『伊勢市長を首つり自殺に追い込んだ執拗無言電話』
ー震源は「40億円駅前再開発」か「職員リストラ問題」かー
週刊ポスト2006年3月17日号38ページ
「お伊勢さん」の名で親しまれる伊勢神宮のお膝元、三重県伊勢市が揺れている。2月27日、現職市長加藤光徳氏が遺体で発見された。自宅近くの雑木林で首をつっていたのである。
「遺体発見現場は沼地に近いようなぬかるんだ場所で、大変見つけづらいところだった。高さ3ー4メートルほどの木の枝にベルトを掛け、めがねをかけた状態で発見された。遺体には外傷もなく、争った形跡もない。ベルトは息子さんのものだったようです。」(捜査関係者)
加藤氏は、前日の17時15分に散歩に出かけ、そのまま行方不明になっていた。警察は自殺と見て捜査を続けているが、地元ではいくえ不明情報が流れたときから「拉致され、殺されたのではないか」という不穏な噂まで流れていた。
その日、加藤氏がいつもとは違う信号を発していたという証言がある。加藤氏の友人でもあり、高校時代の先輩に当たる長岡敏彦市議がこう振り返る。
「昼12時頃、彼から電話があったんですよ。いつもは携帯からかけてくるのに、その日は自宅の電話からだった。めづらしいね、と聞くと、『ちょくちょく、無言電話があるんだ』といってました。大変だなと思って、気分転換に夜一緒に酒を飲もうと約束したんですが、彼は現れませんでした。」
友人への突然の電話は、加藤氏からのSOSだったのかもしれない。長岡氏に漏らした自宅への執拗な無言電話は昨年秋頃から続いていた。地元有力者の一人が語る。
「昨年11月の市長選の頃から、昼夜を問わず嫌がらせの電話がかかっていたときいています。奥さんも精神的に参ってしまい、電話番号を何度も変えたほどです。それに市長選までは自家用車で通勤していたのに、最近は公用車の送迎で出勤するようになったんです。いま思えば何か身の危険を感じていたのでは・・・」
市役所に嫌がらせの電話がかかってくることも多かったようで、後援者の一人には「カミソリ入りの手紙が送られてくることもある」と打ち明けていた。
加藤氏はなぜそこまで執拗な嫌がらせを受けたのか。その原因の一つと噂されているのが市職員のリストラ問題だ。伊勢市は昨年11月1日に近隣四市町村が合併し、新たな市としてスタートを切っている。加藤氏は職員の給与を保障する一方、10年かけて市の職員数を1割削減する案を出した。そこに職員から反発があったという。
「加藤氏町は行政改革の中で、人件費を削減する必要があると考えていました。職員から不満の声や意見が出ていたのは事実です」(伊勢市職員課)
だが地元で不穏な噂が立つ最大の理由は、加藤氏が死の直前に発表した総事業費40億円の「駅前再開発計画」が大きな波紋を広げていたことだ。
現職大臣の登場で駅前は騒然
駅前再開発計画は、昨年の市長選で最大の争点となった。この市長選は、一地方都市の首長選挙としては異例とも言える熾烈な戦いだったと語り継がれている。
選挙は民主党の推薦を受けながらも自ら「市民党」を標榜して立候補した旧伊勢市長加藤氏と、自民党の推薦を受けた旧小俣町長O氏との一騎打ちとなった。下馬評は、地盤のある加藤氏有利と見られていたが、総選挙直後ということもあり、自民小泉旋風の追い風を受けるO氏が終盤激しい追い上げを見せる。
投票2日前に、O氏は総決起集会を開いたが、なんとそこに片山さつき代議士が応援に駆けつけ、「市政を任せられるのは、小泉首相と同様に改革を訴えるO氏しかいない」と3000人の聴衆の前で声を張り上げた。
さらに翌日は、竹中平蔵大臣も駆けつける。「伊勢でも構造改革を」と訴え、通勤客でにぎわうJR伊勢市駅前には2000人の聴衆が集まり、騒然となった。
