どすこい!お人形小物製作道

お人形小物の製作についてのあれこれ

ハルモニアにちょうどいいレースの扇子の作り方

2023-10-02 13:41:13 | その他小物

GOOD SMILE DOLL SUMMIT ではワンオフドールのチーム(ERIMO × nico/竜田 × Atri × Sugar Confectionery × アトリエ・マタン)にも参加して椅子と扇子を担当しました。

椅子の方は布が違うだけで作り方は先日の投稿と同じなので、扇子の作り方を記録のために簡単にまとめました。

実はドール用の扇子は過去に何度もトライして失敗してきたのですが、今回はチームの皆さんからアドバイスをいただいたおかげもあってすんなりと完成しました。
過去の失敗の最大の原因は、開閉できる扇子にこだわり過ぎたこと、ということで今回の扇子は開きっぱなしで閉じません。と、この作品の最大の欠点をさりげなく白状したところで、さっそく作り方にいきましょう。

材料は、0.2mmの白の塩ビ板、ラッセルレース(幅2.8cm)、ビーズ(MIYUKI #577,DB31 11/0)、丸カン(ゴールド3mm)、Tピン(ゴールド0.5mm)、刺繍糸、ラインストーン(ホワイトオパール SS5)、テグス(0.2号)
道具はカッティングマシン、ピンバイス(0.5mm、0.6mm、0.8mm)、デザインカッター、針
消耗品は両面テープ、接着剤、シール紙、厚紙

いずれも市販品で特殊な道具と言えばカッティングシートのカッティングマシンくらいでしょうか。
0.2mmの白の塩ビ板だけはちょっと特殊で、国内で小売りしているのは御茶ノ水の画材屋のレモン画翠さんとかハンズくらいしか知りません。とはいえ、うちではうちわキットの持ち手やビーサンキットの鼻緒に大活躍している材料です。

まずはカッティングマシンで塩ビ板を切ります、と言いたいところですが同じ塩ビでもカッティングシート用の機械ですから切れる厚さが10倍違います。そこを無理矢理に切るわけですから機械もいい迷惑だと思います。刃先の設定もかなり試行錯誤しました。無理矢理切った結果がこれです。表面をケガいただけになります。

そこで穴明け位置にピンバイスで地道に穴を明けていきます。穴明けの前にポンチ穴を明ける要領で極細の目打ちで軽く刺しておくと正確な位置に穴が明けられます。

外形線は縁日の型抜きのようにデザインカッターで切れ目を入れて、少しずつ折っていき扇子の骨を完成させます。

出来上がった扇の骨を扇の要の心棒としてTピンを通しながら印刷しておいた台紙に両面テープで仮止めしし、骨同志を接着します。(蛇足)この写真を撮るときにiphoneのカメラに黄色い枠がふわふわ出てきたので「もしかしてこれってQRコードなの?」って感じで必死に読もうとしていたのかもしれません。人間が単純な図形が規則的に繰り返されていると認識するのに対して、機械の目はまた別の見方をしているようで興味深いです。

骨の上にラッセルレースを骨の細い部分の幅で切って貼り付けます。円弧の形のレースみたいな都合のいいものはないので、骨と骨の間に切込みを入れて余ったレース同士を接着します。

 

表面にレースを貼ると裏面は骨がむき出しになるので、裏面にはラッセルレースの下部のハシゴ状の部分を切って貼付けました。

扇の要の心棒として両側から短く切ったTピンを接着します。

(補足)Tピンをペンチやニッパーで短く切ると断面が平面になりませんが、塩ビ板や厚紙を何枚か貼り合せてピンバイスで穴を明け、そこにTピンを差し込んで反対側からヤスリで削ると綺麗に平面にできます。

ビーズで飾り綴じ紐を作って、丸カンと刺繍糸でタッセルを作ったら扇子に結びつけます。

最後に両面にラインストーンを貼り付けて完成です。

 

完成サイズは半径約3cmの扇形、開き角は150度です。

ここで紹介した扇子はワンオフにセットしたものとはタッセルの色や綴じ紐の長さが微妙に違います。

今回作った扇子はワンオフドールをきっかけに作ったものですが、扇子そのものはワンオフ作品ではないので、いずれ扇子だけ単独販売するかもしれません。

また、カッティングデータを修正すれば拡大版、縮小版も可能です。実際には縮小版はかなり難度が上がると思いますので、拡大版の実例をご紹介します。

別のレースを使って4/3(133%)拡大版を作ってみました。実際には自由に拡大できるわけではなく、レースの山型の部分の幅によってサイズが決まってきます。今回は元のレースが7.5mm間隔だったのに対して10㎜間隔のレースがあったので自動的に4/3サイズに決まりました。

