拉麺歴史発掘館

淺草・來々軒の本当の姿、各地ご当地ラーメン誕生の別解釈等、あまり今まで触れられなかっらラーメンの歴史を発掘しています。

辨麺(バンメン)とはこれだ!?

2019年12月30日 | ラーメン
横浜を中心とした老舗中華料理店に存在する謎メニュー
「辨麺(バンメン)」。一挙紹介‼

※リンク先は原則ラーメンデータベース。写真はすべて管理人撮影
※2017年12月29日UP。2020年1月閉店情報などを追記


 辨麺ってなんだ? ベンメン ではない。「バンメン」と読む。
 一言で言えば「うま煮そば」あるいは「野菜餡かけ麺」、「広東麺」。断っておくが、汁なし系(まぜそば)の「坢麺」とは全く別物である。
 広東麺などと呼べばいいのだが、なぜか「辨麺」というメニューで提供する店が横浜を中心とした老舗の店にある。というより、老舗の店にしかないのだ。
 以下、記述時点で提供している店(2017年12月29日。価格も)を紹介していこう。

 実は、辨麺提供店、横浜の山手・本牧地区に結構集中している。
 
 まずは奇珍楼。大正7年創業。実に平成29年現在で100年という、相当な歴史を持つ店。「バンメン」は800円。この店の特徴は、全体的に甘い味。他の品も含めて何度かいただいたが、正直、甘すぎるきらいはある。甘い物は貴重な時代の名残という人もいるが、お店の人のインタビュー記事でも正確には分からない。

(横浜・奇珍楼のバンメン)

奇珍楼より少し山手駅寄りにあるのが三渓楼。創業は昭和7年、バンメンは750円也。
 
 本牧通りを本牧方面に進んで、少し脇にあるのが華香亭本店。創業はなんと明治41年である。バンメンは850円。時が止まったような店で、毎年10月から11月にかけて長期の休業に入る。そして、この店にはちゃんと広東麺もある。そうした店はいくつかだがあるので、「広東麺=辨麺」ではないのだ。ここらあたりがややこしい。
 
 (横浜・華香亭の店内)
 
 さらに本牧方面に進んだところに玉家がある。日中友好食処、と掲示されていたのが面白い。創業は大正13年。此処では「辨麺」で900円と少しだけお高い。

 (横浜・玉屋の看板)
 
 埠頭近くに「マリンハイツ」という小さな団地がある。1階にいくつか中華料理の店がテナントで入っていて、そこに 榮濱樓 がある。創業は、おそらく団地が建設された昭和50年代だろう。結構な「場末」感で、辨麺目当てだから行ったが、そうでなければ、という感じの店。此処には咖喱辨麺という、おそらく世界にここしかないであろうメニューがある。結構、辛い。

 

 次は坂を下りて、弘明寺方面へ向かう。
 弘明寺商店街の中ほど、一際レトロな中華店が目につく。「レトロの店で中華なんたら」と古い建物を逆手に取って店頭でアピールしているのが廣州亭。若い女性などはちょっと引いてしまうような店構えだ。バンメンは600円也。
 
 伊勢佐木町には、「生碼麺」発祥の店と一部で言われている玉泉亭がある。創業は大正7年。生碼麺発祥に関しては、中華街の聘珍樓であるとか、先に触れた奇珍楼という説もあるが、今となっては分からないし、謎のままでいいのかとも思う。脇にそれたが、玉泉亭のバンメンは860円。この店では「ウリ」の一つで「おすすめ」メニューになっている。玉子焼きが乗っているのが特徴。ちなみにここでも広東麺併売だ。


 (横浜伊勢佐木町・玉泉亭本店のメニュー)
 
 もう一店。伊勢佐木長者町駅と阪東橋駅の中間あたりを南下したあたり、これまたレトロな外観のコトブキ亭がある。創業はおそらく昭和30年代半ば。此処のバンメンは700円。この店は「五目うま煮そば」を併売。おかみさんにバンメンの由来を尋ねたが「わかりません」とのことだった。小さく古いお店だが、家庭的な店で居心地が良かった。
 
