ストレングスコーチの個人的なトレーニング日誌&読書感想文

トレーニングについて感じたこと、また定期的に読んでいる専門誌の記事についてのコメントなども書いていこうと思います。

ハングパワークリーンのパフォーマンスの違いは走力、ジャンプ力、方向転換能力に影響をあたえるのか?

2008年04月21日 | Weblog
ハングパワークリーンのパフォーマンスの違いは走力、ジャンプ力、方向転換能力に影響をあたえるのか?

Does Performance of Hang Power Clean Differentiate Performance of Jumping, Sprinting, and Changing of Direction?

Hori, Naruhiro; Newton, Robert U; Andrews, Warren A; Kawamori, Naoki; McGuigan, Michael R; Nosaka, Kazunori

Journal of Strength & Conditioning Research. 22(2):412-418, March 2008.

一般的にパワーはスポーツにおいて非常に重要な要素であると言われている。これは多くの文献でも紹介されている通りである。しかし、具体的にパワーを表現するものが現場レベルで使えるものが少ないのもまた、事実である。
重量挙げのクリーン&ジャークから派生したエクササイズであるハングクリーン(ハングパワークリーン)はパワーを向上させるのに有効であると言われているエクササイズである。今回の実験ではこのハングクリーンがパワーを表現し、他のスポーツパフォーマンスとどのような関係にあるのか?を測定している。
以下原文
The primary purpose of this study was to investigate whether the athlete who has high performance in hang power clean, a common weightlifting exercise, has high performances in sprinting, jumping, and changing of direction (COD). As the secondary purpose, relationships between hang power clean performance, maximum strength, power and performance of jumping, sprinting, and COD also were investigated. Twenty-nine semiprofessional Australian Rules football players (age, height, and body mass [mean +/- SD]: 21.3 +/- 2.7 years, 1.8 +/- 0.1 m, and 83.6 +/- 8.2 kg) were tested for one repetition maximum (1RM) hang power clean, 1RM front squat, power output during countermovement jump with 40-kg barbell and without external load (CMJ), height of CMJ, 20-m sprint time, and 5-5 COD time. The subjects were divided into top and bottom half groups (n = 14 for each group) based on their 1RM hang power clean score relative to body mass, then measures from all other tests were compared with one-way analyses of variance. In addition, Pearson's product moment correlations between measurements were calculated among all subjects (n = 29). The top half group possessed higher maximum strength (P <0.01), power (P < 0.01), performance of jumping (P < 0.05), and sprinting (P < 0.01). However, there was no significant difference between groups in 5-5 COD time, possibly because of important contributing factors other than strength and power. There were significant correlations between most of, but not all, combinations of performances of hang power clean, jumping, sprinting, COD, maximum strength, and power. Therefore, it seems likely there are underlying strength qualities that are common to the hang power clean, jumping, and sprinting. 以下意訳

この研究の目的は一般的なウェイトリフティングエクササイズであるハングパワークリーンにおいて高いパフォーマンスを示す選手が、走力、ジャンプ能力や、方向転換に置いて高い能力を示すのか?ということを考察する事である。また、2次的な目的として、ハングパワークリーンのパフォーマンスと、最大筋力、ジャンプ力、走力、方向転換能力の相関性についても調べた。29人のオーストラリアルールフットボール選手が被験者として選ばれ、それぞれのハングパワークリーン、フロントスクワットの1RM、40kgのバーベルと無負荷の状態でのカウンター付き垂直跳びのパワー発揮と高さ、20m走のタイム、そして、5-5方向転換テストのタイムを測定した。被験者は体重に対してのハングパワークリーンの数値により上下二つのグループに分けられ、その他のテストについて測定した。Pearsonの積率相関係数(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E9%96%A2)はすべての被験者に対して計算された。ハングパワークリーンにおいて上位だった選手はCOD以外においてすべて下位の選手よりも有意に高いスコアを示した。しかしながら方向転換のテストにおいては優位な違いは見られなかった。これはおそらく、筋力やパワー以外の要素が強く影響してきているからではないか?と思われる。ほとんどすべてのテストがハングパワークリーンとの相関関係があった。従って、ジャンプとスプリント、そしてハングパワークリーンの間に筋力に関する何らかの相関があると考えられる。
以上原文

今回の実験では29人のケースでハングパワークリーンのスコアとパフォーマンスの関係が示された。この結果が示すようにハングクリーンがあがる選手(うまい選手??)が他のパフォーマンスも高い数値を示している。この相関は多くの意味を含んでいる。まず、反動動作付きの垂直跳びのメカニズムとハングクリーンのメカニズムを比較する事が必要であると考えられる。なぜならばハングクリーンは垂直方向の反動動作だけでパワーを発揮している訳ではないからである。このメカニズムに対しての研究がより進む事が望まれる。
また、このラインの研究の一環として、ハングパワークリーンの技術の向上、パワーの向上とスプリント、ジャンプ能力の向上との相関関係を追う事が望まれる。
方向転換に関してはやはり技術的要素が多いが、その中でもパワーの向上によって、そのタイムが向上する事は想像に難くない。従って、方向転換についてメカニズムが近似している人間で再度このテストを行っても面白いかもしれない。しかしながら、方向転換のメカニズムは自身の持っている筋力(発揮)に従って変わって行くものかもしれない。その部分の研究もまた興味深いものになると思われる。
現場レベルでは、このような研究結果を踏まえて、ハングクリーンを運用してパワー向上を狙い、選手に対してそのパフォーマンスへの影響のあり方をきちんと説明できる必要があると言える。

他動的全身振動はハムストリングスのROMに影響を与えるか?

