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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

櫻の園

2002-07-13 | 演劇
チェーホフの最後の戯曲が、明治ヴァージョン@信州に潤色され(堀越真)、栗山民也・演出で上演された。シェイクスピアの場合は、時代背景を変えたり無国籍風にしたり、自由な解釈・演出でコンテンポラリーなアプローチは当たり前のことだから、チェーホフだって、、、と、寛大な気持ちで開演を待った。まず、私の勝手な想像を裏切ったのは舞台装置。信州の大地主の屋敷だから洋館もありだが、これじゃぁ、オリジナル通りロシアと言われても肯いてしまう。「夜明け前」の堂々たる庄屋風とまではいかなくても、和風家屋を期待していた私としては、第一のアレ?

だから、着物姿の俳優の登場ではじめて、「ああ、これ日本なんだ」と思い至る。森光子(茅野麗子=ラネーフスカヤ)の取り巻きには洋行帰りということもあり洋装の人物が多かったが、なぜパリからご帰還の女主人は着物だったのだろう。当然、娘の綾子(アーニャ)と同じく洋装が自然ではなかったのかが、第二のアレ?

「櫻の園」だからって何も櫻を見せる必要はないのだが、せめてラストの櫻の樹の伐採音へ至る前に、科白以外で櫻の園をイメージさせる視覚的な補助が欲しかったのが、第三のアレ?


前回「櫻の園」を観たのは、1978年7月の日生劇場。アンドレイ・シェルバン演出による劇団四季の公演だった。24年も経ったが、白い紗幕を効果的に使い、室外・室内の区切りも特別無い”白い舞台”は今でもよく憶えている。久し振りにパンフレットを読み返すと、シェルバンはピーター・ブルックの薫陶を受けていたこと。ニューヨークでの1977年の公演は、私が最も好きな劇場の一つである、リンカーンセンター内のヴィヴィアン・ボーモント劇場(半アリーナの奥の深い円形ステージ)であったこと。また、劇団四季初のチェーホフ劇だったこと等が判っって興味深かった。登場する殆んどの人物がてんでバラバラで、感情同化も移入も不能な「櫻の園」。これこそまさしく喜劇。「さよなら古い生活」、「ようこそ新しい生活」。社会(経済)の変革の中での人間の営みをクールに描いたチェーホフさんは、やはり只者じゃなかった。栗山さん。終幕の「あと20分で汽車が出る」の科白の後、幕が閉まるまで何分かかりましたか?チェーホフ先生もこれだけは気にしていたみたいですから。(2002-7-13 butler)



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