どすこい!お人形小物製作道

お人形小物の製作についてのあれこれ

ワークショップお疲れさまでした

2012-03-24 20:57:58 | ワークショップ
いろいろな事情で超少数となってしまいましたが、楽しく終えることができました。
ありがとうございます。

いつものように、作品を紹介させていただきます。





木を使った椅子を初めてキットにしてみました。
下はそのための試作ですが、生徒さんの作品と比べると布の違いでかなり印象が違いますね。







芋寺あそび(5・終)

2012-03-21 22:23:01 | iModela
さて、いよいよ切削です。たとえばWordで文書を作って印刷するとプリンタから印刷されるように、Shade12からiModelaに直接指示して切削するという風にはできません。Shade12はあくまでも汎用的なモデリングソフトなので、iModelaに切削の指示を出す機能まではありません。一度保存して、ローランドDG提供のModelaPlayer4というソフトで再度読み込んでから切削の指示を細かく指定する必要があります。



切削に関する予備知識が皆無だったせいで、この切削指示の指定にも苦労したのですが、簡単に手順を説明すると、
(1)面出し 水平じゃないかもしれない材料の表面を削って水平にする
(2)荒削り 目的の造形物に近いところまで荒く削り取る
(3)仕上げ 荒削りされていることを前提に造形物により近い形に削る
こんな手順で、仕上げ削りは回転刃を取り替えたり回転刃が動く方向を変えたりしながら複数回繰り返すこともあります。

回転刃はボール型とストレート型の二種類があります。ボール型は球形の回転刃の下半分を使って削り、滑らかな曲面の切削に向いています。ストレート型は円筒形の刃の底面と側面を使って削ります。水平面、垂直面の切削に向いていて刃が長いので深く削ることができます。
表面を削っていく方向にも様々なメニューが用意されていて、X軸方向往復、Y軸方向往復、等高線状、らせん形等から選んでだんだん滑らかにしていきます。
回転刃の送りピッチや切り込み量(深さ)の設定もよくわからないままに何度か試行錯誤して自分なりの最適値をみつけました。

いよいよ本当に切削です。iModelaに両面テープで材料を取り付けます。ここまでコストダウンするかと最初はびっくりしましたが、慣れてしまうとなかなか合理的なやり方です。この両面テープも最強を求めていろいろ試してみたのですが、ニトムズ ハンディカット多用途強力両面テープ10 J1300が最強と決めました。薄くて、手で切れて、横ズレがなくて、はがしやすいといいことずくめなのですが、唯一の難点ははがした後にのりが残ることです。ただ、これは粘着力とトレードオフの関係なので仕方ないところもあります。
材料を取り付けたら、iModela controllerというソフトを立ち上げて、X,Y,Z座標の原点を設定します。
ModelaPlayer4で切削開始を指示するとiModelaが動き始めます。



まずは荒削りをX方向往復の走査線で削ったところです。
荒削りは平面から削り始める前提なので、3mmの深さを削るときに一回の削り込みの深さを0.5mmと指定しておくと6回に分けて削ってくれます。



仕上げをX方向往復の走査線で削ったところです。
仕上げは荒削りが終わっている前提なので、一箇所を一回だけ削ります。仕上げは直径の小さな刃先で少しずつずらしながら削るので、一般に荒削りよりも時間がかかりますが、凹凸の大きな形だと荒削りの方が時間がかかることもあります。



最終的な仕上げはパテやラッカーパテを使って手作業で行いました。出来上がった右から原型(反転型)、それから作ったシリコン型、そしてレンズをヒートプレス加工するための部品です(これもiModelaで削り出しました)。



レジンを流してレンズを加工し組み立ててエメラルドウィッチ用サングラスの完成です。
現在はミディブライス用メガネ、ブライス用メガネを製作中です。販売はまだしていないので採算的には持出し続きですが、製作を通じて新しい知識やノウハウを得られて、もう十分に元を取った気分です。あくまでも気分ですが。





芋寺あそび(4)