2008年04月14日 | Weblog
他動的全身振動はハムストリングスのROMに影響を与えるか?

WILL WHOLE-BODY VIBRATION TRAINING HELP INCREASE THE RANGE OF MOTION OF THE HAMSTRINGS?.

VAN DEN TILLAAR, ROLAND

Journal of Strength & Conditioning Research. 20(1):192-196, February 2006.


前回まではパワーや筋力発揮に対するブルブルマシンの影響についてであったが、今回はよくスポーツクラブで行われているもの、すなわち柔軟性の向上に対してのアプローチである。筋肉は繊維同士の癒着もあり、マッサージを行う事で柔軟性が増すのではないか?と言われているが、いまだ、これについては確定したエビデンスは出ていないと言える。しかし、実際にマッサージとストレッチの組み合わせにより、一時的な可動域の向上が見られている。筆者も経験的にそのようなじしょうを 日常茶飯事に見てきている。今回は他動的振動がマッサージのような効果を表す事が出来るのか?という点で興味深いものとなった。

以下が原文である。
Muscle strain is one of the most common injuries, resulting in a decreased range of motion (ROM) in this group of muscles. Systematic stretching over a period of time is needed to increase the ROM. The purpose of this study was to determine if whole-body vibration (WBV) training would have a positive effect on flexibility training (contract-release method) and thereby on the ROM of the hamstring musculature. In this study, 19 undergraduate students in physical education (12 women and 7 men, age 21.5 +/- 2.0 years) served as subjects and were randomly assigned to either a WBV group or a control group. Both groups stretched systematically 3 times per week for 4 weeks according to the contract-release method, which consists of a 5-second isometric contraction with each leg 3 times followed by 30 seconds of static stretching. Before each stretching exercise, the WBV group completed a WBV program consisting of standing in a squat position on the vibration platform with the knees bent 908 on the Nemes Bosco system vibration platform (30 seconds at 28 Hz, 10-mm amplitude, 6 times per training session). The results show that both groups had a significant increase in hamstring flexibility. However, the WBV group showed a significantly larger increase (30%) in ROM than did the control group (14%). These results indicate that WBV training may have an extra positive effect on flexibility of the hamstrings when combined with the contract-release stretching method.
以下翻訳。
筋肉のストレインは最も良くおこるケガの一つであるが、その原因として特定の筋群の可動域の減少が言われている。システマチックなアプローチのストレッチングがこの可動域の向上には必要である。この研究の目的は他動的振動(WBV)が柔軟性に対して好影響を与えるか?、すなわちハムストリングスのROMに変化を与えるか?という事を調べるものである。この研究では19人の体育学部の大学生が被験者として選ばれ(12人の女性7人の男性で平均21.5歳)、無作為にWBVとコントロールグループに分けられた。両方のグループにおいて、ストレッチングをシステマティックにコントラクトーリラックス法(5秒間のアイソメトリクス→30秒のストレッチをそれぞれ3回)で週3回、4週間行った。WBVグループはストレッチングを行う前に振動機(Nemes Bosco System Vibration Platform) の上で膝を90度屈曲した状態で30秒間スクワットポジションを維持した(28Hz 10-mm amp 6回/セッション)。結果として、双方のグループ共に優位なハムストリングスの柔軟性の変化を示したが、特にWBVグループがコントロールグループに対して優位な違いを示した(30%,14%)。この結果からWBVは柔軟性に対してもポジティブな影響を表す事が分かった。

今回の実験に置いては、他動的振動の与える影響は有意なものであったと言える。しかし、このような高価なマシンを用いる事とマッサージとの違いはまだ、明らかではない。マッサージは専門家からだけでなく、自分でもかなりセルフマッサージを行う事が出来る (http://kdsrd.web.fc2.com/page9/page11/page8/page8.html) 。このWBVとマッサージとの比較がこれから先の研究で望まれる部分であると言えるであろう。

全身の他動的振動の筋出力、パワー、筋活動に与える影響

2008年03月24日 | Weblog

ACUTE EFFECTS OF WHOLE-BODY VIBRATION ON MUSCLE ACTIVITY, STRENGTH, AND POWER.

CORMIE, PRUE; DEANE, RUSSELL S.; TRIPLETT, N. TRAVIS; MCBRIDE, JEFFREY M.

Journal of Strength & Conditioning Research. 20(2):257-261, May 2006.

前回に続きいわゆるブルブルマシンについての論文である。背景については前回の投稿でも書いているが、前回は上半身のエクササイズ、ベンチプレスについて出会ったが、今回は全身での急激な重心移動である、垂直跳び、スクワット(アイソメトリック)に対する影響である。明らかに体幹部を通じての重心移動、パワー発揮である両エクササイズは上半身のみでも行う事が出来るベンチプレスとは違った効果が得られるかもしれない。

The purpose of this study was to investigate the effects of a single bout of whole-body vibration on isometric squat (IS) and countermovement jump (CMJ) performance. Nine moderately resistance-trained men were tested for peak force (PF) during the IS and jump height (JH) and peak power (PP) during the CMJ. Average integrated electromyography (IEMG) was measured from the vastus medialis, vastus lateralis, and biceps femoris muscles. Subjects performed the 2 treatment conditions, vibration or sham, in a randomized order. Subjects were tested for baseline performance variables in both the IS and CMJ, and were exposed to either a 30-second bout of whole-body vibration or sham intervention. Subjects were tested immediately following the vibration or sham treatment, as well as 5, 15, and 30 minutes posttreatment. Whole-body vibration resulted in a significantly higher (p <= 0.05) JH during the CMJ immediately following vibration, as compared with the sham condition. No significant differences were observed in CMJ PP; PF during IS or IEMG of the vastus medialis, vastus lateralis, or biceps femoris during the CMJ; or IS between vibration and sham treaments. Whole-body vibration may be a potential warm-up procedure for increasing vertical JH. Future research is warranted addressing the influence of various protocols of whole-body vibration (i.e., duration, amplitude, frequency) on athletic performance.

