○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
新たなピラミッド像を追って、エジプト考古学の魅惑の世界=河江肖剰=
= Webナショジオ_“河江肖剰-新たなピラミッド像を追って”より転載・補講 =
☠ 発掘調査と先端技術によって、古代のピラミットの実像に迫る ☠
◇◆ 第四回 ゴミの山は宝の山 = 3/3= ◇◆
封泥は語る
発掘はやはり大変だった。 表面だけにゴミが堆積しているという心配はすぐに消え、出土した遺物の記録に追われ、いったいどこまで掘れば、ゴミがなくなるのかという心配に変わった。 出てきたのは、ビールを入れる壷の大量の破片(じつに60パーセント以上)、大量の動物の骨(それも10カ月以下の仔牛)、大量の炭(90パーセント以上がナイルアカシア)、石製の道具、銅製の釣り針、ファイアンス(釉薬の施された陶器)のビーズ、そして、2500もの封泥だった。
私たちは来る日も来る日も記録に追われた。 倉庫で働く遺物の専門家たちも「もう出土物を送ってくるな」と冗談を言うほどだったが、そんな中、封泥の専門家ジョン・ノーランだけは狂喜して「もっと掘れ!」と叫んでいた。 彼はピラミッド・タウンの封泥の研究で博士号を取ろうとしていたが、それまでの17年間で発見された703個の封泥は、異なるエリアの、異なる層から出土していたために、包括的に理解し、意味づけするのが非常に困難だった。 しかし「土器の丘」から出土した封泥によって、ようやく研究をまとめるめどが立ったのである。
実際、ジョンの封泥の解読によって様々なことが示唆された。まず、この大量のゴミの山は隣接する邸宅「ユニット1」から来ているようだった。 なぜなら、〈王家の教育に携わる王室文書の書記〉という称号が、この2つのエリアから発見されたからである。これは王子と直接関わる人物に与えられる極めて珍しい称号であり、この称号を持つ人物は、現在では一人しか知られていない。それは有名な書記の一族の一人であるセシェムネフェル2世という人物だった。
実はこれまで、ピラミッド・タウンでは、そこに住んでいた人物の名前がわかる遺物はひとつも出てきていなかった。 先に述べたように、パピルスのような文字資料は残っておらず、発見されていた封泥も、人物名を記しているものはなかったためである。しかし「土器の丘」の発掘と、封泥の発見、そしてその書かれたヒエログリフの研究によって、初めてピラミッド・タウンに住んでいた人の名前が浮かび上がったのである。
さらに封泥の分析によって、当時の王が持つ「ホルス名」という称号が、生きているときだけに使われ、亡くなるとホルス名は使われなくなったり、その一部が外されたりすることがわかった。
私たちが発掘した、これらの泥の小さな塊は、貴石からでは知ることができない、ピラミッド・タウンに住んでいた人の名前、そして、当時の王権についても語ってくれる、非常に重要な発見だったのである。
=資料・文献=
《河江肖剰》:考古学における新たな計測の可能性(その二)
3D計測としてよく知られているのがレーザー・スキャニングです。 1秒間に何万、何十万点ものレーザーを対象物に放射し、「点群」として形状を記録します。しかし、問題は、多大なコスト、そしてトータルステーションのように地面に設置して測るため、ピラミッドのような形状の計測を行うと、上部のデータが取れないということです。
この二つの問題を解決する技術として紹介されたのが、αUAVによる写真測量です。 これまで極めて困難だったピラミッドの超高解像度オルソ画像の生成や、そこから3Dデータを生成することも可能であり、ピラミッド建造に関する新たな情報が手に入るのではないかと期待しています。 さらに、通常のUAVとは異なり、αUAVの8枚構造のプロペラは、墜落事故による遺跡の損壊のリスクも大幅に減らしてくれるため、文化財の計測に向いているでしょう。
UAVによる写真測量は、ピラミッドだけでけでなく、『王家の谷』のような入り組んだワディ(砂漠の涸れ谷)の全域の3Dデータを造り上げたり、ギザの『ピラミッド・タウン』を定期的に撮影することで、サイト・マネージメントの一環としても役に立つでしょう。 おそらく、この技術は、エジプト考古学におけて新たな、スタンダードな計測方法になり得るのではないかと思っています。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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