覚醒

長いこと壁のシミとして生きてきたので、
その習性が染み付いてしまっているらしい。
自分の存在を認識されることは恐怖だった。
人々の関心の外にいられれば安心だった。
だから、
私を壁のシミ扱いする人にばかり惹かれてしまうんだ。
「ここにいることに気づいて欲しい。」
そう思うことが、
こんなにも苦しいと感じたのは初めてだった。
どうしたら人間になれるのか、わからない。
わかんないよ。

ROUND 3

暖簾「・・・・・・・・・。」
壁のシミ「・・・・・・・・・。」
暖簾「・・・・・・・・・・・・。」
壁のシミ「………あ、…あの、……すみません………。
・・・・・・・・・い、・・・・・・いいお天気ですね・・・・・・・・・・・・。」
暖簾「・・・・・・。」
（ヒラヒラヒラヒラ～、風に飛ばされて行く。）

完

ROUND 2

暖簾「………………。」
壁のシミ「………………。」
暖簾「・・・・・・・・・・・・。」
壁のシミ「・・・・・・・・・！！　・・・・・・・・・・・・。」
暖簾「・・・・・・！？　・・・・・・？？　・・・・・・・・・・・・。」
壁のシミ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
暖簾「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
壁のシミ「・・・・・・・・・・・・。」

ROUND 1

暖簾「……。」
壁のシミ「……。」
暖簾「…………。」
壁のシミ「…………。」
暖簾「……………………。」
壁のシミ「……………………。」
暖簾「・・・・・・。」
壁のシミ「・・・・・・。」
暖簾「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
壁のシミ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ゴング

口に出されたくらいで、
ひるむようじゃダメですね。
女だろうが、
男だろうが、
たいがい、腹の中なんてもんは、
まっくろです。

鮪の解体ショーは、
内臓を取り除いた状態から始めるんですよ。
そうじゃないと、臭くて、
とても見ていられないそうです。
築地に勤めてる友だちが言ってたから、
間違いありません。











って感じで、
平気で嘘つくから、私。