2012-03-19 21:20:13 | iModela
iModelaの機械としての完成度とは関係なく、どうしても越えなければならない壁があります。もしかしたら、私のような前提知識ゼロの者にとっては、そちらの方が最大の参入障壁かもしれません。コンピュータ制御で立体物を削り出すということは、コンピュータ上で立体物のデータを作らなくてはならず(モデリングというそうです)、そのデータは3DCGと言われる分野のソフトを使って作るのですが、このソフトをいわゆるお絵描きソフトで2次元の絵を描く延長のつもりで使い始めると頭が大混乱に陥って投げ出してしまうかもしれません。

価格的にはBlenderというフリーソフトがあったり、メタセコイヤという5000円くらいのシェアウエアがあったりして、割と気軽に使い始められるのですが、私は上記2つのソフトとも途中で挫折しました。今にして思えばソフトが悪いのではなくて自分の我慢が足りなかったのだと思いますが、これも相性というか縁というものかもしれません。結局、私が使っているのはShade12(近日13が発売予定)というソフトで、ダウンロード版の一番安いセットで9000円でした。

3DCGソフトを勉強する一方で前回書いたハード面の工夫を積み重ねて、第一号作品の完成まで波乱万丈の旅となったのですが、そんなことになるとは露知らず、昨年末にiModelaを購入したのは、今にして思えば蛮勇としか言いようがありません。

前提知識ゼロを自覚しながらもiModelaを買ってしまったのは、はっきりした目的があったからで、それはドール用の小物の原型を思い通りに作りたい、これに尽きます。
目的がはっきりしていれば、多少の苦労は乗り越えられるものですが、逆にただなんとなく買った道具は使われなくなるのはこの機械に限ったことではありませんね。

さて、話を戻してShade12を使ってPC上に立体データを作ろうとソフトをいじりながら試行錯誤していた時のことです。いま、手作業で作っている方法は、オリジナルの原型を作って、それを粘土に埋めて片側のシリコン型を取って、今度は粘土を取り除いて反対側のシリコン型を取るという手順でシリコン型を2つ作って、2つを合わせて間にレジンを流し込んで固める方法なので、同じように原型を削り出すのかな、でも両面切削ってどうやるんだろうとか悶々としていました。しかし、世の中には頭のいい人がいるもので、あるサイトでこの課題を一気に解消する手法が紹介されていました。
原型を粘土に埋めた形ごと削り出す。粘土を取り除いた反対の面もその形ごと削り出すという方法です。この型をすでにあるシリコン型から作る場合は「反転型」と呼びますが、最終形の反転型をいきなり削り出してしまう方法になります。
これならば、シリコン型が劣化するたびに毎回原型を粘土に埋めていた作業から解放されるだけでなく、いつも同じシリコン型をいくつでも簡単に複製できるようになります。まさに蒙を啓かれるような素晴らしいアイデアだと思います。

最初の作品は、エメラルド・ウィッチの新型メガネと決めました。非常に小さいメガネなので、iModelaの切削可能範囲X:84mm、Y:55mm、Z:26mmの範囲で両面の反転型を一度に作ることができます。
Shade12で作った最終形はこんな形ですが、作る過程は手作業と同じで、原型を作り、粘土で埋める接合面を作り、両方をコピーして裏返す、という手順でPC上で手作業のやり方をなぞっているようなものです。一般的なシリコン型はレジンの注入方向に対して垂直に型を割るのですが、メガネの場合はラメ入りを作るときのラメ粉の沈殿を考慮しなければならないので、横方向の分割になっています。
この型でフロント枠、左右のつるの3部品ができることになります。あとはレンズと蝶番をつなぐピン2本でがあれば材料は揃います。



芋寺あそび(5・終)





芋寺あそび(3)

2012-03-18 21:07:00 | iModela
初回の最後にも書きましたが、iModelaを使い込むほどにありがたいのは多くのユーザさんが工夫の数々を公開してくださることです。おかげでどんどん使いやすくなっていきました。コストダウンのせいで不足している機能をユーザが補っているという皮肉な見方もあるでしょうが、この価格にこそ価値があると思うユーザが自助努力によって価格を越える価値を与えていると見るべきだと思います。

