「ああ、おかえり 」
カイさんと俺が戻ると、オミさんはカッコいいスーツを着てウロウロしていた。
どうだった、とオミさんが尋ねたのをさえぎるようにカイさんは、
「あれ、そのスーツどうしたの?随分 かっこいいじゃん 」
するとオミさんは不満そうに、
「無理やり オーダーで作られちゃったの 」
すると、カイさんは面白くて仕方がないといったように笑いながら、
「え? もしかして淡泊な方のおじさん? 」
「ううん、しつこくて激しい方のおじさん 」
「まだいたんだ しつこい方のおじさん 」
オミさんはロを尖らせてうなずいた。しかしまだカイさんは、
「そういえばしつこいおばさんの方は? 」
ボタンを気にしながらオミさんは、
「ん? 旦那さんにバレちゃって海外に飛ばされたみたい 」
俺はちょっとざわっとした。
これって 例の枕営業っていうやつではないだろうか。
いやオミさんはいいんだけど、カイさんが承知しているとは思わなかったので、ショックだった。
「そしたら マンションと車は消えちゃったんだね 」
「まぁ、今のところはね 」
でも YouTube でそんなに変な営業しなきゃいけない相手って何だろう…
この前 BS の深夜番組に出たって言ってたけど、
オミさんは地上波には出たくないって言ってるし、
この前雑誌に出たって言ってもフクちゃんのお兄さんのコネだって言うし…
するとオミさんは、
「そうだ、ダイキ君、来週の木曜日、あけられる? 」
「はい…」
「ダイキ君の歓迎会。フクちゃんも来るから 」
ややっ、好機到来か!
「はい。ありがとうございます! 」
フクちゃんはライブハウスの店長だから、仲良くできたらいつか華島さんの情報が得られるかも…
俺が嬉しさを押し隠していると、オミさんは今日の神社に関する相談をカイさんと始めていた。