蒼天在眼 (そうてんまなこにあり)ーベランダで星を見る

昔、昔、天文少年でした。そして、今は、ベランダから、星を見ています。
いろいろの忘備録

ベランダから、お気楽近赤外線フィルタ?で銀河を撮る の巻

2021-11-14 09:30:46 | 天体観測

前回、いつかは、近赤外線で、銀河を撮ってみたいと書きましたが、ネットサーフィンしていて、偶然に視聴した天文リフレクションさんの「ゲリラライブ・R2フィルターでベランダ電視」というyoutube動画を見て、すっかり火が着いてしまいました。

天文ファンの金銭感覚的には、「マルミのR2フィルタ48mm径はすごく安い」です。あるもので済ます耐乏生活中のBalconが、お昼にちょくちょく食べている“野菜たっぷり塩タンメン”の一杯とほぼ同じ金額で購入可能です。ーむ、近赤外線撮影テストに使ってみたい、「失敗したら、昼飯抜きね」ということで、発注、翌日到着。早い!

色ガラスフィルタです。色素(Cd-S-Se)がガラスに練り込んであるタイプのフィルタで、別名Sharp cut-off  filterとも言われおります。普通は、ローパスフィルタですが、バンドパスフィルタも製造可能です。Balconは、大学の教養課程で、色ガラスフィルタを使って溶液中の物質濃度を測定する比色定量法の実験をしましたが、フィルタ特性とかは、すっかり忘れてしまったので、泥縄で復習いたしました。

一般的特性は、こんな感じ。

                     メーカー ホーム ページ

透過率50%の波長をカットオフ波長と言います。この図では605nmぐらいでしょうか。

カットオフ波長の長い方から、 V-R1,  R2, R3,  O1,  O2,  O3, Y1 と分類されています。マルミのR2フィルタのカットオフ値は不明ですが、一般にR2フィルタのカットオフ値は620〜640nmぐらいだそうですから、可視光を400〜700nmとすれば、赤外線のほかに、眼が赤く感じる可視光をやや透過する赤外線フィルタということになります。Hα(656.3nm)も通してしまいますしね。これが、吉と出るか、凶と出るか。サイトロンのIRPass干渉フィルタは、カットオフ 720nmぐらいですから、きちんとした赤外線フィルタですね。

一方、カメラの方ですが、赤外線感度の高いモノクロカメラを使うのがスジでしょうが、あるもので済まさねばならないBalconは、いつも使っているASI  294 mc  proで挑戦いたします。このカメラの分光特性はこんな感じ。

                          メーカー 公表グラフ

 

波長700nm以上の特性は、分からないですが、適当に外挿すると、残っている赤フィルタセンサの感度もピークの半分ぐらいになっている予感がします。

大雑把にいって、可視光の部分の減少分と感度の低下分を考慮すると、露出時間は可視光撮影の4倍で撮影する必要がありそうです。

使用する機材μ180cは、反射光学系なので、赤外線領域でも、理論上収差はないはずですが、フラットナ・レデューサは、屈折レンズなので、補正は可視光基準ですから、赤外線領域で、収差が出る可能性も考慮しなければなりません。結果、ピントが甘くなったり、コマ収差で、星像が歪んだりする悪影響が出現する可能性もあります。

では、ベランダへ出陣じゃ。対象は、前回と同じNGC 253 ちょうこくしつ座銀河です。

フォーマルハウトでピントと赤道儀の較正をして、ゲイン390 2分露出(可視光撮影時は30秒)で、30枚スタックしました。

Balconの感想

ちゃんと、白黒で写っています、やや青みがかっていますが、残っている可視光成分の赤の影響は、あまり感じられません。露出は、前回の4倍の2分間で、ちょうどよかったと思います。

フラットナ・レデューサの効きもまずまずで、周辺部のコマ収差も許容範囲だと思います。μ180cのような入門機でこの性能、高橋製作所、すごいです。

スタック枚数が違うので、単純に比較はできませんが、可視光で、撮影した前回より、背景のsky  glow、(大気散乱光)は大幅にカットされて全体のコントラストは改善しています。しかし、銀河の暗黒帯は可視光より、コントラストが低く見えます。

近赤外線撮影は、暗黒帯の散乱を受けない成分を受光するために、かえって、暗黒帯のコントラストが低下すると一般に言われているので、これをどう克服するかが、今後の課題です。

前回の可視光の写真はこんな感じ。

地平高度が低くなるとスタックエラーが頻発しました。大気の屈折率の擾乱によるシーイングの悪化は、改善しませんでした。よく考えれば、その通りですね。

どうやら、お昼は、抜かなくても済みそうですが、一枚、2分間の露出時間はちょっと辛いので、赤外線感度の高いカメラと、明るい反射光学系があれば、もっと幸せになれそうな予感がします。

おや、どこかで、「ダメダメダメじゃ」と天の声がします。



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2 コメント

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Unknown (starskys2)
2021-11-16 09:31:31
新星空の友です。
昨日(11/15)のシリウス伴星のコメント、ありがとうございます。
貴殿のブログを拝見しました。T社18cmミューロン望遠鏡を保有しているとのこと。
口径18cmであれば、シリウス伴星は写りますよ。
私はスカイウォッチャー製20cmドフソニアンGOTO望遠鏡でZWO社製ASI290MC動画カメラで撮影しています。
以前はコリメート撮影していました。動画撮影の方がハッキリきれいに撮影・ソフト現像処理できます。
この冬は18cmでシリウス伴星を狙って頂きたく思います。
尚、12月初旬にはレナード彗星(C/2021 A1)が明るくなる予報ですので、東京の空で観察・撮影にも挑戦して頂きたいです。
それでは、健康でマイペースで星空を楽しんで頂きますよう、よろしくお願いします。
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Unknown (balcon)
2021-11-16 11:46:34
コメントありがとうございます。
当方は、50年ぶりに天体望遠鏡を覗いて、諦めていた都内での天体観測が機材の進歩で、できることを知りました。
50年前に使っていたのは、吉祥寺の学校にあった五藤の15cm屈折赤道儀で、銀塩白黒写真を撮っていました。その頃から比べると格段に進歩しているので、驚いています。
いろいろ、試行錯誤しながら、方向性を探っている段階ですので、いろいろ教えていただけると幸いです。 銀河の後は、二重星や、系外惑星の測光、分光分析と夢は広がっております。
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