ストレングスコーチの個人的なトレーニング日誌&読書感想文

トレーニングについて感じたこと、また定期的に読んでいる専門誌の記事についてのコメントなども書いていこうと思います。

エクササイズの順番の上半身の筋群におけるアクティベーションとエクササイズパフォーマンスとの関係

2008年02月07日 | Weblog
エクササイズの順番の上半身の筋群におけるアクティベーションとエクササイズパフォーマンスとの関係

Effects of Exercise Order on Upper-Body Muscle Activation and Exercise Performance
Gentil, P., E. Oliveira, V.A. Rocha Júnior, J. do Carmo, and M. Bottaro. Effects of exercise order on upper-body muscle activation and exercise performance. J. Strength Cond. Res. 21(4):1082–1086. 2007.

近年、PAP、Post Activation Potentiationの有効性が様々な研究者によって研究されている。これはエクササイズを行う前にモーターユニットに対し、大きな負荷を与えておく事でその活性化を促し、その後のエクササイズにおけるパワー発揮を高め、エクササイズの効果を高める、もしくはパフォーマンスの向上に寄与すると行った者である。実はこのPAPのアイデアはウォームアップの必要コンセプトでもある。すなわちより特異的なウォームアップと言えるのではないだろうか?今回の研究ではこのPAPのコンセプトを事前”疲労”としてのアイデアで行っている。PAPの適正な利用は常に疲労との兼ね合いが重要になる。より高いレベルのアスリートであればより高い強度でのPAPに対しても低い疲労レベルで達成できるであろう。今回はそのような疲労のファクターを感じさせる論文である。
レジスタンストレーニングにおいて、トレーニングの刺激を変化させる区のいくつかの方法がとられてきている。そのうち2つのポピュラーなものと言えば、Pre-Exhaustion 法(PRE)とプライオリティー法(PS)であると言える。PREは複合関節運動を行う前に単関節のトレーニングを完全疲労まで行うものであるが、一般的には複合関節運動は単関節運動よりも前に行うべきである(PS)とも言われている。この研究の目的は上半身の筋群における筋行くの活性化と、総挙上回数、全仕事量をPREとPSにおいて比較する事である。被験者として13人のウェイトトレーニング経験のある男性が選ばれ、クロスオーバーデザインで、1セットずつPREとPSのテクニックを用いてトレーニングした。エクササイズは10RMでチェストプレスとペックデックを行った。RM法を用いる事により、一貫した相対的負荷で実験する事が出来る。EMGのデータを上腕三頭筋、三角筋前部、そして、大胸筋においてエクササイズ中に測定した。全仕事量、及び総挙上回数においては二つの方法において有意な差は見られなかった。同様にペックデックエクササイズにおいても2つの方法のEMGに有意な差は見られなかった。しかしながら、チェストプレスにおける上腕三頭筋のEMG活性はPRE法の方が高いという結果が見られた。
この結果から、我々は、事前疲労法を用いる事は、複合関節運動において有効に作用はしていないという結論に達した。また、トレーニングの順序によっても同一筋群における総仕事量の違いは見られなかった。総括すると、ある一つのエクササイズのパフォーマンスを向上したければコーチはそのエクササイズをトレーニングセッションの始めに行うべきであるという結論に達した。

この実験結果と方法をみると、事前”疲労”としてのアイデアがみえる。結果としてPRE法では胸部の筋群が”疲労”していたため、上腕三頭筋の活性化が進んだ。もしも、これをインターバルのコントロールと、ボリュームのコントロールを適正にすれば、また違った結果が得られたのかもしれない。疲労により、筋肉を感じやすくする事ではなく、同じような”動作”を事前に高い負荷で行う事により、より、モーターユニットに対して刺激を加える事が出来るであろう。その際には疲労を目的としないため、完全疲労までセットを行う必要はない。このようにエネレルギー的に余裕を残した状態で、かつ強い刺激を与えた状況での同様な実験が望まれる。