この研究の目的はアイソメトリックスクワット(IS)とカウンタームーブメントジャンプ(CMJ)における、他動的全身振動の影響について調べた物である。9人のトレーニング経験のある男性が被験者として選ばれた。被験者はIS中の再代金出力(PF)とCMJ中のジャンプの高さ(JH)最大パワー(PP)の測定を行った。IEMGを内側広筋、VL,大腿2頭筋において測定した。ランダムにバイブレーションとコントロールグループの試験を行った。被験者はまず、ISとCMJにおけるベースライン値を測定し、そして30秒間の全身振動を行った。被験者はそれぞれ全身振動もしくは何もしないあとの5,15,そして30分後に測定を行った。全身振動直後のJHは明らかにコントロールグループのそれよりも高かった。ISにおけるPPやPFまた、CMJとISのIEMGにおいての違いは見られなかった。全身振動は垂直跳びのJHを高めるための有効なウォームアップといえるかもしれない。全身振動の条件についての様々な変化を加えての研究がこれから先に行われるべきである。

ベンチプレスで行った実験に対して、この実験は有意な差が出た。これを単純なエクササイズの比較としてみると、結果としてはまだまだ不確定であるとい結論のみが残るが、ここはエクササイズの性質が違うのでその辺りを考慮に入れて、さらに複数の文献を比較する事でいある程度一貫した結果が得られる可能性がある。

ベンチプレスにおける他動的振動のパワー出力に与える影響

2008年03月12日 | Weblog
ベンチプレスにおける他動的振動のパワー出力に与える影響


THE ACUTE EFFECTS OF MECHANICAL VIBRATION ON POWER OUTPUT IN THE BENCH PRESS.

Journal of Strength & Conditioning Research. 21(1):199-203, February 2007.

POSTON, BRACH 1; HOLCOMB, WILLIAM R. 2; GUADAGNOLI, MARK A. 2; LINN, LUCAS L. 2


昨今ぶるぶるマシンとして、様々なスポーツクラブに有償サービスとしておかれている他動的な振動を与えるマシンのエクササイズやそのパワー出力に対する影響はまだ、研究が始まったばかりである。理論上は中枢神経に働きかけて様々な反射や神経の興奮状態、そして血流の向上などにより通常より高いパワーをその後に発揮できるのではないか?と言われている。しかしながらその影響はまだ未知数で様々な研究がこれから先必要であると言える。今回の研究では他動的振動のベンチプレスにおけるパワー出力に対する影響について書かれている。

This study was designed to investigate the effect of mechanical vibration on acute power output in the bench press exercise. Ten male subjects who were experienced in resistance training participated in this study. Each subject performed 3 sets of 3 repetitions in the bench press exercise using a load equal to 70% of 1 repetition maximum in each of 2 sessions separated by 3 days. One session served as the experimental (vibration) condition, whereas the other session served as the control (no vibration) condition. The intervention (vibration or control) was applied between sets 2 and 3. The vibration was applied by a vibrating barbell apparatus held by the subjects while lying supine on a bench. The only difference between the 2 conditions was the vibration of the barbell apparatus during the vibration condition. Peak and average power were calculated during each bench press set to determine whether power output differed following vibration compared to control. Average power was significantly higher for the vibration condition compared to the control (525 +/- 74 vs. 499 +/- 71 W; p = 0.01). There was also a trend toward an increase in peak power in the vibration condition (846 +/- 168 by vs. 799 +/- 149 W; p = 0.06). In general, peak and average power output were higher following the vibration intervention compared to control. However, the sets prior to vibration application during the vibration condition also demonstrated higher power outputs compared with the control condition, which contributed to the main effect for the vibration condition. These results suggest that factors other than the vibration intervention influenced task performance during the vibration condition. We suggest that psychological factors related to the novelty of the vibration intervention were involved. These factors may partially explain the conflicting results of previous investigations that examined vibration as an exercise intervention.