塩ビ板に開ける穴を1mm、0.8mm、0.6mmに変更して、綴じ紐も少し長めにし、ラインストーンもSS5からSS9に変更しました。

もうワンサイズ大きなレースもあったので、そのサイズでも作ってみました。山型の部分の幅は12mmだったので、倍率は元の160%になります。穴のサイズとラインストーンもスケールアップしました。扇の要の金具は0.9mmのTピンがあればよいのですが、ないので直径1mmの真鍮釘を使いました。

それぞれのサイズの扇子がハルモニア以外のどんな人形に合うがよくわかりませんが、サイズ比較はこんな感じになります。身体と扇子の大きさのバランスも大切ですが、顔よりかなり大きな扇子はハリセンっぽく見えますね。

 

3つサイズのパーツや穴明けの直径を以下の表にまとめました、

これ、手持ちのレースやビーズパーツを使って作りたい人もいらっしゃるような気がします。すごく楽しそうだし、私よりずっとカッコイイ扇子ができると思います。

いまレモン画翠さんの通販サイトを見てみたら白は売り切れになっていました。ここは面白い商品があって、白のシートに銀とかチャコールに塗装したものを売っています(ちょっと高いですが)チャコールの骨に黒いレースとか赤いレースとかで扇子を作ったら面白いものができそうです。ハンズのサイトでは「カンキ化工材 塩ビ ツヤ消し板 275×400×0.2 シロ」という商品名で在庫がありました。

ということで、自作用に、RolandCutstudioのカットデータと貼り付け台紙(シール紙にプリントして厚紙に貼付け)を置いておきますのでご自由にお使いください。(連絡・許諾不要、使用・改変可、クレジット不要、商用利用可)

ハルモニアサイズ カットデータ(cst) 台紙データ(pdf)

133%拡大サイズ カットデータ(cst) 台紙データ(pdf)

160%拡大サイズ カットデータ(cst) 台紙データ(pdf)

カットデータは「名前を付けてリンク先を保存」

更にカッティングマシンはないけど自作したいという方のために、筋目をつけただけの塩ビ板を素材として販売するくらいはお手伝いできると思います。こちらも連絡・許諾不要、使用・改変可、クレジット不要、商用利用可ですが、カートの準備はしばらくしてからになります、ってはたして需要はあるのかしら。

 

 

 


ハルモニアのためのアンティーク風椅子の作り方

2023-10-02 10:46:48 | ソファ

GOOD SMILE DOLL SUMMIT で販売されるハルモニアのためのアンティーク風椅子の作り方を記録のために簡単にまとめました。

今回の椅子の特徴は従来のスタイロフォームの下地に布を木目込み細工の要領で差し込む方法に加えて、樹脂部品を組み合わせました。表現の幅を広げるためにはいつかは実現したいと思っていたのですが、なかなか実行に移す機会がなかったところ、今回のお話をいただいてちょうどよい機会だと挑戦してみました。

椅子の機能として必要なサイズは座面の高さ、幅、奥行、背板の高さ、幅、傾き、肘掛けの高さ間隔といったところです。実際にモデルを座らせて様子を見るために、スタイロフォームでモックを作りました。

   

装飾的な外観は仏師の目で見ればこのように見えます。

 

今度は三面図を描きます。これから作るそれぞれのパーツの基礎になる図面です。

まず樹脂部品をCADソフトで設計します。

3Dプリンタで出力したものの細部を仕上げて複製原型にします。

原型をシリコンで型取りしてウレタン樹脂で複製したものを塗装すれば樹脂部品は完成です。

次にスタイロフォームで下地を作ります。

スタイロフォームを切り型紙で挟んで熱線カッターで切り出し下地の形を起こしていく手法は、キットのソファと同じなのですが、今回はより複雑に7パーツをx,y,z方向または複数の方向の型紙を組み合わせて、接着後に更に細部を削って優美な曲面を実現しています。

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型紙で切り取った状態がこちら。

各パーツ接着し、細部を削って形を調整し、布を挟む溝を切るための線を描き入れます(一部は型紙)。構造上弱いところは爪楊枝で補強して、座面の中にバランス調整のために重りを仕込みます(黄色い部分)。

これで下地が完成です。

下地の各区画にキルト芯を挟みながら布を差し込んでいく作業を行います。

これがキルト芯の型紙です。

そしてこちらは張る布の型紙です。

 

星形のパーツは飾りボタンの型紙です。

キルト芯を挟んで布を差し込んでいきます。

飾りボタンは前から差し込んで後ろで固定します。

最後に樹脂部品を組み付けて鋲(Tピン)を打ったら完成です。

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