ストレングスコーチの個人的なトレーニング日誌&読書感想文

トレーニングについて感じたこと、また定期的に読んでいる専門誌の記事についてのコメントなども書いていこうと思います。

水泳におけるアシストおよびレジストスプリントトレーニング

2007年04月12日 | Weblog
Assisted and Resisted Sprint Training in Swimming Gerold, S., Calmels, P., Murin, D., Milhau, N., and Chatard, J. C., Journal or Strength and Conditioning Research, 2006, 20(3) 547-554

水泳におけるアシストおよびレジストスプリントトレーニング


前書き

水泳におけるレジスタンストレーニングは長い間非常にアプローチが難しいとされていました。それは水中という環境が非常に特異的で、地上でのトレーニングの効果が直接的に出にくいからである。確かにスタートやターンの際のキックの強さなどは地上でのトレーニングによって直接的に向上しやすい部分ではあるが、トータルで泳ぎという面を見ると非常に難しい部分であるといえる。


要約

(Abstract意訳)この研究は水泳におけるレジストスプリント(Ost)、アシストスプリント(Osp)の100mクロール競技への影響についてです。被験者はレジスト、アシスト、コントロール(C)の3者に分けられ、トレーニングは3週間行われ、それぞれ週に6回の練習のうち3回をこのトレーニングに費やした。負荷にはチューブが用いられた。トレーニング前と後での100mクロール競技でのパフォーマンスを比較したところ、Ostグループでは100mのスピード、肘関節屈筋群の筋力、そしてストロークの速さが向上した。またストロークの長さは変化がなかった。Ospグループは泳ぎの速度に変化はなかったが、ストロークの速さが向上し、ストロークの長さが減少した。Cグループにおいては有意な変化は見られなかった。この結果から考察すると、Ost,Ospともに従来のトレーニング法よりも効果が高いことが示された。しかしながら筋力や泳ぎの速度、ストロークの技術についてOstのトレーニング法の方がより効果的な結果を残した。


感想

3週間という短い期間でこれだけ有意な差がでるとなると、水泳におけるレジスタンストレーニングの効果は非常に高いといえるであろう。ここで筋力の評価において肘関節の屈筋群と伸筋群が評価されているがこれは興味深い。私は水泳に関しては非常に無知であるが、動作を見ていると、肩関節における動作の影響が大きいように見える。それとも、肘関節におけるトルクの影響が大きいのだろうか?これに関してはさらに文献などを読んでみる必要があると考える。実際に水泳において筋力の必要性は上半身の方が高いのかもしれない。いずれにしても実際に負荷をかけた泳ぎが有効であったわけであるので、実際にどのようなボリュームで行うべきなのかなど、さらなる研究が望まれる。

挙上速度と1RMの関係

2007年04月03日 | Weblog
Effect of Movement Velocity on the relationship between training Load and the number of repetitions of bench press Journal of strength and conditioning research 2006, 20(3) 523-527 Sakamoto, A., Sinclair, P. J.

前書き
ベンチプレスをはじめとするスタンダードなバイラテラルエクササイズ。これらの全力で出来る最大の回数、すなわちRM(Repetition Maximum)と使用した重量からその人の1回ギリギリ行える重量(1RM)を計算できると言われています。特にベンチプレスなどの不確定要素が少ないものに関しては一般的にこの関係が広く受け入れられています。しかし、本当に重さと回数以外の要素はないのでしょうか?この研究ではこれら、重さ、回数の要素に時間(速さ)の要素を加えてその比較を行っています。


要約(Abstract意訳)
この研究ではベンチプレスにおける負荷の重量と回数の関係を速度に変化を加えて比較したものである。11人の日常的にウェイトトレーニングをしている被験者が実験に参加した。この実験では遅い速度、中程度の速度、爆発的な速度の3種類での実験を行った。実験の結果、より速い速度で動かしたほうが、1RMに対しての同じパーセンテージの重量において、より多くの回数を挙上することが出来た。おそらく伸張反射のメカニズムを使うことが出来る速い動作は動作の速度の不利(通常より速い)を上回るメリットを伸張反射から出来たのではないかと考えられる。

備考(実験結果から)挙上回数と%1RM,速度の関係グラフ

感想この研究はコロンブスの卵、もしくはパンドラの箱的な実験であると思う。すなわち、非常に身近なものでありながら見落としてきた事実であるか、もしくは複雑なファクターなので目をつぶってきた部分であるかである。そう思う理由として、以下のことがあげられる。まず第一にグラフを見ても分かると思うが、関係が曲線になっていることである。特にベンチプレスにおいては回数と重量は1次関数的な関係として扱われてきた。しかし筋肉に対するエネルギーシステムから考えても10秒、そして35秒前後を境に関係が変化することが考えられる。これまで、高回数における関係が比較的1次的だったことには、挙上間の休み(動作が止まる)ことが言えると思う。この部分が2つ目のポイントである。すなわちテンポを設定することにより同じ条件で挙上を繰り返すことになったわけである。このテンポ設定も非常に興味深い。スローの設定と、Fastの設定では同じ回数でもかかっている時間が倍以上違うわけである。したがって、単純に回数のみでのコントロールでなく、テンポでもオーバーロードがかけられるということがここでいえたのではないでしょうか?また、エキセントリックに集中して挙上のテンポをコントロールするようにすれば、スローなエキセントリック動作により、伸張反射に必要なエキセントリックな強さが得られるのではないか?と考えます。これはすなわちピリオダイゼーションにおいて、比較的重い重量を扱うフェイズの裏フェイズに行えば、効果的にプログラムを作成できるかもしれません。いずれにしてもこのRMと速度の研究は他の種目でも行えればさらに有効性が高まると考えられます。