ストレングスコーチの個人的なトレーニング日誌&読書感想文

トレーニングについて感じたこと、また定期的に読んでいる専門誌の記事についてのコメントなども書いていこうと思います。

プライオメトリックスVSアイソメトリクス トレーニングの腱と、筋出力に及ぼす影響

2007年12月02日 | Weblog
Plyometric vs. Isometric Training Influences on Tendon Properties and Muscle Output
Katherine E. Burgess, Mark J. Connick, Philip Graham-Smith, and Stephen J. Pearson
The Journal of Strength and Conditioning Research: Vol. 21, No. 3, pp. 986–989.

ABSTRACT

Burgess, K.E., M.J. Connick, P. Graham-Smith, and S.J. Pearson. Plyometric vs. isometric training influences on tendon properties and muscle output. J. Strength Cond. Res. 21(3): 986–989. 2007.―The purpose of this study was to concurrently determine the effect that plyometric and isometric training has on tendon stiffness (K) and muscle output characteristics to compare any subsequent changes. Thirteen men trained the lower limbs either plyometrically or isometrically 2–3 times a week for a 6-week period. Medial gastrocnemius tendon stiffness was measured in vivo using ultrasonography during ramped isometric contractions before and after training. Mechanical output variables were measured using a force plate during concentric and isometric efforts. Significant (p <0.05) training-induced increases in tendon K were seen for the plyometric (29.4%; 49.0 ± 10.8 to 63.4 ± 9.2 N·mm-1) and isometric groups (61.6%; 43.9 ± 2.5 to 71.0 ± 7.4 N·mm-1). Statistically similar increases in rate of force development and jump height were also seen for both training groups, with increases of 18.9 and 58.6% for the plyometric group and 16.7 and 64.3% for the isometric group, respectively. Jump height was found to be significantly correlated with tendon stiffness, such that stiffness could explain 21% of the variance in jump height. Plyometric training has been shown to place large stresses on the body, which can lead to a potential for injury, whereas explosive isometric training has been shown here to provide similar benefits to that of plyometric training with respect to the measured variables, but with reduced impact forces, and would therefore provide a useful adjunct for athletic training programs within a 6-week time frame.
タイトル
”プライオメトリックスVSアイソメトリクス トレーニングの腱と、筋出力に及ぼす影響”

多くのスポーツ動作、生活動作においておこっている伸張反射は未だに様々な研究がなされている.ガンマループに示されるように筋紡錘の伸展から始まる制御により、筋の収縮が起き、パワーを発揮するというモデルも示されています.一方で筋そのものにはそこまで大きな弾性的な働きをせず、反発動作は腱の弾性力によるものであるとも言われています..ペン州立大学のZatiorsky博士は彼の著書”Science and practice of strength training”の中で腱と筋出力の関係を示しており、そこでも筋肉の弾性力が腱のそれを上回る事が高いパフォーマンスを出す事に必要な事である、と述べています.これは、神経系の支配による筋の反射に加え、腱そのものの弾性力を最大限生かすためにそのような事が必要であると述べていると考えられます。従って、筋肉の弾性力に加え、腱の弾性力を高めることはパフォーマンスの向上に影響を与える事は想像に苦しくありません。

今回の論文では、トレーニングによる腱と筋出力への影響について調べています.

以下翻訳(意訳)
今回の実験の目的はプライオメトリックスとアイソメトリクス2種類のトレーニングの影響を腱の弾性力と筋出力の特徴において比較したものである.13人の被験者が選ばれ、6週間の間プライオメトリックス、もしくはアイソメトリクストレーニングを週2から3回行った.腓腹筋内側頭の腱の弾性力を超音波測定器を使用して測定した.測定は傾斜版を使い、アイソメトリックな状態、およびコンセントリックな状態でトレーニングの前後に測定した.機械的な出力はやはり、アイソメトリックおよびコンセントリックな状態でフォースプレート上で測定した.結果として腱の弾性力は、プライオメトリックス (29.4%; 49.0 ± 10.8 to 63.4 ± 9.2 N·mm-1)、およびアイソメトリクス (61.6%; 43.9 ± 2.5 to 71.0 ± 7.4 N·mm-1)トレーニングを行った場合に統計的に明らかに向上した.同様にRFD(出力の立ち上がり)とジャンプの高さの結果において統計的に有意な向上がプライオメトリックス( 18.9 及び 58.6% )およびアイソメトリクストレーニング( 16.7 及び64.3%)後に見られた.21%の変化と言う結果から腱の弾性力がジャンプの高さに影響を与える事がわかった.プライオメトリックスは高いストレスを身体にかけるため、ケガのリスクを伴う.それに対して爆発的なアイソメトリクストレーニングは同様の効果をより少ない衝撃力で得る事が出来ると言える.これは6週間という時間においては、スポーツトレーニングのプログラムにおいて、有用な選択肢であると言える.

以上

考察
今回の実験において非常に興味深かったのは腱の弾性力が大幅にトレーニングにより変化した事である.教科書的には腱などの組織は筋肉に比べてトレーニングに対する適応が遅いとされている(少なくとも以前の教科書は)が、今回の実験で行ったものに関しては明らかに弾性力が高まっている.これについては久保らの研究により腱内部の構成が機械的な弱さを補うために変化するのではないか?と考察している。また、この腱の弾性力の高まりとジャンプの高さの向上に関連性が見られた事は非常に面白い。しかし、今回の実験において純粋に足関節のみのコンセントリックなジャンプ(そんな事が可能なのか??)を使ってテストしているため、かなりデータにばらつきがある.もしかしたら連続ジャンプを体幹部を固定して行ったらまた、興味深い結果が出たかもしれない.
その他の文献においても腱の弾性力の向上は見られていると言う点で、プライオメトリックスに対する考え方を改める必要があるかもしれない。すなわち、よりアイソメトリクス寄りなジャンプで十分な弾性力、ジャンプ力の向上が得られるなら、より、保守的なアプローチでのジャンプトレーニングで腱の弾性力の向上を目指すアプローチも興味深い.

2 コメント

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爆発的なアイソメトリクス? (J)
2011-06-20 22:45:30
爆発的なアイソメトリクストレーニングってなにをやったのですか?
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興味深いです (Westwind)
2014-12-08 12:38:20
プライオメトリクスが筋腱の弾性力を高めることはしっていましたが、アイソメトリクスでも高められるとは非常に興味深いです。日本のマラソンランナーもブルワーカーをやるといいかもしれませんね(笑)
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