この研究はベンチプレスにおけるパワー出力の他動的振動による影響について調べた物である。10人のウェイトトレーニング経験のある男性の被験者が実験では選ばれた。それぞれの被験者は1RMの70%の重量を用いて、3回を3セット行い、3日をおいて2セッション行った。一つのセッションを、振動を加えた物、もう一つのセッションをコントロールセッションとした。振動は2セット目と3セット目の間に行われた。振動はバーベルに伝えられ、その振動するバーベルをベンチに寝てプレスした。それ以外の条件はすべて同一とした。それぞれの条件での最大、および平均パワー出力を測定した。平均パワーは明らかに振動を加えた後の方が高かった。また、有意では無かったが最大パワー出力も振動を加えた方が高い傾向にあった。総合すると、振動を加えた方が最大、および平均パワー出力が高いという結果になった。しかしながら振動を加えた方のセッションにおいて振動を加える前のセットでも高いパワー出力が測定されている。このことから、振動を与えたセッションにおいて振動以外の要素が実験結果に影響を与えたと考えられる。おそらく振動に対する心理的な影響が結果に変化を及ぼしたと考えられる。この要素を含めて考えればこの振動に対するわかりにくい実験結果についても説明がつく。

今回の研究ではこの他動的振動が生理学的にどのように影響を与えられたかは明らかに出来なかった。このような”たいそうな”機械を見て、それによる影響を調べるというと、自然に力が入ってしまうものなのではないだろうか?実験のデザインとして、このようなものの影響を調べる事は非常に難しいと言える。なぜなら、これを行う事と行わない事を被験者が明らかに違うと認識できるからである。この辺りはサプリメントなどの実験とは全く違ったものであると言える。その点でも新しいデザインの実験がこの効果の実効性を測定する上で必要不可欠であると得る。しかしながら、そのような心理的影響であるとはいえ被験者のパワー発揮が向上した事は事実で、ビジネスとしてフィットネス産業でこの機器を利用する価値は十分にあるのではないかと思う。

バランスボール上でのトレーニングとフリーウェイトトレーニング中の体幹部

2008年02月29日 | Weblog
バランスボール上でのトレーニングとフリーウェイトトレーニング中の体幹部の筋肉活性

Trunk Muscle Activity During Stability Ball and Free Weight Exercises

Nuzzo, James L; McCaulley, Grant O; Cormie, Prue; Cavill, Michael J; McBride, Jeffrey M, Journal of Strength and Conditioning Research:Volume 22(1)January 2008pp 95-102


前回に続いて今回もバランスボールとフリーウェイトの比較である。昨今のバランスや”コア”トレーニングに対する興味が高まっているという現状の中でバランストレーニングの運用法や効果や目的を知ることは非常に重要であるといえる。従来、体幹部の筋肉に対する影響は余り考えられずにフリーウェイトのトレーニングは行われてきた。しかし、実際に測定してみると意外に大きな影響を与えていることがわかる。

この研究の目的はスタビリティボールとフリーウェイトのエクササイズ中の体幹部における筋肉の活性を比較した物である。9人のトレーニング経験のある男性が被験者として選ばれ、スクワット(SQ)とデッドリフト(DL)を1RMの50,60,70,90,100%で行った。また、Qadruped(QP), Pelvic Thrust(PT), ball back extension(BE)という3種のアイソメトリックエクササイズをスタビリティボール上で行った。エクササイズ中に腹直筋(RA),外腹斜筋(EO)、最長筋(L1)、そして多裂筋(L5)のEMG活性を測定した。実験の結果

L1 L5
QP 19.5 ± 14.8% 30.2 ± 19.3%

PT 31.4 ± 13.4% 37.6 ± 12.4%

BE 44.2 ± 22.8% 45.5 ± 21.6%


1RMの90および100%のスクワットとデッドリフトにおけるL1のIEMGと1RMの100%におけるL5の比較的筋活性はスタビリティボール上のエクササイズよりも明らかに高い活性を示した。さらに、1RMの50および70%のデッドリフトにおけるL1の活性もQPとPTのそれよりも明らかに高い数値を示した。RAとEOに関してはどのエクササイズにおいても有意な差を見ることができなかった。
結論としてスクワットとデッドリフトにおける体幹部の筋肉の活性はスタビリティボール上のエクササイズと同じか高い活性を示すことがわかった。このことよりスタビリティボール上のエクササイズは筋肥大や筋力向上を起こすほどの刺激を筋肉に対して与えられないと考えられる。従ってストレングス&コンディショニングプログラムにおけるスタビリティボール上のエクササイズの有効性には疑問が残り、スクワットとデッドリフトが腰部の伸展に対してより推薦されるエクササイズであるといえる。

この研究でおもしろいのは1RM付近の非常に高い負荷でのフリーウェイトトレーニングのみならず、50%付近の比較的軽い負荷でのそれにおいてもバランスエクササイズと比較した点である。ここでも示されているとおり、低い負荷でもコアに対して非常に有意な影響を与えることがわかった。これは、現実的にスクワットやデッドリフトで体幹部が下肢よりもはやくFailすることが多いという現場での状況とも合致する。すなわちこれらのフリーウェイトトレーニングは体幹部に高いストレスをかけている物なのである。従ってこの体幹部をしっかりした状態で保持する事ができるようにするという点がまさにフリーウェイトのトレーニングにおいて非常に重要な点である。この点をおろそかにすると、高い体幹部への負荷にもかかわらず、それを体が支えきれなくなり、障害などの原因になるのではないかと考えられる。トレーニングを校正する際には長期的な見地に乗っ取って力を”出せる”ように体をまず鍛えてゆくことが必要で、その中で体幹部への直接的なアプローチも有効に利用できるとも考えられる。

ウェイトトレーニングと、不安定な面でのアイソメトリックエクササイズ

2008年02月20日 | Weblog
ダイナミックなウェイトトレーニングと、不安定な面でのアイソメトリックエクササイズにおける体幹部の筋肉の活性

原文

Hamlyn, N., D.G. Behm, and W.B. Young. Trunk muscle activation during dynamic weight-training exercises and isometric instability activities. J. Strength Cond. Res. 21(4): 1108–1112. 2007.—

