ガンバレ よし子さん

手作りせんきょ日記

シベコン by 庄司紗矢香(1)

2010年01月09日 | シベリウス バイオリン協奏曲
この曲はまだ一度も聴いたことがなかった。

でも、ソリストが庄司さんなら聴いてもいいな、
そう思ってチケットを取った。
この曲をすんなりと理解できるかわからないし、
この曲に感動する自分の姿もうまくイメージできない、でも、
庄司紗矢香の演奏なら聴く価値はある、そう思って。

庄司さんの演奏で印象深いのは
2008年に東京交響楽団と共演した、ストラヴィンスキーのコンチェルト。
オケを向こうに回して繰り広げられる丁々発止のやり取りと、
要所要所で小気味よく決まる華麗な技の数々。
この曲が持つジャジーな側面(1930年作曲)に、
現代っ子らしい闊達さがぴったりとマッチしていて、
無敵の天才少女の輝きに心から拍手を送ったものだ。

演奏する庄司さんから、また元気をもらえたらいいな、
この日もそんなイメージを抱いて私は開演を待った。
伴奏はヤルヴィだし、申し分ない、そう思って。

もしも彼女がチャイコフスキーのコンチェルトを演奏していたら、
あるいはメンデルスゾーン、もしくはブルッフのコンチェルトを演奏していたら、
私は自分がイメージした通りの演奏を聴けたのかもしれない、今ではそう思う。
でも、この日のプログラムはその中のどれでもなくて、
拍手とともに舞台に登場した庄司さんは、なんだかいつもと様子が違っていた。

まず衣装に驚いた。
シフォン(オーガンジー?)をたっぷり使ったドレス。
色は北欧の湖畔を思わせるエメラルドグリーン。
両肩から足元へ、ドレスと同じ素材のヴェールがたなびいている。
とても存在感のあるドレスである。気合い十分、という感じ。
次に髪型。
長~い髪を、ふわふわのソバージュにしているのだが、
もともと髪の量の多い人なので、妙にかさ高く見えて、まるで歌舞伎の連獅子のよう。

インパクトはある。
でも、衣装、髪型共に、長身のモデルならまだしも、
小柄な庄司さんにはいささかボリューム過多な気がした。
そのため後方から見た全身の印象(P席ゆえ後ろ姿しか見えない。)は、
緑色のてるてるボーズというか、キッコロとモリゾーというか、
はっきり言って、似合わない。

ステージに登場してくる瞬間からすでにその人の音楽は始まっている、というけれど、
衣装について、庄司さんは過去のインタヴューで次のように語っている。

「当たり前のことですけど、コンサートに来る方は、見ている。もちろん舞台上ではきれいでなくてはいけないとか、それが大切だというのは分かります。ただその視覚的な要素が音楽の妨げにならないようにしたい。顔の表情だったりドレスの色だったりではなくて、音楽を純粋に音楽として、私の表現したいものを受け取ってほしい。」

舞台上で自らの衣装が与える印象について、
女子ヴァイオリニストの面々は、どれだけ意識しているのか。
これは、なかなか興味深いテーマである。
そして庄司さんの基本スタンスは
ルックスと演奏は別のもの、ルックスの加点には頼りません、
ということらしい。よほど演奏に自信があるのだろう。

とはいえ、女が表現者として舞台に立つからには
その衣装のセレクトに本人の自己イメージが現れるのは避けられない。
(その点男子は気楽である。スーツか燕尾服のどちらかだから。)
たとえば、
色香で惑わす露出系の諏訪内晶子、
ゴージャス女王系のアンネ=ゾフィー・ムター、
視覚効果はミニマム、演奏で勝負の五嶋みどり、などなど。

庄司さんはいったいどのお姉さんの路線へ進むのか、
私はその成長と共に、楽しみに見守ってきた。
しかし、ここにきて
彼女は今までにない、新たな路線を開拓したようだ。

いうならば、ファンタジー系?




・・・庄司さん、ひょっとして、、森ガールにイメージチェンジ、ですかい?
と、心の中でひとり突っこみを入れている間に曲が始まった。

シベリウス作曲ヴァイオリン協奏曲二短調。

それが、この曲との出会いだった。 ( 第2回へつづく )

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