 野毛地区には中華料理 萬福がある。此処は「ばんめん」で600円。創業は昭和43年。此処も小さい店だ。実はボクが「バンメン」を初めて喰った店が此処。以来、嵌ったというか、興味を持ったわけだ。
 
 日本最大の中華街、横浜中華街。あれだけの店があっても辨麺を現在提供している店はほぼ存在しない。現時点で確認できたのは二店だけ。關帝廟通りにある清風楼である。創業は昭和20年の、さほど大きくない店である。此処では「辨麺」で1,150円。汁がかなり少ないタイプ。ちなみに、写真を撮ろうとしたら「ご遠慮ください」とのこと。過去にトラブルがあったとのことだった。
 
 その清風楼の向かって右にある店が 広東料理 聚英。此処は以前「坢麺」と称していた「蟹肉辨麺」がある。「蟹肉のあえそば」と併記されている。坢麺にしては汁が多いし、辨麺だとしたら汁が少なすぎる。微妙な一杯ではあるが、優しい味でボクは気に入った。なお、この店は2001年創業である。
 
 京浜急行線の戸部駅近くにあるのは迎賓楼。創業は昭和20年代前半から30年代初めにかけて。おかみさんに確認したがよく分からないと仰る。この店は「三鮮弁麺」、750円。三鮮、とは「肉、魚介、野菜」の中国料理を指す。此処、やたらネギが多くて、餡がほぼなくて、他の辨麺とはまた違う。この品を頼む客はほとんどいないとのことだった。
 
 東急東横線反町駅近くには神奈川翠香園がある。中華街の、創業が大正末期とされる(ただし中華菓子店として)同名店の親戚筋(翠香園。こちらには辨麺はない)で、店自体は昭和27年に開業したそうだ。此処の「バンメン(850円)」はスープが少ないタイプ。玉泉亭同様、おススメニューに挙げられている。
 
 大口駅あるいは京急子安駅から徒歩圏にあるのは宝明楼 大口店。残念ながら、此処はまだ行ったことがない。創業時期も情報がなく分からない。此処は「弁麺」で650円。

(横浜・伊勢佐木町 コトブキ亭のバンメン

 此処まででわずか14店。

 かつて、聘珍樓でも提供していたというし、中華街から少し離れたJR根岸線石川町駅近くの旭酒楼(創業明治43年)では「賄い」としてあった、との記録もある。ただ、旭酒楼の店の人に聞いたが「そんな話は知らない」と一蹴されてしまった。
 
 このほか、野毛の會星楼(2019年閉店)。今では「うま煮ソバ」になってしまったが、かつての名称は辨麺だったという。確かに実食すれば、うま煮ソバと辨麺の違いはまったく分からない。

 (横浜 野毛の 會星楼 ウマ煮そば
 
 さらに京急南太田駅を降りて坂をずいぶん登った場所にある小さい店、末廣。2011年まではメニューに「バンメン」があったそうだ。ボクは仕方なくタンメンを喰った。

 (横浜 南太田・末廣)


 都内でも数少ないがあるにはある。


 例えば、日本橋横山町にある「大勝軒」。大正13年の創業で、店構えは何とも風格がある。此処は「バン麺」。ただし、あまり出ない様で、ボクが「バンメンください」と言ったら怪訝な顔をされた。この店は、いわゆる「日本橋大勝軒」と呼べれる系譜の店で、この系統の店にいくつか「辨麺」を出す(出していた)店がある。

(日本橋横山町・大勝軒のバンメン
 
 三越前の「中華料理 大勝軒」(1933=昭和8年創業)。詳しくはここを読んでほしい。メニューには記載がないが、「うま煮そば」を注文したら、お店の人が「バンメン」と言った。経緯を聞いたが要領を得なかったが。※2019年4月、残念ながら閉店してしまった・・・

 また、小伝馬町(日本橋本町)日本橋大勝軒はかつての「日本橋よし町」の復活で、2017年3月に開業した(現在は屋号変更して『HALE WILLOWS』)此処もまた人形町大勝軒の流れを汲む店で、正統派の「辨麺」を出す店だ。
(そのほかの地区 は近日UP予定)



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