The purpose of this study was to examine the extent of activation in various trunk muscles during dynamic weight-training and isometric instability exercises. Sixteen subjects performed squats and deadlifts with 80% 1 repetition maximum (1RM), as well as with body weight as resistance and 2 unstable calisthenic-type exercises (superman and sidebridge). Electromyographic (EMG) activity was measured from the lower abdominals (LA), external obliques (EO), upper lumbar erector spinae (ULES), and lumbar-sacral erector spinae (LSES) muscle groups. Results indicated that the LSES EMG activity during the 80% 1RM squat significantly exceeded 80% 1RM deadlift LSES EMG activity by 34.5%. The LSES EMG activity of the 80% 1RM squat also exceeded the body weight squat, deadlift, superman, and sidebridge by 56, 56.6, 65.5, and 53.1%, respectively. The 80% 1RM deadlift ULES EMG activity significantly exceeded the 80% 1RM squat exercise by 12.9%. In addition, the 80% 1RM deadlift ULES EMG activity also exceeded the body weight squat, deadlift, superman, and sidebridge exercises by 66.7, 65.5, 69.3, and 68.6%, respectively. There were no significant changes in EO or LA activity. Therefore, the augmented activity of the LSES and ULES during 80% 1RM squat and deadlift resistance exercises exceeded the activation levels achieved with the same exercises performed with body weight and selected instability exercises. Individuals performing upright, resisted, dynamic exercises can achieve high trunk muscle activation and thus may not need to add instability device exercises to augment core stability training.



昨今コアトレーニング、ファンクショナルトレーニングなどと言われて、様々な体幹部にフォーカスしたトレーニングが行われている。これは、コアが体の中心にあり、力の発揮の効率がコアを強化、安定化することで増すと考えられているからである。この効率を増すことで、腰部のけがなども減らせるのではないかと考えられている。この中でも不安定面での安定化トレーニングをすることで、コアの安定性を高めようとするアプローチは非常に一般的に行われている。
しかしながら、あまりにも不安定性を高める余り、体幹部以外の部分を用いてバランスをとり、実際にあるべき安定化のパターンを体に教育できずにいることも、散見される。McGillらの研究によると、体幹部、特に腰椎の部分の安定性を高めるトレーニングと全身のバランスをとるトレーニングは別個であると、定義している。こうなると、体幹部のみにフォーカスしたコアトレーニングの有効性については懐疑的にさえ感じられる。今回の実験はこのようなバックグラウンドを見た上で議論することで非常に興味深い物となる。
この研究の目的は様々な体幹部の筋肉のダイナミックなウェイトトレーニングと不安定面でのアイソメトリックエクサイズにおける活性レベルをひかくしたものである。
16人の被験者が1RMの80%と自重でのスクワットとデッドリフト、そして不安定面でのスーパーマンとサイドブリッジを行った。腹筋下部、外腹斜筋、上部の脊柱起立筋、下部の脊柱起立筋のEMGの値を測定した。実験の結果1RMの80%におけるスクワットはデッドリフトに比べ、34.5%高い活性が下部の脊柱起立筋に見られた。このデッドリフトにおいてこの場所の活性は自重でのスクワット、デッドリフト、スーパーマン、サイドブリッジをそれぞれ56.0,56.6,65.5,そして68.6%上回った。外腹斜筋と腹筋下部の活性には変化を見られなかった。
従って、この結果から、1RMの80%におけるスクワットとデッドリフトは自重での同様のエクササイズや、スーパーマン、そしてサイドブリッジよりも高い活性を示した。
従って立位でのダイナミックなウェイトトレーニングを行って入れば、コアの安定化トレーニングのための不安定面でのトレーニングは必要ないかもしれない。

今回の研究で明らかになったのは、コアの筋群に対するストレスは一般的なウェイトトレーニングの方が不安定面を用いたコアトレーニングよりも高かったことが見られた。これは、ある意味当然なことである。体幹部に対して物理的にかかる重量とモーメントアームが一般的なウェイトトレーニングの方が遙かに大きいからである。それでは、これらのコアトレーニングの存在意義は無いのであろうか?そのようなことはないと考えられる。コアにフォーカスしたトレーニングを行うことで単純な筋肉に対するストレスをかけ、局部的な筋力増強を目指す物ではなく、スポーツ動作や、立位でのトレーニングなどを行う際に”正しい”パターンで体幹部の安定化を行える用に体幹部を段階的に鍛えたり、PAPとして事前にアクティベーションを局部的に正しいパターンで行うことによって、そのままのパターンでよりコアを安定化させた状態でトレーニングすることを目的として利用することができる。従って、より、正しいパターンで行えるようなコア”アクティベーション”トレーニングとしての体幹部のトレーニングアプローチは非常に有効的であると考えられる。このようなアプローチでトレーニングすることでコア”コンセプト”を持ってエクササイズを行うことがトレーニングの有効性を高めることになるのでは無いだろうか?


