 大きく体が揺れて倒れそうになるか、立っていた側の足がずれてしまうか、挙げた足が床に接地するまでの時間を測定します。
●1~2回練習してから、左右それぞれ2回ずつ測定し、最もいい記録を選びます。 最長で60秒程度できればそこで終了してもらって結構です。

同ホームページ内で基準となる時間を提示しています。 埼玉医大の坂田先生の調査(2007年発表)を紹介し、各年代の平均値は次の通りでした。
・60歳代 平均44秒
・70歳代 平均31秒
・80歳代 平均11秒

また、転倒した人達のうち、75歳の男性は平均18.4秒、女性は平均16.8秒でした。

運動器不安定症の診断基準として挙げられたカットオフ値(正常値と異常値の境界値)の15秒は、坂田先生の調査結果に相当する値であった、としています。

日本整形外科学会のホームページで、以上のことを紹介しています。 興味のある方は、一度ご覧になってください。 こちらから移動できます。

片脚立位、いわゆる片足立ちは、診断にも使えるテストであり、同時に繰り返し行うことでバランストレーニングにもなります。
安全な環境を整えたうえで、毎日少しずつ片足立ちトレーニングを実施することも、転倒予防の一つとなりますね。 ご無理のない範囲で、コツコツ実施してみてください^-^