白琥・白龍

捜猫記~八ヶ岳 海ノ口自然郷で猫を捜した1ヶ月~からはじまるブログ、
猫と絵と、そのほかと。

15.邂 逅

2011年10月03日 | 捜猫記
11時まえに小淵沢に着きました。
駅の売店で、
お弁当や、来週山の家にまた来る両親に置いておこうと、黒玉(知ってます?)や馬肉ジャーキーなどを買い
駅レンタカーで車を借りて

「山のお野菜とお水を持って帰ってきて」という娘からのミッションにより
大泉で野菜を買い

先回の反省から野辺山でビールとワインも買って

山の家に着いたのが午後2時近くだったかと思います。

おとなりのすみこさんに、つきましたーと電話すると
「IZAさんの文子さんが明日お帰りになるから、夜、うちでご飯なの、一緒にどう?」
といってくださいました。
びゃこたんが登ったベランダの階段の下に、
また来てよいようにと、カリカリ(猫のご飯)を置いてくださっていました。

びゃこたん目撃のIKさんにも、
来ました!とケイタイに電話しました。
東京から奥さまがおいでになるのを小淵沢まで迎えに行っていらして、お家は留守でした。

「おみやげに、お菓子とお野菜とビールもってきました!」と申し上げたら
なんと、わたしにと、わざわざ清里で洒落たクッキーなどを買ってきてくださいました。
なんていい方なんでしょう。

家をあけ、荷物を家に上げ、落ち着いた4時すぎから
IKさんのお家にお届けものがてら、まわりをぷらぷらと廻りました。
今回はあまり大きい声で呼んで歩かず、
ときどきちょっと呼んでは、立ち止まったり、すこし待ったりしながら歩きました。

テキは、7キロも山を上下して徘徊しているのです。

こちらが大声で呼んで歩いていたのを聞きつけて
もし彼が一筋か二筋下の道で
じっと考えてから、わたしの声のするほうに上がってきても
すでにそこにわたしはいなかったりするわけです。


考えてみたら、やっぱり、そんなに簡単なことではないのでした。



でもわたしは悲観的なきもちにも、楽観的なきもちにもなりませんでした。


もう一度ここに来て、
自分で納得したかったのかもしれない 
と思いました。


暗くなってから家に戻りました。
もう9月、
いまは週末なのでまた入荘しているお家もありますが
先回よりはだいぶ、別荘地は暗くなっていました。


7時ごろ、すみこさんがよんでくださり
IZA家の文子さんと、いろいろなものをいただきました。
お酒もいただきました。
揚げたての天ぷらがいっぱい!わーい。
すみこさん お料理上手なのです。

すみこさんちの猫タンタンくんは、おみやげのササミジャーキーが気に入ってくれたみたいでした。

すっかり遅くまでおじゃまして、文子さんとご挨拶して
笹のなかをガサガサ隣に帰りました。

前日よく寝ていなかったので そのまま寝てしまいました。
こわいけれど、
もしかして帰ってこないかと
戸をすこし開けたまま眠りました。
もちろん、ベランダには猫のご飯をおいてあります。


目がさめたのは3時ごろだったでしょうか。
まだ、空は真っ暗で 
やっぱり今夜も、からまつのこずえのここかしこに
星が果物みたいに大きくみずみずと輝いていました。
月はもう沈んでいます。
まだなんとなく こわい時間でしたが
お向かいのお家に灯りが点いていたので、それに励まされるように
気持ちを奮いたたせてびゃっこを呼びました。

今回はわたしは家から動かずに、
家から全方向にむかって
明るくなるまで 2時間ほど呼び続けました。


そのあと 
やはりそれなりにメゲた気持ちになったので
ワインで朝酒、朝飲みしてふて寝。
お昼すぎまでは、ぼんやり、寝たり起きたり ご飯を食べたり
本を読んだりして

もう明日の朝に帰ろうかなあ などと思ってみたり



でも4時ごろ、ふたたび気を取り直して
しゃっきりと着替え、まずF地区のTGさんのお家まで登っていきました。
あちこちで工事や造成の機械の音がします。
でも5時にはみんな撤収していきます。

TGさんのお家のまわりは、なんとなく気になるところなのです。
TGさんはお留守でしたが
呼びながらそのへんを2周ほど廻り
足のむくまま、K地区のお屋敷のような別荘の間を歩き
またぼんやりとF地区に戻りました。


黄昏の気配が近づいてきています。

F地区からメインの通りまで戻り、
そこで、
一筋下の道のほうが可能性があるように思いましたが
なんとなく、S地区のほうにぶらぶらと行きました。

ちょっと呼んで
なすすべもなく立ち止まり 見廻して
また歩き

ちょっと呼ぶ。

小さい流れの向こうにあるお家から、賑やかな話し声や
犬の声がきこえてきました。

またちょっと、立ち止まり
「びゃこたーーーーん」と呼んでみました。


ちょっと待って!!

猫の声がしないか?

びゃっこの、あの、かわいい声ではないけれど
におー、におー、におー、におーというかすかな声。

猫がいる!

