愛しのリビヤ

日本からの訪問者がそれほど多くないリビヤに滞在する機会を得た。そこでその経験を記録することにする。

リビヤの1日

2003-12-13 16:40:04 | リビヤ
リビヤの一日としたが、何を書けばよいのやら。ということで、このような大上段に振りかぶったテーマではなく、小生の代表的な一日を書くことにしたい。
そうはいうものの、さて代表的な一日とはどのように定義づけすればよいのか。こちらへきた当座のことか、いやいや最も平均的な一日をいうのか、はたまたロンドンが夏時間から平常時間に戻ってからをいうのか。リンダ困っちゃう。てなことで困っていてもしようがないので、ここは記憶に新しい近時点にする。てなことで、昨日のことを書く次第である。
昨日、すなわち平成15年12月12日の金曜日である。何度もいうが金曜日は休日であるからして遅く起きても差し支えないのだが、習慣とは恐ろしいもので8時前には目が覚めちゃうのである。特にこの日は前日からの強風が終息せず、バタンバタンとどこかの扉の開閉の音で6時には目が覚めてしまった。これ以上眠ることを断念した小生は起床することにした。この時期外は真っ暗である。起きるとまずシャワーを浴びる。日本では師走も半ばであるが、ここではスッポンポンになって部屋を歩いてもさほど寒くない。従って、こちらへきてから一度も湯船に浸かったことがない。小生のようなカラスにはもってこいの気候風土といえる。

(洗面所)
サーッつと羽の汚れを落とすと、体を拭いてそのまま歯ブラシを咥えて部屋に戻る。歯を磨きながら着替えを済ませるまで10分とはかからない。半袖のシャツに半ズボン、サンダルを履いて、歯を磨きながらふとテーブルの上をみるとうっすらと白く埃が積もっている。ということは当然布団もそうであり、人間様も埃まみれにほかならないのである。風が吹いた日は必ずこうなる。リビヤの人達はこのような世界で過ごしているのである。変に感心したところで1階に下りる。
下りたところで何もすることがないので、休養室に行き、TVのスイッチを入れる。リモコンはTV用と衛星放送のチューナ用の2つがあり、どちらが先でもいいのだが、チューナのチャンネルをオンにして、TVの電源を入れる。暫くして画面が明るくなり、“カードをイニシャライズしています”との表示がでて、30秒ほど待つとようやく目的の画面になりTVを観ることができる・・・はずなのだが、はて一向に映像がでてこない。やがて、画面に“No Signal”の表示がでて受像不可であることを知った。
チャンネルを変えても結果は同じである。恐らく強風のためパラボラアンテナの向きが変ったことによるものであろうと判断し観ることを諦めた。