ベンチプレススローとジャンプスクワットにおけるパワー出力の高レップ数における変化

2008年02月16日 | Weblog
Change in Power Output Across a High-Repetition Set of Bench Throws and Jump Squats in Highly Trained Athletes

トレーニングされた運動選手におけるベンチプレススローとジャンプスクワットにおけるパワー出力の高レップ数における変化

原文
Baker, D.G., and R.U. Newton. Change in power output across a high-repetition set of bench throws and jump squats in highly trained athletes. J. Strength Cond. Res. 21(4):1007– 1011. 2007.―Athletes experienced in maximal-power and power-endurance training performed 1 set of 2 common power training exercises in an effort to determine the effects of moderately high repetitions upon power output levels throughout the set. Twenty-four and 15 athletes, respectively, performed a set of 10 repetitions in both the bench throw (BT P60) and jump squat exercise (JS P60) with a resistance of 60 kg. For both exercises, power output was highest on either the second (JS P60) or the third repetition (BT P60) and was then maintained until the fifth repetition. Significant declines in power output occurred from the sixth repetition onwards until the 10th repetition (11.2% for BT P60 and 5% for JS P60 by the 10th repetition). These findings suggest that athletes attempting to increase maximal power limit their repetitions to 2 to 5 when using resistances of 35 to 45% 1RM in these exercises.


多くのパワースポーツにおいて、必要なパワーを鍛えるために、様々なパワーエクササイズが行われる。オリンピックリフトに代表されるバーベルを使った爆発的なエクササイズもその一例である。ここでは、オリンピックリフトより技術的に簡易であると考えられる、ベンチプレススロー及びジャンプスクワット(特殊なブレーキ付きのスミスマシンを使用)におけるレップ数とパワー出力の関係について研究している。技術的な違いはあるが、ジャンプスクワットなどはオリンピックリフトに比較的似た種目であり、そのトレーニングメニューを策定する際に効果的なレップ数を知る事は非常に有用な事であると考えられる。
この実験では2つの一般的なパワーエクササイズを1セット行い、最大パワーとパワー維持のトレーニングの中で、比較的高いレップ数でのパワー発揮レベルを追跡したものである。24人と15人のグループのあすリートがそれぞれ10レップのベンチプレススローとジャンプスクワットを60KGで行った。それぞれのエクササイズにおいて最大パワーは、2もしくは3レップ目に測定され、比較的高いレベルで5レップ目まで維持することができた。明らかなパワー発揮の減少が6レップ目からみられ始め、その傾向は10レップ目まで続いた。
この結果から、1RMの35から45パーセントの負荷を行う際、パワーエクササイズのレップ数は2から5の間にとどめるべきであるということができる。

今回の実験では2レップから5レップの間に十分なパワー出力が得られるという結果を見られた。ここで、完全にフレッシュな状態である1レップ目において適正なパワー出力が得られていないと言う点は特筆すべき点である。これには色々な理由が考えられるが、大きなパワーを出力する際には事前にウォームアップに近いエクササイズを行う必要があるのかもしれない。しかし、これはおそらく技術の向上や十分なウォームアップセットを行う事で1レップ目から最大出力を得る事が出来るかもしれないと言う点は否定できないのも事実である。いずれにしてもここで確実なのは6レップ目以降からは明らかにパワー出力の低下が見られる事がわかり、これはより可動域の大きいオリンピックリフトではさらに顕著に現れる可能性がある。しかしながら現実として8レップや10レップのオリンピックリフトは依然としてトレーニングとして行われている。もしこれらが完全に技術習得のために行われるエクササイズであるとしても出力の低下は否めず、従って、誤ったメカニズムでバーをあげる事になりかねない。これはトレーニング効果があまり見られないばかりか、ケガのリスクを飛躍的に高める事にもなりかねない。総合的に見て、ある程度のボリュームのパワーエクササイズをトレーニングの中で行ってゆくためには、パワーが落ちるレベルまでのレップ数を1セットで行わず、多くのセット数を少ないレップ数で行うアプローチが好ましいのではないかと考えられる。

エクササイズの順番の上半身の筋群におけるアクティベーションとエクササイズパフォーマンスとの関係

2008年02月07日 | Weblog
エクササイズの順番の上半身の筋群におけるアクティベーションとエクササイズパフォーマンスとの関係

Effects of Exercise Order on Upper-Body Muscle Activation and Exercise Performance
Gentil, P., E. Oliveira, V.A. Rocha Júnior, J. do Carmo, and M. Bottaro. Effects of exercise order on upper-body muscle activation and exercise performance. J. Strength Cond. Res. 21(4):1082–1086. 2007.

近年、PAP、Post Activation Potentiationの有効性が様々な研究者によって研究されている。これはエクササイズを行う前にモーターユニットに対し、大きな負荷を与えておく事でその活性化を促し、その後のエクササイズにおけるパワー発揮を高め、エクササイズの効果を高める、もしくはパフォーマンスの向上に寄与すると行った者である。実はこのPAPのアイデアはウォームアップの必要コンセプトでもある。すなわちより特異的なウォームアップと言えるのではないだろうか?今回の研究ではこのPAPのコンセプトを事前”疲労”としてのアイデアで行っている。PAPの適正な利用は常に疲労との兼ね合いが重要になる。より高いレベルのアスリートであればより高い強度でのPAPに対しても低い疲労レベルで達成できるであろう。今回はそのような疲労のファクターを感じさせる論文である。
レジスタンストレーニングにおいて、トレーニングの刺激を変化させる区のいくつかの方法がとられてきている。そのうち2つのポピュラーなものと言えば、Pre-Exhaustion 法(PRE)とプライオリティー法(PS)であると言える。PREは複合関節運動を行う前に単関節のトレーニングを完全疲労まで行うものであるが、一般的には複合関節運動は単関節運動よりも前に行うべきである(PS)とも言われている。この研究の目的は上半身の筋群における筋行くの活性化と、総挙上回数、全仕事量をPREとPSにおいて比較する事である。被験者として13人のウェイトトレーニング経験のある男性が選ばれ、クロスオーバーデザインで、1セットずつPREとPSのテクニックを用いてトレーニングした。エクササイズは10RMでチェストプレスとペックデックを行った。RM法を用いる事により、一貫した相対的負荷で実験する事が出来る。EMGのデータを上腕三頭筋、三角筋前部、そして、大胸筋においてエクササイズ中に測定した。全仕事量、及び総挙上回数においては二つの方法において有意な差は見られなかった。同様にペックデックエクササイズにおいても2つの方法のEMGに有意な差は見られなかった。しかしながら、チェストプレスにおける上腕三頭筋のEMG活性はPRE法の方が高いという結果が見られた。
この結果から、我々は、事前疲労法を用いる事は、複合関節運動において有効に作用はしていないという結論に達した。また、トレーニングの順序によっても同一筋群における総仕事量の違いは見られなかった。総括すると、ある一つのエクササイズのパフォーマンスを向上したければコーチはそのエクササイズをトレーニングセッションの始めに行うべきであるという結論に達した。