以下に劇的な解決に至ったいくつかの問題について書いておきます。

まず、騒音問題です。一分間に一万回転もする回転刃でものを削るので稼働中はかなりうるさいです。掃除機くらいの音がしますからとても日常生活をしている部屋に置けるものではありません。しかし窮すれば通ずとはよく言ったもので、身近な物を使ってこの問題を解決してくださった方が現れました。
ホームセンターにある密閉式の収納ボックスを上下逆に置いて内部にスポンジ状の吸音材を貼って、USBと電源のケーブルはケースのフタに穴を明けてケーブルブッシングを通します。これで稼働中でもテレビの音量を2くらい上げれば気にならない程度にまで騒音を軽減できました。置き場所は少し広い面積が必要になりますがそれを補って余りある効果だと思います。

次に、回転刃の交換問題です。後に詳しく書きますが、削り始めから完了まで何度か回転刃を交換する必要があります。このとき、正確に同じ位置に刃先がくるように交換しないとせっかく機械が正確に削っても刃先のズレの分だけ仕上がりがずれてしまいます。



これを防ぐために本当にシンプルなんですが効果絶大な治具を考えた方がいらっしゃいます。それは金属パイプを利用する方法です。パイプの底を埋めて上から回転刃を入れ、パイプの開口部をコレットに密着したところで締め付ける。これによってコレットから刃先までの長さはいつも一定になります。私はもうちょっと改良して使っています。まずL字型に取っ手を持ちやすくしています。そしてパイプの中にモールをらせん状に巻いたものを取り付けてコレットに差し込みやすくしています。この道具はファンを押し込むのにも便利に使えます。


最後に、X軸の固着問題です。とくにケミカルウッドを削ったときに切削屑は粉のようになって舞い上がります。一方、X,Y,Z軸を動かすしくみはいずれもネジとすべりネジの組み合わせで表面にはグリスが塗ってありますから、荒削り工程のような時間当たりの切削量が多いときには、ときとして粉状の切削屑が付着して固着しネジが動かなくなるトラブルが発生します。とくにX軸は長さが最も長く、刃先からの距離が最も短く、なにも覆うものがない状態ですから、最も切削屑による影響を受けやすい構造になっています。マニュアルには頻繁な掃除が必要、とくにX軸は切削途中で一時停止して掃除してください、と注意喚起してあります。購入後にこれを読んだときには正直言って騙された気分になりました。勝手な思い込みといえばそれまでなのですが、切削中はまったく手間要らずで自動的に削ってくれるものだと思っていたからです。

この問題にもシンプルで効果的な解決策がありました。手前味噌で恐縮ですが、ある部品を自作して取り付けることにより劇的に改善し、長時間の連続稼動も安心して任せられるようになりました。

そのパーツができるまでの経緯は以下の通りです。
iModelaの本体には掃除用のブラシが付属していたので、最初はそれを使って軸のネジの掃除をしていました。しかしいまひとつ掃除の効率が悪い気がして、「細かい隙間から異物をかきだす」という機能が共通するのは、と考えて歯間ブラシを使ってみたところ、とても効率よく掃除ができることが分かりました。軸のネジの掃除だけでなく、歯車の間やモーターの隙間の掃除にも向いていました。その間にもX軸の固着問題は依然として悩みの種だったわけですが、あるとき「iModelaが動いてる間に、こびとさんが軸掃除をしてくれればいいのに」という妙な妄想をしたことからこの部品が生まれました。切削屑がどうしても付着してしまうのならば、すべりネジの両端に歯間ブラシを固定して掃除してやればすべりネジへの噛み込みは水際で防げるはず、とそこまで思いつけばあとは取り付け方法だけなので、うきゴムを使うしくみはすぐに考え付きました。市販の歯間ブラシはいろんなサイズや毛質のものがあるので、いろいろ見比べて直径4mm(M)硬めの毛質のブラシを選びました。うきゴムは歯間ブラシが差し込めて取り付け時に適度な弾力があってずれないものということで内径2mmのものを選びました。







上は切削直後の写真です。周囲が粉だらけなのにX軸だけピカピカなのがお分かりいただけると思います。もうかれこれ50時間以上使っていますが、まったく性能は落ちていません。

どなたでも簡単に自作できると思いますが、もし材料が手に入らないとか作るのが面倒な方がいらっしゃいましたら、
こちらでほぼ実費で販売しています。

芋寺あそび(4)





