ストレングスコーチの個人的なトレーニング日誌&読書感想文

トレーニングについて感じたこと、また定期的に読んでいる専門誌の記事についてのコメントなども書いていこうと思います。

砂の中での動作;ビーチバレーのトレーニング

2006年12月31日 | Weblog
Movement in the Sand: Training Implicatios for Beach Volleyball

NSCA Journal v28,5,pp19-21

Smith, Robert


読書要約、感想文

砂の中での動作;ビーチバレーのトレーニング

要約
ビーチバレーというスポーツの特徴として、砂のうえでおこなうということがあるが、これは砂というサーフェイスが地面からの反力を体に伝えにくい、という点が注目すべき点である。これはすなわち、選手はより安定性やトリプルエクステンションを駆使する必要があるということなのである。バレーボールというのは生来パワースポーツであるが、高いパフォーマンスを発揮するためには、ビーチバレーと通常のバレーボールとでは非常にちがう動作を強いられる。砂への適応と、抵抗が硬い表面で動作を行う際とは違うものを要求するのである。また、ビーチバレーにおいては少ない人数でコートをカバーしなければならないという点もまた違う点として挙げられる。
砂の上でのトレーニングというのは、硬い表面に比べ、ずれたり、めり込んだりするといった要素が加わり、地面からの反力をうまく受けにくいのである。
砂の上でのジャンプを考えたとき、足関節における筋力発揮は地表の不安定により打ち消され、あまり得ることが出来ないので、トリプルエクステンションをフルに活用したジャンプ、スプリントが必要になる。砂の上でのスプリントはゆるい表面に対する普段以上の筋力発揮や、力の伝達の非効率さから非常に非効率的になる。体は足をミッドラインから後ろに蹴りだす時、ハムストリングスの股関節伸展における動員を増すことでこの非効率さに対応する。したがって、完全なビーチバレーに特異的なトレーニングをする際に不安定な表面上でのハムストリングスを用いた股関節の伸展を重視して行うべきである。
ビーチバレー用の股関節伸展を鍛えるのに非常に優れているのがバランスボールを用いたヒップリフトである。このエクササイズはファンクショナルでないポジション(立位ではない??)から行う機能的なエクササイズである。なぜなら、特異的な筋肉の動作を特異的な目的において行っているからである。
砂の上でトレーニングするということも砂の上で行うスポーツのトレーニングをする際は有効な方法である。MBを用いたリバーススクープトスを砂の上で行うのも良い方法である。スクープトスは研究でも垂直とびとの相関性が認められており、したがって良いトレーニングとなる。砂の上という不安定さが、足間接だけでなく、股関節を含めた全身のトリプルエクステンションを強調するのに非常によい。
効果的なビーチバレーのトレーニングプログラムを作成するにはジムと、砂の上でのトレーニングをともに行い、爆発的なハムストリングスを用いた股関節の伸展を強調してトレーニングすべきである。

感想;

この文章ではスタンダードのバレーボールに対し、ビーチバレーは特徴として、よりトリプルエクステンションを強調しなければならない、とあるが、果たしてそうであろうか?確かにスタンダードのバレーボールは足関節を中心とした動きだけでも動作できるかも知れない。しかし、より大きなパワーを短時間で伝える必要があるとき、足関節によるパワー発揮だけでは物足りない。むしろ、砂の上に近いくらいのパワー発揮のパターンでコート上でジャンプできれば良いと思う。しかし、コート上と砂の上での競技性の違いはむしろ急激なローディング、そして、複数のジャンプの際の体への衝撃をうまく2回目のジャンプに伝えるプライオメトリックス的な要素は砂の上では得られない。かつて、ソビエト連邦の選手たちは最大限のプライオメトリクスによる効果を得るために裸足でコンクリートの上でジャンプトレーニングを行ったそうである。
この砂という環境を考えると、位置エネルギーを用いた反力をあまり期待できない。したがって、地面に足が着いたままで伸張反射の起こるダブルニーベンド(DKB)の効果的利用が必要になると考えられる。これによって地面に接地している時間が長くなっても地面からの反力以外の部分で伸張反射の効果が得られる。それに対して、コート上のバレーボールではDKBを用いたジャンプに加え、よりクイックに飛ぶために地面の反力を積極的に利用する必要がある。したがって、コート上のバレーボールではビーチバレーで鍛えられる要素に加えて、股関節の伸展を積極的に含めた、トリプルエクステンションの伸張反射の要素を重視する必要がある。この文献では股関節の伸展は特にハムストリングスを協調する、とあるが、地面を押しながらの股関節の伸展を考えたとき、むしろ短関節の股関節伸展筋群、すなわち臀部の筋肉の機能に集中すべきかもしれない。ハムストリングスも当然使われるわけであるが、アクティブに使うことにより、股関節の伸展時の膝関節の伸展が阻害され、地面を押すのではなく、掻く動作になりやすい。
バランスボールを用いたヒップリフトは非常に面白いエクササイズである。確かに、股関節を伸展している際に不安定な足場で、体をさらに後ろに押すためのストロークを得ることが出来るかもしれない。しかし、本質的にはやはり、地面を押す動作がトレーニングとして必要であると考える。特に片足で地面に対して体重を押し出すランジの動作は非常に必要であるが、力をしっかり発揮できるレベルの不安定性の中で行うべきである。あまりに不安定な中でトレーニングを行うのはむしろ、モーターラーニングの見地からも逆効果であると考えられる。体に正しい位置にアジャストする能力を教育できないからである。むしろ、どちらかといえば安定よりなところでトレーニングするほうが良いと思われる。そして、経験を経るごとに少しずつトレーニングの中での不安定さを増せば(出力はあまり落とさずに)最終的に不安定な環境でも力を発揮できるように体のコントロールを強調させることができると考える。

いかがでしょうか??どう思いますか?