この実験結果と方法をみると、事前”疲労”としてのアイデアがみえる。結果としてPRE法では胸部の筋群が”疲労”していたため、上腕三頭筋の活性化が進んだ。もしも、これをインターバルのコントロールと、ボリュームのコントロールを適正にすれば、また違った結果が得られたのかもしれない。疲労により、筋肉を感じやすくする事ではなく、同じような”動作”を事前に高い負荷で行う事により、より、モーターユニットに対して刺激を加える事が出来るであろう。その際には疲労を目的としないため、完全疲労までセットを行う必要はない。このようにエネレルギー的に余裕を残した状態で、かつ強い刺激を与えた状況での同様な実験が望まれる。

プライオメトリックスVSアイソメトリクス トレーニングの腱と、筋出力に及ぼす影響

2007年12月02日 | Weblog
Plyometric vs. Isometric Training Influences on Tendon Properties and Muscle Output
Katherine E. Burgess, Mark J. Connick, Philip Graham-Smith, and Stephen J. Pearson
The Journal of Strength and Conditioning Research: Vol. 21, No. 3, pp. 986–989.

ABSTRACT

Burgess, K.E., M.J. Connick, P. Graham-Smith, and S.J. Pearson. Plyometric vs. isometric training influences on tendon properties and muscle output. J. Strength Cond. Res. 21(3): 986–989. 2007.―The purpose of this study was to concurrently determine the effect that plyometric and isometric training has on tendon stiffness (K) and muscle output characteristics to compare any subsequent changes. Thirteen men trained the lower limbs either plyometrically or isometrically 2–3 times a week for a 6-week period. Medial gastrocnemius tendon stiffness was measured in vivo using ultrasonography during ramped isometric contractions before and after training. Mechanical output variables were measured using a force plate during concentric and isometric efforts. Significant (p <0.05) training-induced increases in tendon K were seen for the plyometric (29.4%; 49.0 ± 10.8 to 63.4 ± 9.2 N·mm-1) and isometric groups (61.6%; 43.9 ± 2.5 to 71.0 ± 7.4 N·mm-1). Statistically similar increases in rate of force development and jump height were also seen for both training groups, with increases of 18.9 and 58.6% for the plyometric group and 16.7 and 64.3% for the isometric group, respectively. Jump height was found to be significantly correlated with tendon stiffness, such that stiffness could explain 21% of the variance in jump height. Plyometric training has been shown to place large stresses on the body, which can lead to a potential for injury, whereas explosive isometric training has been shown here to provide similar benefits to that of plyometric training with respect to the measured variables, but with reduced impact forces, and would therefore provide a useful adjunct for athletic training programs within a 6-week time frame.
タイトル
”プライオメトリックスVSアイソメトリクス トレーニングの腱と、筋出力に及ぼす影響”

多くのスポーツ動作、生活動作においておこっている伸張反射は未だに様々な研究がなされている.ガンマループに示されるように筋紡錘の伸展から始まる制御により、筋の収縮が起き、パワーを発揮するというモデルも示されています.一方で筋そのものにはそこまで大きな弾性的な働きをせず、反発動作は腱の弾性力によるものであるとも言われています..ペン州立大学のZatiorsky博士は彼の著書”Science and practice of strength training”の中で腱と筋出力の関係を示しており、そこでも筋肉の弾性力が腱のそれを上回る事が高いパフォーマンスを出す事に必要な事である、と述べています.これは、神経系の支配による筋の反射に加え、腱そのものの弾性力を最大限生かすためにそのような事が必要であると述べていると考えられます。従って、筋肉の弾性力に加え、腱の弾性力を高めることはパフォーマンスの向上に影響を与える事は想像に苦しくありません。

今回の論文では、トレーニングによる腱と筋出力への影響について調べています.