声は、小川のある並びと道を挟んで反対側の並びの
山小屋ふうの家の敷地のなかから聞こえます。

「びゃっこ?
 おかあしゃんだよ?」

また、におー、におー、におーと
かすかに聞こえてきます。

誰もいない閉ざされた向かって「失礼します!!」と言って
わたしは家のほうへ、敷地の入り口からの径(こみち)に踏み入りました。

「びゃっこ?」

すると、玄関の左奥のバルコニーの登り口の階段のなかばに、
細くなっているけれど、まぎれもない白琥が
いまにも逃げ出しそうな不安定な様子で
こちらをむいて座っていました。


心臓が、ぎゅうっ、と冷たくなりました。



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14.4度目の目撃は 神さま!お隣のお家でした!

2011年10月03日 | 捜猫記
2011年9月8日。
この日は仕事を2時に切り上げさせていただいて
娘と待ち合わせて東京体育館まで姉弟子の試合の応援に行きました。

その間も
レンタカーの値段を調べてみたり
はたまた中央線の時刻表を眺めてみたり
予定表をためつすがめつし

それでも決心はつきません。

試合のあと、伊勢丹に寄り、娘の新しい登校用の革靴を買い、
それから山に持っていくお礼のお菓子も買い

帰宅してからは、
また山に行くかもと、出したままだった荷物の中身を見たり。
買ってたお菓子を、その荷物に入れたり、出したり。

「もし車なしで来るなら、うちの妻の軽自動車をつかっていいですよ。」
とIKさんはおっしゃってくださいました。
(なんていい方なんでしょう(T_T)!)

でも、決心がつかないまま、9時になりました。


だって、口に出しては言いたくないけれど 
もし出会えたとしても
彼に帰る気がなければ連れて帰ることは不可能に近いのです。
それに相方の様子を見ていても、
白琥がもうわたしのこと忘れている可能性だってあります。だって猫ですから。
「猫は野生化してしまうのは簡単だから」と言われてもいました。


どうしようかなあ…



その夜の忘れもしない10時半ごろです。
家の電話が鳴りました。
局番は野辺山の番号。
「もしもし!」
と山の家のお隣のすみこさんの声でした。
「いま、うちにびゃっこちゃんが来たわよ!!!!」


いまこれを書いていても、この電話を思い出すと涙が出てきます。

お隣のだんなさまがリビングのソファに座っていらしたら、
ベランダの階段を白い猫が登ってきて、
だんなさまのほうをむいてガラス戸の外に座ったそうです。
「白い猫ってきいてたけど、頭が黒かったよ」
とだんなさま、
さっと、行ってしまったそうですが
そうです!それは間違いなく白琥です!!!!


前日の夜、7キロ近くも下の牧場の原っぱで駆け回っていた白琥が
奇跡のように、
一日かけてまた歩いて登って戻ってきたのです!

そして、あきらかに人のいるお家を、一瞬にせよ、階段を登ってまで
のぞいたのです。

やっぱり、行こう!

「すぐ行きます、あした行きます!」

わたしは電話を切るなり、すごい声でうわあーーーっと号泣しました。
娘がビックリしてこっそり覗いていました。

ママ、やっぱり明日から日曜日まで、行って来る。よろしくね。
眼科の視力の検診や、お稽古、教会の中学生会なんかがあるけれど
ひとりでだいじょうぶだよね?



そしてもうひとつ、どういうわけかわたしが
「見つかるかもしれない」と思ったことがありました。
それは、月齢、月の大きさ。
彼が家出した夜の月齢に近くなってきていたことです。


その晩、わたしは少しだけ寝て、3時半に起きて荷物をまとめ始め、
今回も40分かけて鶏のササミのジャーキーを焼きました。
いつもの通り5時すぎからは朝の支度をし、
7時に始業式に行く娘を送り出してから
すぐに新宿駅に向かいました。

あんまり気がはやったので、ケイタイを忘れてしまい、
バスを途中で降りてタクシーで戻り そのまま折り返し恵比寿駅まで行きました。

新宿駅で、レール&レンタカーで往復の切符と
小淵沢からのレンタカー3日ぶんを手配しました。
3時間まえからなら予約できるそうで、これだとJRの切符が少し安くなるのです。

昨日、山に行くと電話したら母が
「よそさまの車をお借りして、夜、まっくらな牧場なんかに行って
 捜しながらよそ見して脱輪なんかしたら、申し訳ないわよ。
 最近は鹿だって多いからぶつかったら、軽だったら壊してしまうわ」
と言ったので、
やはりIKさんにお借りしないことにしたのでした。

ホームの売店で熱いコーヒーと小さな甘いものを買いました。
朝8時半のあずさ。
小淵沢まで2時間です。

席に座って、
コーヒーと甘いもので落ち着いたころには
あずさは、立川を通り過ぎようとしていました。
猫の神さま。お願いします。

そして、聖アントニオのメダルももちろん、首に懸けてきています。

すこし、眠ることにしました。
2011年9月9日。
まだ暑いけれど 気持ちのよい朝です。
いまわたしは、中央線特急あずさで
ふたたび八ヶ岳に向かっています。


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