【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

現代の探検家《田邊優貴子》 =12=

2016-11-09 16:19:33 | 冒険記譜・挑戦者達

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第5回 風の谷の湖 =1/3= ◇◆

  目の前には青白い氷河をいくつも抱いた茶色く険しい山が迫っている。 足元は一面の氷の世界。見上げれば、空は驚くほど透明で真っ青。雲は一つもない。

 「なんて美しいのだろう・・・」

 本当はそんな感じで静かに感慨に浸りたいのだが、そんな優雅な時間はなかった。

 ゴゴゴーービュオーー・・・
 ブィーーン・・・ガガガガガガ・・・ブィーーン・・・

 調査1日目。 驚くほど冷たく強い風が山の上の氷河から吹き付けてくるなか、私たちはアイスドリルのエンジンを全開にして、湖の氷に穴を開けていた。

アイスドリル

 ここは南極大陸の沿岸から120kmほど内陸にあるアンターセー湖。 湖面の標高は600mほどだが、周囲を標高約3000mの山々が取り囲み、湖は広いU字谷になっている。山の上には2つの氷河があり、その向こうには大陸氷床が南極点まで延々と続いている。氷床で冷やされた重い風が、その2つの氷河から山の斜面を勢い良く滑り降りてくる。 おかげで、アンターセー湖にはいつも2方向から強い風が吹き下ろし、決して止むことがない。

 アイスドリルの先に付けるドリルビット1つの長さは1m。それで湖面の氷を掘り進み、もう掘れないところまでいくと、次のビットを付け足していく。このときすでに3つ目のビットが氷に埋もれそうで、つまり、深さ3mに差し掛かっているところだった。

 氷が固いせいで、1m掘るのに15分~20分かかる。その間、2人がかりで重いアイスドリルを氷に押しつけ、削れた氷の粉がたまってきたらドリルを引き上げて排出する、という作業を幾度も繰り返す。 とにかく、かなりの重労働だ。

「オンナコドモの仕事じゃあないね、これは・・・」

 なんて思いながら、私はアイスドリルを握りしめていた。対面でドリルを握っているのはデイル。 彼の身長は185cm、体重は100kg。 身長170cm、体重50kgの私がいくら体重をかけてドリルを押しつけても、到底彼には及ばない。なんというか、ものすごい不公平感が胸に芽生えてくる。

 ちなみにデイルの靴のサイズは33cm。「えぇっ・・・33cm?! そんな靴って普通に売ってるの?!」と初めは思ったが、我がチームメンバーの一人であるブラジミルの靴のサイズも全く同じ33cm。おかげで、愛すべきオトボケもののブラジミルは、デイルの防寒靴をよく履き間違えて、デイルが「ブラジミル! こらーっ」と叫ぶシーンを度々目にしていた。


 さらに補足だが、ブラジミルは身長186cm、体重98kg(自称)、デイルと似たようなサイズ感だが、デイルと違って結構お腹が出ているせいで、“お腹の中には双子がいる”とからかうのが我々のなかで定番となっている。言い出しっぺは私らしいが。

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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