
「隣人13号」がそろそろ公開らしく、TVCMが始まった。
大分前に観たけれど、いつだったかと調べてみたら、2004年の8月5日!
随分前に試写会して、リサーチに時間をかけたんだなと感心した。
映画は、スニークブレビュー(覆面試写会)で、メディアスーツからのメール当選。
普通スニークブレビューと言っても、ヒントや公開日時が匂わせてあったりして、大体調べれば何の映画かわかるものが多い。
しかし、この時は本当に何の情報もなく、会場入りして、実際にフィルムが回り始めてもまだ、わからない!という状況だった。会場入りすれば、ポスターとか貼ってあったり、チラシの中に入っていたりするかな? 何て思っていたけれど、どれもなし。
私はホラー映画がダメで、予告も見られないほど恐がりだから、もしホラーだったらどうしよう! と本気で心配していた。
映画上映後、15分程度のアンケートに答える事が条件になっていたのだけれど、もし本当にホラー映画だったら、申し訳ないけれど、観られません!と断って、早々に退場する心づもりまでしていた。そして・・・。
映画の始まりがすごくホラーかスプラッターっぽかったから本気でビビッた! でもタイトルが出て、そのタイトルのマンガが原作(近々映画化される)と何となく知っていたからちょっと興味も出たし、ホッとした。
原作は井上三太の「隣人13号」。それまで井上三太作品を読んだ事はなかったし、松本大洋のいとこで、画風と雰囲気が似ているという位しか知識がなかった。家族が好きで帰ったら家に原作があった。
帰り道「隣人13号だったよ」と電話したら「え!?本当!」とうらやましがっていた。
家族の名前で出していたら良かったけれど、女の子がほとんどだったから、きっとターゲットは女性だったのだろうと思う。
何故? という気もする。観た限り、およそ女性向けでないから。だからこそ、女性の意見を聞きたかったのだろうけれど。
映画は小学校時代のいじめから凶暴な人格と二重人格になり、復讐するようになる男の話。
元の人格を小栗旬が、凶暴な人格を中村獅童が演じる。二人一役という難しい役を、違和感なく見せるのはCM、ミュージックビデオ等のディレクターで、今作が初映画となる井上靖雄監督の手腕によるものだと思う。
不快感をあおる映像と演出で、全編嫌な気分にさせられたけど、結末がどうなるのかと引っ張る力はあったのと、ラストが思っていたのとは大分違うイメージに展開していったのと、それが救いか。
中村獅童が怪演していた。今までクセが強いだけだと思っていたけれど、とても上手かった。
普通に演技出来るのね、と思ったけど、普通じゃない役だから、はまるのかな。
この映画の二日前に観た「モンスター」のシャーリーズ・セロンととても近いものがあった。
シャーリーズ・セロンも、上手いなあ、とは思っても、どの役も違和感があってあまり好きではなかったが「モンスター」は怪演だった。
「モンスター」の演技と容姿を観て、今までの違和感は彼女の美しさによる物だったのか、と思った。
ここまで醜くしないと演技力が表に現れない程の美しさ、と言えるのか、スタイル良くて背も高いし、普通の俳優と絡んでも何か釣り合わない感じがしてどうも居心地悪い感じ。
「モンスター」ではそこを逆に活かして、体の大きさも威圧感となって凄まじかった。
「隣人13号」の中村獅童は、登場シーンから、しばらくするまで、彼と似ているなと思ったが、確信が持てなかった。
特殊メイクをしている事を抜かしても、それほど彼の演技力が凄まじく、本物の変態にしか見えなかったから。
これ、誰!? と思っていて、それが中村獅童だと気づいた時には、驚きと共に爽快感すら感じた程。やってくれるよな!と。
そして、「モンスター」のシャーリーズ・セロン同様、あそこまで醜くしなければ表に現れてこない演技力という物もあるのかなという結論に達した。
内容、見せ方や映像が結構、相当にエグいので、途中で席を立つ女性がいるかと思ったが、最後まで誰も退席しなかった。
「モンスター」試写会では途中退席するカップルがいたけれど、私から観るとこちらの方が耐えられない人がいそうな気がする。
物語がいじめ問題に深く関わるものなので、多くの人に観て欲しい気もするけれど、暴力描写の激しさは結構なものがあるので、誰にでもと勧められる映画ではない。
それとも、いじめ問題とはこれほど残虐なことなのだと、そういう観点で観れば問題の深刻さを受け止める助けになるのか?
今、実際にいじめられている人やいじめている人、過去にいじめられてきた人、いじめてきた人は、この映画を観ようと思うのだろうか。
色んな意味で、本当のスニークブレビューはとても意義のある、観る側に価値のある上映方法だと改めて感じた。