ストレングスコーチの個人的なトレーニング日誌&読書感想文

トレーニングについて感じたこと、また定期的に読んでいる専門誌の記事についてのコメントなども書いていこうと思います。

エリートラグビー選手におけるEMSを用いたトレーニングの筋力、パワーへの影響

2007年07月09日 | Weblog

Babault, N., G. Cometti, M. Bernardin, M. Pousson, and J.-C. Chatard. Effects of electromyostimulation training on muscle strength and power of elite rugby players. J. Strength Cond. Res. 21(2):431–437. 2007.


前書き:

EMSを用いたトレーニングは古くは旧ソ連の時代から行われてきたが、未だにスポーツパフォーマンスへの直接的な影響を示唆するまでには研究は進んでいない。その一方で、TVなどでは楽にトレーニングできるとEMSがもてはやされている。果たして、EMSは本当にスポーツパフォーマンスに好影響があるのであろうか?この研究ではフランスのラグビー選手に対しEMSを用いたトレーニングを施している。


要約(Abstract意訳):

この研究では12週間のEMSを用いたトレーニングをエリートラグビー選手に対して行った。25人のラグビー選手がこの研究に参加し、15名がEMSを用いたトレーニングをおこない、10名がコントロールグループとして、通常のトレーニングのみを行った。EMSは膝の伸筋群、足間接のPlantarFlexor、臀部の筋群に対して行った。最初の6週間は週3回トレーニングを行い、後半の6週間は週1回トレーニングを行った。-120度/sから-360度/sの範囲でアイソキネティックマシンを用いて膝の伸筋群の筋力をConcentric及びEccentricで測定した。また、スクラム筋力、フルスクワット、垂直跳び、スプリントのテストも行った。EMSを行ったグループにおいて、実験を開始して6週間後、スクワットの筋力のみが向上し(+8.3 ± 6.5%; p <0.01)、12週間後には-120度/sにおけるエキセントリックな筋力、120度及び240度/sにおけるコンセントリックな筋力の向上が膝関節伸筋群に見られた。また、スクワットの筋力(+15.0 ± 8.0%; p < 0.001)、スクワットジャンプ(+10.0 ± 9.5%; p < 0.01)、40cmからのドロップジャンプ(+6.6 ± 6.1%; p < 0.05)のスコアにおいて向上が見られた。コントロールグループにおいては変化は見られなかった。この12週間のEMSを用いたトレーニングでは筋力とパワーの向上がエリートラグビー選手に見られたが、パフォーマンスに特異的なもの、スクラム力およびスプリントの速さには変化が見られなかった。

感想

出来過ぎなくらいうまくいった研究である。ほかの研究でもやはり、短関節のトルクや、シンプルなエクササイズにおける筋力の向上は見られたものの、スポーツパフォーマンスの向上までには至っていない。しかし、今回の研究ではスクワットやジャンプにおける明らかなパフォーマンスの向上が見られている。特にスクワットジャンプなどは最大で20%位の向上が見られている。20%という数字はかなり驚異的である。元々の筋力がそこまでではなかったのかもしれない。これに関しては、さらに深い研究が必要であると感じられた。今回非常に興味深かったのが、スクワットの筋力やジャンプ(両足)の能力がスプリントやスクラムの筋力に影響を与えなかった点である。この筋力とパフォーマンスの関係についてはさらに研究を進めてゆく必要があると考えられる。逆にアジリティ能力について、筋力との相関関係がみられるのか?今後の研究に期待したい。