芋寺あそび(2)

2012-03-17 21:00:00 | iModela
iModelaの仕様と動作のしくみを簡単に説明しておきます。機械も制御も門外漢のど素人の説明ですので、誤りがあるかもしれませんが大筋は外さないように努めます。

本体のサイズは214(幅)×200(奥行)×205(高さ)mm、重さは1.7kgと大変コンパクトです。
机上に置く場合は回転刃や材料の着脱のために、もう20cmほど奥行きに余裕があった方がいいようです。
これにUSBケーブルがついてPCと接続し、電源は家庭用のコンセントからDC24Vに変換して供給されます。

詳細に観察してみると、身を削るようなコストダウンの跡が随所に見えます。プラスチック部品の多用、部品の標準化、共用化は常道として、耐久性についても、摩滅に対しては部品交換で対応することで思い切った適正化をしているように見えます。そしてなによりも上位機種の開発と製造で培われたノウハウやソフトウェア資産が活用できることが最大のコンピテンシーでありかつコスト圧縮にも貢献しているように思います。

このコストダウンの努力からすると大した問題ではないのですが、一点だけ理解できないのは大量の緩衝材が詰まった巨大なトランク型のキャリングケースです。本体と付属品はこれに入って届きます。おそらく持ち運びできるようにという配慮だと思うのですが、いくら小さいからといって果たしてどれだけのユーザがこのトランクを使って持ち運ぶのか大変疑問です。おそらく可搬性を指向してこの大きさを目標に置いて設計したわけではなく、最大切削範囲を決めてそこから筐体寸法を最小化していく設計をしたのではないかと思いますので、可搬性は後付けのおまけと考えてトランクケースはオプションでいいのではないかと思います。それにユーザさんは私も含めてインドア派が多いと思いますので、その点も可搬性を重視しなくてもよいと考える事由になると思います。
オプションといえば、本体の左右の板や前後や上のカバーも使っていないのでオプションにしてほしいところですが、さすがに製品としての見栄えってこともありますからこれは仕方ないでしょう。



iModelaの動作のしくみを簡単に説明します。機械に向かって左右の方向をX軸方向と呼んで、X軸方向に長いネジが2本わたされています。それぞれのネジには長いナット(すべりネジというそうです)がついていて、すべりネジは台に固定されています。
長いネジを回すとすべりネジと台が左右に移動します。つまりネジの回転が台の左右の平行移動に変換され、回転の量によって左右の移動量が制御できるわけです。ネジを回転させるためにはステッピングモーターというものを使うそうです。普通のモーターは電気のON/OFFと電流の量でアナログ的に回転させるのですが、ステッピングモーターはパルス電力で回るので、デジタル制御と相性がいいそうです。(このあたりよく分からないまま転記しています)
一方、機械に向かって前後方向はY軸方向と呼んで、X軸と同じように本体の下側に2本のネジとすべりネジで材料を置く台を動かすしくみになっています。
さらにX軸で動く台の上には同じように上下方向に動くしくみが乗っていてZ軸と呼ばれています。Z軸はドリルのような回転刃を回すモーター(このモーターはマブチモーターみたいなよく見かけるモーターです)を上下に動かしています。
まとめると、3つのステッピングモーターでX軸方向とZ軸方向に回転刃を動かしながら、材料をY軸方向に動かして正確に空間上の位置を決めて、その位置で回っている回転刃で材料を削る。こんな仕組みになっているようです。



さて、ここで問題です。上記のようなシステムで削ることができないものがひとつあります。どれでしょう。答はそう、Cですね。回転刃は垂直に上から下にしか動きませんし、材料も平面上を平行移動するだけですから、この形の下半分には刃が届きません。
もちろん材料の上下を入れ替える等の手動の操作を行えば、これに近い形は造形できるのですが、少なくとも自動的に削ってくれる機構はありません。
もっと高級な機械ではX軸、Y軸、Z軸そのものを回転させる機構があってそれぞれA軸、B軸、C軸というそうですが、その組み合わせの動作でいろんな方向から削れるそうです。

芋寺あそび(3)