以下翻訳(意訳)
今回の実験の目的はプライオメトリックスとアイソメトリクス2種類のトレーニングの影響を腱の弾性力と筋出力の特徴において比較したものである.13人の被験者が選ばれ、6週間の間プライオメトリックス、もしくはアイソメトリクストレーニングを週2から3回行った.腓腹筋内側頭の腱の弾性力を超音波測定器を使用して測定した.測定は傾斜版を使い、アイソメトリックな状態、およびコンセントリックな状態でトレーニングの前後に測定した.機械的な出力はやはり、アイソメトリックおよびコンセントリックな状態でフォースプレート上で測定した.結果として腱の弾性力は、プライオメトリックス (29.4%; 49.0 ± 10.8 to 63.4 ± 9.2 N·mm-1)、およびアイソメトリクス (61.6%; 43.9 ± 2.5 to 71.0 ± 7.4 N·mm-1)トレーニングを行った場合に統計的に明らかに向上した.同様にRFD(出力の立ち上がり)とジャンプの高さの結果において統計的に有意な向上がプライオメトリックス( 18.9 及び 58.6% )およびアイソメトリクストレーニング( 16.7 及び64.3%)後に見られた.21%の変化と言う結果から腱の弾性力がジャンプの高さに影響を与える事がわかった.プライオメトリックスは高いストレスを身体にかけるため、ケガのリスクを伴う.それに対して爆発的なアイソメトリクストレーニングは同様の効果をより少ない衝撃力で得る事が出来ると言える.これは6週間という時間においては、スポーツトレーニングのプログラムにおいて、有用な選択肢であると言える.

以上

考察
今回の実験において非常に興味深かったのは腱の弾性力が大幅にトレーニングにより変化した事である.教科書的には腱などの組織は筋肉に比べてトレーニングに対する適応が遅いとされている(少なくとも以前の教科書は)が、今回の実験で行ったものに関しては明らかに弾性力が高まっている.これについては久保らの研究により腱内部の構成が機械的な弱さを補うために変化するのではないか?と考察している。また、この腱の弾性力の高まりとジャンプの高さの向上に関連性が見られた事は非常に面白い。しかし、今回の実験において純粋に足関節のみのコンセントリックなジャンプ(そんな事が可能なのか??)を使ってテストしているため、かなりデータにばらつきがある.もしかしたら連続ジャンプを体幹部を固定して行ったらまた、興味深い結果が出たかもしれない.
その他の文献においても腱の弾性力の向上は見られていると言う点で、プライオメトリックスに対する考え方を改める必要があるかもしれない。すなわち、よりアイソメトリクス寄りなジャンプで十分な弾性力、ジャンプ力の向上が得られるなら、より、保守的なアプローチでのジャンプトレーニングで腱の弾性力の向上を目指すアプローチも興味深い.

エリートラグビー選手におけるEMSを用いたトレーニングの筋力、パワーへの影響

2007年07月09日 | Weblog

Babault, N., G. Cometti, M. Bernardin, M. Pousson, and J.-C. Chatard. Effects of electromyostimulation training on muscle strength and power of elite rugby players. J. Strength Cond. Res. 21(2):431–437. 2007.


前書き:

EMSを用いたトレーニングは古くは旧ソ連の時代から行われてきたが、未だにスポーツパフォーマンスへの直接的な影響を示唆するまでには研究は進んでいない。その一方で、TVなどでは楽にトレーニングできるとEMSがもてはやされている。果たして、EMSは本当にスポーツパフォーマンスに好影響があるのであろうか?この研究ではフランスのラグビー選手に対しEMSを用いたトレーニングを施している。


要約(Abstract意訳):

この研究では12週間のEMSを用いたトレーニングをエリートラグビー選手に対して行った。25人のラグビー選手がこの研究に参加し、15名がEMSを用いたトレーニングをおこない、10名がコントロールグループとして、通常のトレーニングのみを行った。EMSは膝の伸筋群、足間接のPlantarFlexor、臀部の筋群に対して行った。最初の6週間は週3回トレーニングを行い、後半の6週間は週1回トレーニングを行った。-120度/sから-360度/sの範囲でアイソキネティックマシンを用いて膝の伸筋群の筋力をConcentric及びEccentricで測定した。また、スクラム筋力、フルスクワット、垂直跳び、スプリントのテストも行った。EMSを行ったグループにおいて、実験を開始して6週間後、スクワットの筋力のみが向上し(+8.3 ± 6.5%; p <0.01)、12週間後には-120度/sにおけるエキセントリックな筋力、120度及び240度/sにおけるコンセントリックな筋力の向上が膝関節伸筋群に見られた。また、スクワットの筋力(+15.0 ± 8.0%; p < 0.001)、スクワットジャンプ(+10.0 ± 9.5%; p < 0.01)、40cmからのドロップジャンプ(+6.6 ± 6.1%; p < 0.05)のスコアにおいて向上が見られた。コントロールグループにおいては変化は見られなかった。この12週間のEMSを用いたトレーニングでは筋力とパワーの向上がエリートラグビー選手に見られたが、パフォーマンスに特異的なもの、スクラム力およびスプリントの速さには変化が見られなかった。

感想

出来過ぎなくらいうまくいった研究である。ほかの研究でもやはり、短関節のトルクや、シンプルなエクササイズにおける筋力の向上は見られたものの、スポーツパフォーマンスの向上までには至っていない。しかし、今回の研究ではスクワットやジャンプにおける明らかなパフォーマンスの向上が見られている。特にスクワットジャンプなどは最大で20%位の向上が見られている。20%という数字はかなり驚異的である。元々の筋力がそこまでではなかったのかもしれない。これに関しては、さらに深い研究が必要であると感じられた。今回非常に興味深かったのが、スクワットの筋力やジャンプ(両足)の能力がスプリントやスクラムの筋力に影響を与えなかった点である。この筋力とパフォーマンスの関係についてはさらに研究を進めてゆく必要があると考えられる。逆にアジリティ能力について、筋力との相関関係がみられるのか?今後の研究に期待したい。