「現役の大臣が伊勢の市長選にやってくるなんて、これまでに聞いたことがない。O氏陣営は手段を選ばぬ激しい戦い方で、選挙のプロを雇ったとも聞きました。」(加藤陣営幹部)
投票日が近づくと、「加藤では駅前再開発はできない」といった中傷ビラがまかれる騒動も起きたという。
O氏の猛追に加藤氏も必死の応戦をし、「誹謗中傷もありましたが、政治生命をかけています」と絶叫した結果、3761票の僅差で加藤氏が当選。O氏は当時の戦いを振り返り、「正直、もうあんなしんどい選挙はもうしたくない」と語る。
駅前再開発計画は、加藤氏の「市民の意見を聞きつつ観光拠点となる施設を作る」という案に落ち着いたが、氏の突然の死によって白紙に戻された。市議の一人が語る。
「加藤氏の案は3月の市議会で諮られる予定だったが、それも空中分解してしまった。今年4月に予定される次の市長選に、加藤氏の案を継ぐ人材はいない。自民党が誰を推薦してくるのかわからないが、O氏陣営が主張していた「国県市の合同庁舎の入った駅ビルを建設する計画」が再浮上する可能性も高い。結果的にその案を推していた人たちには幸運が巡ってきたといえる」
加藤氏に嫌がらせをしていたのが駅前再開発計画にかかわる人間かどうかはわからない。だが、そこに大きな利権がうごめいていたことは想像に難くない。
「選挙が終わった後も、加藤氏の元に「いうことを聞かないと計画をつぶすぞ」と地元有力者から脅しがあったと聞いています」(同前)
出直し市長選では、前回以上に市民の厳しい目が求められる。
ー震源は「40億円駅前再開発」か「職員リストラ問題」かー
週刊ポスト2006年3月17日号38ページ
「お伊勢さん」の名で親しまれる伊勢神宮のお膝元、三重県伊勢市が揺れている。2月27日、現職市長加藤光徳氏が遺体で発見された。自宅近くの雑木林で首をつっていたのである。
「遺体発見現場は沼地に近いようなぬかるんだ場所で、大変見つけづらいところだった。高さ3ー4メートルほどの木の枝にベルトを掛け、めがねをかけた状態で発見された。遺体には外傷もなく、争った形跡もない。ベルトは息子さんのものだったようです。」(捜査関係者)
加藤氏は、前日の17時15分に散歩に出かけ、そのまま行方不明になっていた。警察は自殺と見て捜査を続けているが、地元ではいくえ不明情報が流れたときから「拉致され、殺されたのではないか」という不穏な噂まで流れていた。
その日、加藤氏がいつもとは違う信号を発していたという証言がある。加藤氏の友人でもあり、高校時代の先輩に当たる長岡敏彦市議がこう振り返る。
「昼12時頃、彼から電話があったんですよ。いつもは携帯からかけてくるのに、その日は自宅の電話からだった。めづらしいね、と聞くと、『ちょくちょく、無言電話があるんだ』といってました。大変だなと思って、気分転換に夜一緒に酒を飲もうと約束したんですが、彼は現れませんでした。」
友人への突然の電話は、加藤氏からのSOSだったのかもしれない。長岡氏に漏らした自宅への執拗な無言電話は昨年秋頃から続いていた。地元有力者の一人が語る。
「昨年11月の市長選の頃から、昼夜を問わず嫌がらせの電話がかかっていたときいています。奥さんも精神的に参ってしまい、電話番号を何度も変えたほどです。それに市長選までは自家用車で通勤していたのに、最近は公用車の送迎で出勤するようになったんです。いま思えば何か身の危険を感じていたのでは・・・」
市役所に嫌がらせの電話がかかってくることも多かったようで、後援者の一人には「カミソリ入りの手紙が送られてくることもある」と打ち明けていた。