(手前が会議室、奥が休養室)
仕様がないので、インスタントのコーヒーを自分で淹れてメールの確認をする。そんなこんなで1時間程してからおもむろに事務所の入口のドアを開ける。と同時に犬が朝の挨拶にくるので暫く相手をしてやる。ふと玄関口をみるとタイルの上に赤い砂埃が一面に積っている。建物のまわりは木の枝や葉っぱなどが散乱しており明日の掃除は大変だろうとモハメッドに同情する。この時間は門扉の鍵はかかったままなので外に出ることはできない。
いつもだとドドンが洗濯をしている時間なのだが、この朝は強風のためまだ睡眠中とみえる。小生はまた休養室に戻り、TVを観ることができないのでチューリッヒの安売りセール(1500円程度)で買った旧版マトリックのDVDを休養室で見て2時間ほどつぶす。
10時過ぎにボンガボンが昼食の段取りに事務所に入ってくる。例によって、彼は休養室にあるサーバのところで彼の妻と連絡を取り合う。入れ替わるかたちで、モハメッドが来て電話を使わせてくれといってくる。強風のため使えないかもしれないが、試してみるように勧める。5分ほどして、矢張り通信不能の状態だったと彼から報告があった。そのうちにドドンも起きて来て、彼もパソコンで彼の家族と連絡を取っている。つまり、彼らの休日の午前は家族との連絡タイムとなっているのだ。小生はといえば、DVDを見た後、業務報告書を作成し電子メールで会社に送信した。ドドンは12時過ぎにM本社から出張中のSU氏をホテルへ迎えに行く。
S氏は11時半に起きてきて、メールの確認をする。もともと彼は夜行性であり、朝は弱い方であるが、今日はいつもより早い。彼もドアの開閉の音に起こされたとのことである。
12時半にSU氏がチベスティンホテルから出勤してきた。ボンガボンは下拵えだけしておいて温かいものは人の顔をみてからつくるので、今日は少し遅めの昼食である。この日の食事はきつねうどんと巻き寿司であった。寿司を一口で食べたところ、鼻の奥がつーんとして涙がでた。これまで寿司にわさびが入っていなかったで、油断していた上にサビが利きすぎる位入っていたのである。食後のフルーツとしてオレンジ。通常の休日の昼はもう少しお粗末なのだが、今日は来客がいるのでほんの少し豪勢である。休日の朝食はない。食べたければ各自がセルフで作らなければならないので、朝食抜きで済ますことが多い。
食後からS氏とSU氏は会社からのメールの確認および返信などを行っている。商社マンを身近でみていると、毎日メールに追われているような感じである。電子メールが発達して便利になったものの多忙にもなったというのが実感であろう。以前出張できていたSH氏によると、毎日200通余のメールが入るそうである。それというのも、直接関係しない業務であっても、CCで入信してくるためそのようになるとのことである。そのCCまで精査して記憶に留めるか、返信するか、はたまたゴミ箱入りにするか判断しなければならないので大変である。
小生はといえば、風が止んだ後犬と散歩にでた。小生は門の鍵を持っていないので、出るときは必ずモハメッドに告げることにしている。このときも彼に15分後に帰る旨を伝えて外に出る。散歩といっても決まった先はなく、思いつくまま犬の気の向くまま300m四方くらいをぐるっと回るのみである。今日は風が強かったせいか周囲は静かである。それでも数人のリビヤ人と会うので、「サラーマリク」といって通り過ぎる。彼らは顔に似合わず気さくで必ず挨拶を返してくれるが、先に言う方と答える方では言葉も異なるので何をいっているのか不明である。どうも「サラー」と言っているようである。車で擦れ違っても手を挙げてくれる。唯一困るのが子供達で、彼らは面白がって囃し立てるのである。もともと飼い犬が少ない上、犬と散歩をするという習慣がないせいであろうか。一回りしてから事務所の門脇にあるボタンを押してモハメッドを呼び出す。門を開けてくれた彼に犬のウンチ袋とリードを渡して本日の散歩は完了する。
  
(犬の散歩)                               (近くの公園)
この後、何もすることがないので、ドドンを誘って近くの店へ買い物に行った。このように運転免許がない日本人はいちいちドドンに用を足してもらわなければならない。
それはさておき、その店は車で10分の所にあり、輸入品も多く、我々のような異国の人もよく来るところである。そこはコンビニを少々大きくしたくらいの広さでかつ再々行くので、どこに何が置いてあるのかも頭の中にあり店員とも顔馴染みとなった。
入口に入ってすぐが、菓子類、乾物、ハムなどの食料品、奥が飲物及び雑貨品である。日常必要なものは大抵ここで入手できる。

(馴染みの店:建物中央の赤い棚の中にパンがある)
帰ってからは、これをしたためる。そんな時間があるのなら英会話の勉強でもしたらどうかって?ほっといて頂戴。そのために日本語の字幕がないDVDをみているのだから。おまけに衛星放送多チャンネルでやっているアメリカ映画でフランス語の勉強まで余儀なくさせられているのに。
そのうちに夕食時間の6時半が来てディナーである。準備ができるとボンガボンが呼びにきてくれる。今夜のメニューはSU氏がきているので、これまたいつもより少し豪華である。それを紹介すると、まず大根おろし添えの塩鯖、野菜炒め、だしまき卵、蒲鉾、胡瓜の味噌和えに味噌汁である。それにドドンのコネを使って、さるところから仕入れたアルコール入りの手作りビールである。食後のデザートにボンガボン特性のレチェプラン(ほとんどプリンと変らないがそれよりもやや硬い。フィリピンのデザートだそうである。)がでて食事は終りである。
  
(1Fのキッチンと食堂)
いつもであれば、休養室へ行きJSTVを観るのだが、先に説明したように観戦不能である。事務室に戻り、これまで撮り貯めていてボンガボンから頼まれていた写真をCDに収める。だらだらと時間を過ごして、10時には就寝。小生のリビヤの休日もこれで終わり。それより前の大体9時頃に入口の扉を閉めるのだが、来客がいるので10時近くになった。
と、ここまで書いてしまって、はたと気が付いた。休日を書いてもリビヤの一日といえるのだろうか。いや、リビヤの休日とは言えてもそうはいえないであろう。ということで、ここから先は休日を基点にすると明日の平日のことを書くことにする。わかった?詳しく説明すると、休日は金曜日であるから明日はあくる日の土曜日のことである。余計わからなくなった。分からなくても結構。それで大きく変化するような一日でもないのだから。よって、以下はこの日の翌日に書いたのである。従って今日はここでおしまいとする。