紗羅のアトリエ

Healing Art 美しいもの 楽しいこと 2007年春より食道がん患者 

眠れない夜

2007-03-09 | My Collections
深夜、ふと目が覚めた。
薄闇に目を凝らし、見慣れているはずの室内を見渡す。壁にも天井にも家具にも、色がない。モノトーンの映画のように色がない。夜の世界には色がない、と気付いた深夜。それは確か10歳くらいの頃だった。

そして思った。昼の世界の色彩について。
自分にとっての赤という色は、だれの目にも同じ色なのだろうか。青という色は? 黄色は? 緑は? どうすれば確かめることができるのだろう・・・。思い巡らすうちに夜が明けて・・・自分ひとり、世界から浮いてしまったような気がした。

それから幾年月・・・
疑問はいまだに解けぬまま。

幾千の夜を過ごしたのだろう。どうやって眠りに就いたのだろう。眠る方法が解らない、と、よく思う。こどもの頃から宵っ張りの朝寝坊。寝付きが悪い。だけど毎日朝がきて、いつの間にか眠っていたんだなぁと気付くのです。

体内時計は何時から狂ってしまったのでしょう。眠らなくてよい時に眠くなり、ベッドに入ると目が冴える。照明を絞って本を読む。本を読みながら、眠くなるはずの自分を見ている。そんな夜毎の繰り返し。

だから踊ろう
僕と一緒
君はしあわせに眠くなれ

本を閉じて、あがた森魚の歌う「清怨夜曲」の一節を頭の中でゆらします。しあ~わせにねむ~くなれ~。

ぐっすり眠って爽やかな朝を迎える。昨日の疲れがすっかり取れて、今日も元気な自分が嬉しい・・・という状態が理想ですが、これがなかなか難しい。

寝付きが悪い。眠りが浅い。何度も目が覚める。疲労感が抜けない。睡眠に関しては様々な悩みがあるものです。

タイ古式マッサージのセッション中、心地よくまどろんでくださる方を見ているとしあわせな気持ちでいっぱいになります。

こちらに伺った日は、ホント、良く眠れるの」と、たくさんの方が言ってくださる。嬉しいことです。どうぞ今宵も充実した眠りがあなたに訪れますように。

だから踊ろう
僕と一緒
君はしあわせに眠くなれ

ゆるやかに踊るような、そんなマッサージが出来たらいいなとも思います。タイ古式マッサージという振り付けで踊りましょう。わたしのリードに身をまかせて、ただよってください。なーんてね。

あるお客様が先日わたしに言うのです。
「せっかく他の人のタイマッサージと違うのだから、もっと思いがけない展開でやってもらえませんか?」
「えっ? では即興でやってもいいですか?」
「お願いします」

久々に即興で踊る時の緊張感を思い出して身震いするワタシ。彼は長年わたしが踊りに携わっていたことを知って、その上で仕事を依頼してくれました。

緊張感あふれる120分。思いがけない動きもずいぶんと飛び出したのですが、な、なんと。何をやっても静かにおやすみになっておられました。不思議な時間。わたしにはとっても充実した楽しいひとときでした。そして別れ際、
「お腹のマッサージはしましたか?」
「だいぶ時間をかけましたが・・・」
「・・・・・」
どうやら記憶がないご様子。

その次に会った時、
「眠ってしまったら起してくださいね」
「?!」
難病と戦っておられるその方は、昼間熟睡するとコンディションが狂ってしまうらしいのです。からだのために頻繁にマッサージを受けながらも、それを心地よいと思うことがあまり無かったとのこと。気持ちの良い眠りを提供できたと有頂天になっていたわたしは、迂闊にも、彼の眠れない夜のことには思い至らなかった・・・。

眠れない夜・・・。身の置き場もこころの置き場も、うまく見つけることが出来ないもどかしさ。取り残されてしまったような孤独感。つらいものです。

眠れなくて死んだ人は居ないとか、眠れない時は眠らなければいいと言われることもありますが、ことはそんなに簡単じゃない。しかるべき時に眠りたいのだ!

だから踊ろう
僕と一緒
君はしあわせに眠くなれ

今宵も皆様に、充実したしあわせな眠りが訪れますように・・。


今日の写真はオニキスの台座に乗った象牙の女性像。アールデコの高名な彫刻家、F.Preissの作品にうりふたつ、なのですが何故かサインはE.R・・と読み取れないもの。Preissのコピーなのか、工房の職人の横流しなのか、不明。Atelier 紗羅のサロン入って右側の飾りだなにひっそりと立っております。17.8cm