「しんがり」
清武英利著、講談社、2013年11月
読売巨人軍の元GM・清武英利氏による、山一證券の自主廃業を題材にしたノンフィクション作品。
元々読売新聞社会部記者だったそうで、取材力と表現力が素晴らしいです。
事実だけでなく会話まで事細かに記述されています。
そのためか、本のカバーにはどこにも書いてありませんが、
Wikipediaでは「小説」とされています。
2011年11月に巨人のGMを解任され、2013年11月に出版。
「あとがき」によると、山一OBの懇親会に参加し、
その後1年5ヶ月アンケートと取材を行ったそうなので、
解任後のほとんどの期間を費やしたことになります。
山一を自主廃業に追い込んだ歴代のトップや重役たちの行動を、
部下たちが徹底調査して真相究明する姿を描いています。
自分の金と名誉のために会社を食い物にしたトップの行為を調査する社員に、
読売でナベツネをコンプライアンス違反で告発し、
解任された清武氏自身の姿をダブらせたのかもしれません。
清武氏の取材だから答えた元山一社員もいたのではないかと想像されます。
前半は自主廃業までの経緯や当時の証券業界の実態について。
・客に損をさせてでも会社の利益を上げる
・体質法人営業部門出身者が要職を占有
・社員持株を推奨していたので、多額の個人資産を失った社員も続出(最高値からの換算で億単位)
など。
後半は社内調査の過程と結果について。
・飲食費やゴルフのプレー費などで年間総額5百万円を使っていた副社長
・大企業への損失補填や飛ばし
・山一に限らず証券業界では当たり前だった総会屋とのつながり
など。
本書に記載されている1990年代後半まで常識だった既得権益が、2020年ではあまり見受けられません。
日々の変化はさほど感じられませんが、10年単位のスパンで見ると、
ビジネスの世界も大きく変化していることを感じました。
いまは文庫化されています。
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