加藤氏はなぜそこまで執拗な嫌がらせを受けたのか。その原因の一つと噂されているのが市職員のリストラ問題だ。伊勢市は昨年11月1日に近隣四市町村が合併し、新たな市としてスタートを切っている。加藤氏は職員の給与を保障する一方、10年かけて市の職員数を1割削減する案を出した。そこに職員から反発があったという。
「加藤氏町は行政改革の中で、人件費を削減する必要があると考えていました。職員から不満の声や意見が出ていたのは事実です」(伊勢市職員課)
だが地元で不穏な噂が立つ最大の理由は、加藤氏が死の直前に発表した総事業費40億円の「駅前再開発計画」が大きな波紋を広げていたことだ。
現職大臣の登場で駅前は騒然
駅前再開発計画は、昨年の市長選で最大の争点となった。この市長選は、一地方都市の首長選挙としては異例とも言える熾烈な戦いだったと語り継がれている。
選挙は民主党の推薦を受けながらも自ら「市民党」を標榜して立候補した旧伊勢市長加藤氏と、自民党の推薦を受けた旧小俣町長O氏との一騎打ちとなった。下馬評は、地盤のある加藤氏有利と見られていたが、総選挙直後ということもあり、自民小泉旋風の追い風を受けるO氏が終盤激しい追い上げを見せる。
投票2日前に、O氏は総決起集会を開いたが、なんとそこに片山さつき代議士が応援に駆けつけ、「市政を任せられるのは、小泉首相と同様に改革を訴えるO氏しかいない」と3000人の聴衆の前で声を張り上げた。
さらに翌日は、竹中平蔵大臣も駆けつける。「伊勢でも構造改革を」と訴え、通勤客でにぎわうJR伊勢市駅前には2000人の聴衆が集まり、騒然となった。
「現役の大臣が伊勢の市長選にやってくるなんて、これまでに聞いたことがない。O氏陣営は手段を選ばぬ激しい戦い方で、選挙のプロを雇ったとも聞きました。」(加藤陣営幹部)
投票日が近づくと、「加藤では駅前再開発はできない」といった中傷ビラがまかれる騒動も起きたという。
O氏の猛追に加藤氏も必死の応戦をし、「誹謗中傷もありましたが、政治生命をかけています」と絶叫した結果、3761票の僅差で加藤氏が当選。O氏は当時の戦いを振り返り、「正直、もうあんなしんどい選挙はもうしたくない」と語る。
駅前再開発計画は、加藤氏の「市民の意見を聞きつつ観光拠点となる施設を作る」という案に落ち着いたが、氏の突然の死によって白紙に戻された。市議の一人が語る。
「加藤氏の案は3月の市議会で諮られる予定だったが、それも空中分解してしまった。今年4月に予定される次の市長選に、加藤氏の案を継ぐ人材はいない。自民党が誰を推薦してくるのかわからないが、O氏陣営が主張していた「国県市の合同庁舎の入った駅ビルを建設する計画」が再浮上する可能性も高い。結果的にその案を推していた人たちには幸運が巡ってきたといえる」
加藤氏に嫌がらせをしていたのが駅前再開発計画にかかわる人間かどうかはわからない。だが、そこに大きな利権がうごめいていたことは想像に難くない。
「選挙が終わった後も、加藤氏の元に「いうことを聞かないと計画をつぶすぞ」と地元有力者から脅しがあったと聞いています」(同前)
出直し市長選では、前回以上に市民の厳しい目が求められる。
教えてくださり、ありがとうございました。
二度と同じようなことが起きないよう、願うばかりです。
出る杭は打たれるってやつですかねー。
こんなM氏が国会議員をしている町っていったいなんなのでしょうね・・・
このことにより利権まみれの町になってしまうのは悲しいですね。
加藤市長の胸中は到底わかりませんが、心よりご冥福をお祈り致します。
例えそれが直接自殺に結びついた訳では無くとも、加藤氏を精神的に追い詰める引き金の一つにはなりえたと思います。
職務上の悩みより個人的な弱みに付け込まれ自殺されたような気がします。
遺書が見つからない以上は、警察もそこそこしか調べないのだろうな。
民主党の擬似メールでは無い。