ちょっと資料室行ってきます

自分好みの情報をおくためだけのブログです

「漢検」に受検の価値なし 2009.4.26 03:44

2009-10-27 | 産経新聞に見る:古典個展
 近ごろ楽しませてくれたヒットニュースは、漢検問題であろう。

 漢字能力検定協会とやらが何十億円という収益をあげ、それを本来ならば公益的な事業に還元しなければならないのに、なんと幹部が私腹を肥やした疑いがあると伝えられている。

 では、なぜ同協会が公益的でなくてはならないのかと言うと、財団法人であり、優遇されているからである。例えば、預貯金すると、その利子は非課税だ。われわれ庶民は預貯金しても、低金利なのでそれこそスズメの涙ほどの利子しかつかない上に、利子に課税されて引かれている。

 となれば、同協会が財団法人の名に隠れて、私腹を肥やすなんてとんでもないことではないか。

 というわけで、やじ馬にとって漢検の悪事ニュースは楽しませてくれているが、真の問題点は、彼らのゼニカネよりも、もっと他のところにある。

 それは、漢検の出題問題の内容とはどういうものであり、また受検するだけの値打ちがあるのかどうかという点である。

 結論から先に言おう。ほとんど意味のない出題である。もちろん受検するだけの価値はない。

 私は中国学の専門家であり、漢字問題についても一家言を有している。その立場からの発言だ。

 漢検の問題のほとんどは、漢字の知識テストにすぎない。知っているかどうかを問うだけのことである。テレビのクイズ番組と同じで、典型的な知識尊重だけであって、応用とか、それを通じてものごとを考える力を測るとかといった、真の国語力養成につながる出題ではない。


 だからちょっと応用がかかるとすぐ転んでしまう。漢検ファンに質問しよう。よろしいか。例えば、次のことばの□に最も適当な漢字を補え。「北□四九」。できるかな?

 正解は「本」。なぜなら、北海道・本州・四国・九州よ。これ、慶応の小学校入試の過去問。

 去年だったか、首相は漢字が読めないと言って、多くのメディア関係の者がさんざん悪口を言っていた。しかし、その人たちの99・99%は次の語を誤読している。例えば「稟議書」。よくこれを「リンギショ」と読んでいるが、正しくは「ヒンギショ」。「稟」には2種類の音があり、「倉庫」の意味で使うときは「リン」、「申し上げる」のそれは「ヒン」と読む。だから、リンギショと読むと倉庫について議論しようということになるではないか。漢検合格者の多くも、おそらくリンリンリンと読んでいることであろう。

 さらに言えば、出題の花形である四字漢字熟語など、知っているというだけでは意味がない。漢字や成績の意味の理解から一歩進めて、文章を読むということが大切なのだ。漢字の知識の端くれをあれこれたくさん覚えるよりも、一行でもいい、いい文を読む、古典の漢詩漢文を読むということに価値があるのである。

 例えば「巧□令色」とあると、漢検受検者は反射的に「言」と補うことであろう。しかしそれだけでは意味がない。巧言令色(こうげんれいしょく)だと「鮮(すく)なし仁(じん)」となるぞという『論語』学而(がくじ)篇の主張を理解することが大切。それがなかったから漢検幹部どもは文字通り「巧言令色、鮮なし仁」となってしまったではないか。(かじ のぶゆき)

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/media/090426/med0904260346000-n1.htm

最新の画像もっと見る